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朝ごはんは、ゆうべの余りを食べた。くるみが少々と、胃袋を膨らませるには十分とはいえなかったが、何も口にしないよりはマシだった。
簡易キャンプを引き払い、ぼくら三人は、城跡を離れることにした。
「離れるのはいいけど、一体どこに行くのさ? どこか当てがあるの?」
はっきりとした物言いをせず行こうとするブルーノに、ぼくは不服に思い、尋ねる。
「取りあえず、拠点を設けないと。ずっと根無し草っていうわけにもいかないだろ――まぁ、どこかに投宿したからといって、そこの定住者になるわけじゃないがな」
ぼくらのやり取りを、ミアは不安げに見守っていた。
ふと、会話の区切りでブルーノが彼女の方を振り向き、「ミアさんはどうする」、と尋ねた。
「わたし? わたしは……」
「村の状態はだいたい推測が付くだろう。帰っても有益なことはきっとないぜ。賊が侵入して、まだ居座ってるだろう」
「そうね。そんなところだろうとは思ってたわ。根こそぎ破壊されたから」
「おれたちは近傍を探索して手頃な人里を見つけるつもりだ。きみは自由にしていい。おれたちに付いてきてもいいし、強制はしない」
ぼくは焚火の跡を見つめた。それから、くるみの殻を、魚を刺していた焦げ跡のある木の棒を、城跡の壁、天井を、次々に見た。果実を食べて捨てたザクロの皮は虫が群がっていた。もうすでに何度か経験したものだが、一晩だけの宿とはいえ、ちょっとした愛着は湧くものだ。
ぼくはそっとミアの肩に肩で触れた。目は恥ずかしくて見られなかったが、一緒に行こうという自分なりのメッセージだった。
ミアは、結局ぼくらに同行することとなった。
パーティーが一人増員した。誰かと別れ、出会い、また別れる。その繰り返しだ。リーザ嬢とコンラートさんと出会い、別れ、そして今度は、ミアと出会ったというわけだ。
よろしく。
ぼくらは互いにカジュアルに挨拶を交わし、三人で、出発した。
何となく、空模様はどんよりとしていて、空気はほんのりと湿り気を帯びていた。雨が降る気配がする。
道すがら聞いてみたところ、ミアたちが拉致され、幽閉された『教団』の施設は、山中にあるようだった。指で方角だけ指示してもらった。もちろんここから窺えるほど近くはない。
そのありかについて、ぼくらはもちろん知らないが、囚われていた彼女自身も、無我夢中で駆け抜けてきて、坂という坂をくだり、崖を飛び降りて、とにかく逃げるのに必死だったので、もう分からないようだ。連れていかれる時は、幌馬車にすし詰めにされたようで、施設までの景色も定かではなかった。
一晩でその疲労が癒えるのか甚だ疑わしかったので、ぼくはミアに無理しないよう言った。
ミアは微笑んでありがとう、大丈夫と返したが、目元の笑いジワがいやに老け込んで見える気がした。
ポツ、ポツ……薄暗い空模様に相応しく、雨が降ってきた。
ぼくらはそれぞれポンチョで体を覆い、雨を凌いだ。
幸い、雨脚は弱く、降るのは、細かい、霧のような雨粒だった。
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