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ぼくらが過日滞在し、離れ、その間に襲撃を受け滅びたゲールフェルト村は、決して規模が大きいとは言えず、むしろ小さい村であったが、人々の交流が盛んで、治安がよく、また、ものづくりや農業が行われ、商人が商いをし、お金の流通も円滑だった。
大地主や盟主がいるにはいたが、村は、自主独立により成り立つ住みやすいところで、活気も人気もあった。そうであったのは、ひとえに村の中心となる産業を発展させた功労者のお陰で、その内のひとりが、麦畑の所有者であり兼業の百姓であったシュトラウス氏だったというわけだ。
町や村は、よそと交易などで関係を結び、各町村の住人が互いに行き来するものだ。あるいは便宜的事情で懇意にしたいと思う町村のそばに、富裕な領主などが大勢の土木関係の職人を集めて新たに人里を設けるということも、ないことはない。
何はともあれ、ゲールフェルト村は、よく行き届いた自治においてその社会集団としての運営が出来ていたので、近場に人里らしい人里がないのだった。
「雨、やまないね」
ミアが呟く。
「そうだね」
ぼくは応じる。
誰もがどこかよそよそしい雰囲気で口数を少なくし、とにかく足を運ぶことに精を出した。
ブルーノがずっと先頭を行き、ぼくがその次で、ミアが、ぼくよりやや遅れて来るという具合で、パーティーは前進した。
雨は長々と降りしきり、粘土質に近い下草の地面はあちこちに水たまりが出来、足元が濡れ、気持ち悪かった。
やがてだだっぴろい平原を抜け、山麓に入り、木立の中を歩いた。雨天で暗かったのでブルーノは灯火を持った。
幹の太い大木がある広場に出ると、休憩することにし、だけどぼくらは、ゆっくりするだけで、エネルギーを補充するということが出来なかった。ブルーノは、食べ物は歩きながら探せと言った。ぼくはこっそり拾った木の実を食べたが、ひどい味で、後悔した。ミアは健気に受忍する態度だった。
山道をえんえんと上り、途中、またクルミを拾ったりして、甘えを許さない気合いで段々と融通が利かなくなっていく足を運んだ。山の外側へ出る時は、ぼくらがどれだけ高いところにいるのか、その見晴らしで推測され、しかし疲れに押されて感激はあまりないのだった。
峠まで到着してこれから反対側へ下りようとするのは、お昼を少し過ぎた頃だった。
お昼ご飯も食べずにぼくらはひたすら山を早く出ようという思いで歩きに歩いた。
道中、ぼくはたまたま見つけた見覚えの或る木の実を何個かもぎ取り、ミアに分けた。ゼリー状の果実で、種が多くて鬱陶しいが、ほんのり甘く、おいしく食べられる木の実だった。
ブルーノはだが、何もまともに口にしようとしなかった。急いでいるのだろうと、ぼくは推量した。彼の背には、朝作っていた盾が、歩に合わせて揺れていた。
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