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寝覚めの悪いブルーノだったが、ぐずぐずした後、ようやく床を離れると、遅れて顔を洗いに表へ出ていった。
ぼくとミアは宿の部屋で待機しているように言われ、特にこれといって出来ることもなかったので、おとなしく従った。
……。
ぼくらは、それぞれ自分のベッドに腰を下ろしていた。三台並ぶ内、部屋の扉に一番近いベッドにブルーノが、その次にぼくが、残ったものにミアが、寝た。
どことなく、気詰まりな雰囲気が漂っていた。話題らしい話題がなく、自然と口を閉じてしまうし、談笑しようにも、自分たちの置かれている状況を思うと、不適切とか、不謹慎だと憚られるのだった。
「あっ」、と、ぼくは発した。
「そういえば、服を買うんだったね。お店はどこにあるんだろう」
「さぁね」、とミアは答えた。「ずいぶん小さい村、というよりはむしろ、集落だから、ひょっとすると、お店自体がないかも知れないわね」
「お店がない? なら、ここに住むひとたちはどうやって着るものを手に入れるの?」
「きっと、自分で作っているのよ。わざわざ山を越えて服を買いに行くなんてあんまり想像できないもの。でも、あるいは、服の行商が時々やってきて、その時に買ったりするのかもね」
「成るほど」
ぼくはベッドのそばに置いた革袋を開き、中を探り、あるものを取り出すと、ミアに「ハイ」、と差し出した。
「ぼくの服。とりあえずは、これに着替えればいいよ。ぼくは何着か持ってるから」
「ありがとう、フリッツ」
渡したのは、、ごくありふれたチュニックとズボンだった。ちょっとブカブカ目だが、比較的新しく、ほつれや破れもなく、快適に着られる。
「早速、ちょっと着替えてくるわ。ブルーノさんはここにいるように言ってたけど、別にいいわよね?」
「あぁ、だいじょうぶ。ぼくが出るよ。出て、すぐそこで待ってる。着替え終わったら、教えてくれる?」
「分かったわ。ゴメンね」
紳士然と振舞って、ぼくは廊下へ出、すぐそばの壁に背を持たせた。
フゥ、としょんぼり一息吐き、軽い自蔑に陥った。
基本的に、ぼくがミアに優しくすることは、純然たる善意であり、彼女が少しでも楽に過ごせることを望んでの振る舞いなのだが、一方では、彼女に気に入られようという作為を自身に発見してしまうのだった。
そういうわけで、たまに、その善意と作為との間で葛藤が生じるのだった。
ぼくは目を瞑り、瞑想した。しかし、何も浮かぶものはなかった。
やがてミアがもう入室してもいいと教えてくれた。部屋に戻ると、サイズの合っていない服を纏うミアがいて、その服が自分のものだと思うと、微笑ましい思いになるのだった。
彼女は洗濯しに川へ行っていいかと聞いたが、ブルーノの注意があるので、後にしてくれるように言った。
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