第11話
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果てしなく長い旅の、その途上だった。
今日の天気はひどいものだ。生ぬるい夏の空気に、長々と降りしきる細雨。
みずからの足を運んで旅路を行くぼくは、うんざりしてしまった。額、背中、胸、等々、からだのあちこちを流れ落ちるのは果たして汗なのだろうか、雨なのだろうか。
ぼくの前を行く人影があり、男であり、ぼくを道連れとする彼は、ぼくを振り返り、軽侮するような目を向ける。
ブルーノという。
「疲れたのか?」
彼もぼく同様、滝のような汗を流し、雨に濡れているが、ぼくほどには、疲弊していないようだ。
ぼくは押し黙って、固唾を飲み込み、携行している杖を突いて、気力を振り絞る。ブルーノは前に向き直り、強健な足取りで進む。
空を覆い尽くす灰色の厚い雲。昼間だというのに薄暗い。
道端にさりげなく咲く花は、しかしつやつやとしいて、活気付いているようだ。雨を鬱陶しがるものがあれば、それを恵み深いものとして喜んで享受するものもあるということだ。何物にもそれぞれの利点と欠点があるものだ。
ぼくとブルーノが歩いているのは、思うにこの近辺にある町か村が管理及び整備している私道だろう。平坦にならして砂利を撒いただけの粗末な道路だが、それでも道なき道よりは遥かによい。見晴らしがいいし、小石がごろごろしているとはいえ、足場が安定しているし、凶暴な獣が潜んでいることもない。
のろのろと歩いていると、だんだん、ブルーノの背中が近付いてきた。ペースをわざと落としているようだ。
「今日は、この近くの人里に泊まることにするか」
疲れが高じ、ほとんど上の空だったぼくは、ブルーノの言うことが聞き取れず、きょとんとした顔で彼を見上げた。とっくに成人している彼は、背が高かった。
「天気が天気だしな、あんまり衰弱すると、ひょっとしたら風邪――いや、例の疫病をもらっちまうかもしれないしな」
遅れて彼の言うことを理解したぼくは、この苦しい道の先行きが示されたことで、安堵感を得た。がしかし、そこに長く居着くわけではなく、休息のためのかりそめの逗留をするに過ぎないことは、分かっているのだが。
ぼくらは旅人だった。あるいはジプシーともいうし、遍歴職人でもある。定住する土地を持たず、仕事、宿、師匠を求めて、さまよい歩き、各地を巡っている。
もともとは、ぼくは旅人ではなく、ある村に母と二人で住んでいたのだが(父は小さい頃に死んだ)、わけあって、村を出ることになった。
思い返すと、今でも悲しくなることだが、めそめそしていても何にもならないので、思い切って旅に出ることにしたのだった。
それは、昨日のことのように思い出すことが出来、また、実際その