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ブルーノは発った。
剣と盾、そして、重くならない程度の小道具と共に、彼は村を出ていった。
ぼくらは心細かったが、きっと彼がすぐに帰ってきてくれると信じて、見送った。
薄曇りだった空に、青天井が覗いていて、その澄んだ青さが、何か清々しい希望を与えてくれるようだった。
ブルーノは、彼が持っていた金銭の半分以上を、万が一のためにと置いていってくれた。もちろん、あるだけ使い込んでいいはずなどなく、あくまで緊急用として、貯えておくべきお金であり、ぼくらが生活する上で必要となる分は、みずから稼がないといけないのだ。
「ギルドに行くよ、早速」
と、ぼくは言い、当面のパートナーの方へ目を向けた。
「ミアは、どうする?」
「わたしも行くわ」
「そう。多分、ぼくらは、離れ離れにならない方がいいだろうね」
「わたしもそう思う。のどかなところだけど、要人するに越したことはないし、何よりわたしたちは、まだちっちゃな子供に過ぎないんだもの」
ミアの言う通りだ。ぼくらは、しょせん無力な年少者で、本当なら、年長者の庇護が必要な、弱者なのだ。
そう思い知り、ぼくは情けない気分になった。あるいはぼくが愚かであるために、ミアに迷惑をかけるかも知れない。あるいはぼくがぶきっちょであるために、彼女に呆れられるかも知れない。あるいは自分のことさえ満足に出来ず、彼女に手伝ってもらわないと何も成せないかも知れない。
「……行こう。小さい村だ。ギルドなんてすぐ見つかるよ」
「だと、いいわね」
ミアは、どこか懐疑的な口ぶりで答えた。ぼくはしかし、拘ろうとはしなかった。
「あっ、そうだ」、と、ミアが思い出したように言い、部屋の内、ある高所を見上げる。そこには吊り下げ型の物干しがあり、彼女の汚れた衣服が無造作にかかっている
「昨日汚しちゃった服、まだ洗ってなかったわ。あのままにしておくとよくないし、ちょっと川で洗ってきてもいいかしら?」
ぼくは快く了承し、彼女と共に外へ出た。晴れ間の出だした空は日の光をよく通し、前より明るさを増していた。
ミアが洗濯物を、ぼくがたらいを持って、川辺まで来ると、たらいを水で満たし、その中に汚れた衣服を浸けた。
ミアは袖をまくり、両手でギュウギュウと衣服を押し洗いした。泥汚れはあっという間に落ちたが、その他の汚れはしつこく、段々と力が入り、ミアの眉間に、深い皺が浮かんだ。
やがて「はぁ」、とため息して、両手をたらいより出すと、洗濯の面倒さを嘆いた。
「灰汁があれば落ちるのかしら? ただの真水じゃ、完全に綺麗にするのなんて無理だわ」
「そういえば、ミアは村で、服屋さんをだったよね。こういうことを仕事としてやってたの?」
「まぁね。でも、しょっちゅうじゃないわ。何せ洗濯は重労働だからね。ある程度量をまとめて、一気にやってたわ」
「ふうん――」
洗濯はその日の主たる目的ではなかったので、ほどほどで済まし、ぼくらは、宿にとんぼ返りして元の物干しにかけると、再び外に出、今度は村中の探索を始めたのだった。
そういえば、宿のひとに連泊することを伝えていなかったと気付き、受付の男に相談を持ち掛けたが、その話はすでに聞いて承知しているとのことだった。ブルーノが、あらかじめ話を付けておいてくれたようだった。
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