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「アイツらがよっぽど強くて、破竹の勢いがあるとでもいうなら――」
と、ブルーノは話を続けた。
「――ゲールフェルト村を中央として、どちらかの方角が、アイツらにとってのフロンティアで、他方が、進行済みのエリアのはずだと、そういう推測を立てた」
『教団』の足跡を追おうと、彼は勘を頼りに歩き回った。
彼らなりに、何か思惑か戦略があるのだとすれば、その指示するところに従って動くだろうし、ないのだとすれば、無作為に侵略を繰り返しているだろう。
だが、村は、コソ泥が空き巣を企てたというには、あまりにも害が大きく、その状況を鑑みるに、組織的な犯行を推測するのが妥当だった。それも、力のあるリーダーがその力と威厳と権勢をもって率い、リーダーを頂点に、階級と格差と序列が存在し、各自共通の目的を持ち、それぞれの固有の役割を、組織のために担っているという、厳正に統治された組織による犯行である。
教会や聖堂などは、ふつう、単体であることは少なく、町や村の中心として、住宅や商業施設などに囲まれていることが多い。ぼくらがいるような寒村や、辺境の人里は、土着の宗教や因習的観念によって精神と心情の秩序の基礎を確保するだけで、宗教施設そのものがない場合があるが、多数の信者を有する宗教となると、あちこちに拠点があるだけに留まらず、標準的規模の教会に加え、その勢力を具現化したかのように大きい聖堂や、塔などの仰々しい建築物をよく持っている。
また、そういう宗教は、天地開闢の
しかし、平易に受け入れられやすい宗教というのは、広まりやすくするために平易になっているわけで、そういう宗教は、異教や異文化との共存を拒みがちであり、否定し、破壊しようとする。
『教団』がどういう宗教をバックにしているか分からなかったが、その動向から察するに、一笑に付すことが出来るほど取るに足らないものと見なすわけにはいかなかった。
ブルーノは、地図を頼りに各所を歴訪し、幾つかの教会と聖堂のある町村を巡ったが、どこの宗教施設も廃墟と化していて、辺りには攻撃と被害の形跡があり、血生臭い空気が重々しく流れ、カラスや野犬などの飢えた動物が跋扈していた。
そういう景色を目にするごとに、ブルーノの中で、『教団』の存在への確信が大きくなっていき、そう遠くない内に遭遇するだろうという予想が立った。彼は半ば興奮し、半ば怯えた。不安と好奇心が複雑に入り混じった気分だった。
ブルーノは地図に、すでに訪れたところにチェックを入れていき、まだチェックの入っていないところへと足を運んだ。
彼は山を下り、麓の林を抜け、平地に出ると、高く細い教会の屋根が見え、次の目的地の近いことを知った。
彼は段々と近付いていき、やがて、怪しい気配を感じた。
彼の近付いているのは村だったが、出入口に、誰かが血を流して倒れている。特に装飾のない地味な装備なので、村の警備だろうとブルーノは思った。
耳を澄ますと、しばらく風などの自然の音しか聞こえなかったが、ふと、遠くで叫び声が立ち、ブルーノは異変を悟った。
彼は木立を目指して走り、物陰を縫うようにして、村へ忍び足で近付いていった。
彼の心臓は、ドキドキして、ほとんど息が苦しいくらいだった。
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