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リーザは、故郷の凶報を耳にし、ハラハラする焦燥感に駆られて、もう通学が始まるその直前という時機に、学校に背を向けてしまった。
入学日を逃したことで、リーザは最初、あるいはもうじぶんは、脱落してしまったに違いないという確信を持ち、学業を諦めることを考えた。
親が行方不明になり、その安否も分からず、そういう状況で、その子供が学業に専念することなど出来ようもないが、かといって、学業を放り出してまですることも特にないのだった。
放心状態だった彼女には、だが、朗報があり、復帰できるチャンスがあると、伯父が教えた。
学籍はまだちゃんとあり、事情は、伯父の方で、学校にすでに説明済みのようで、行かなかった分の遅れはあり、その分不利ではあるけれど、何カ月も欠席したというわけではないので、リーザの高い基礎学力があれば、だいじょうぶだろうということだった。
「安心したわ」、とリーザ。
伯父と一対一で、テーブルに対面して話しているところだった。
「わたしの方も、ホッとするよ。君が無事帰ってきてくれただけでも十分嬉しいが」
「心配をかけてごめんなさい」
と、リーザは頭を下げる。
「いや」
と、伯父は、手のひらを見せて気にする必要はないという素振りをする。
「謝らなくていいんだ。君の両親を慮る心は痛いほど分かる。パパもママも、早く見つかって、会えるといいな……」
「誰か、わたしの代わりに探しに行ってはくれないのかしら」
「すでに、バルビタールの軍が駐屯しているんだろう? 村の復興と合わせて、どういなくなった村民の行方を辿るのかは分からないが」
「うん。でも、村に来たひとたちは復興だけんために来たみたい」
リーザは、あまりいい展望が見えず、しょんぼりとし、また、執事のことや、同行した仲間である、フリッツとブルーノのことを思い起こした。
すると、気になることがあって、彼女はハッとした。
「そういえば、伯父さん。馬は、どうしてる?」
「馬? あぁ、君が乗ってきたのか。今は、知り合いの厩舎を借りて、そこに預けてるよ。わたしは、畑は持っているが、厩舎は持っていないのでね」
「そう――」
リーザが納得し、話がそこで終わるかと思われたところ、伯父が、忘れていた伝えるべき事柄を、にわかに思い出したように、口にした。
「リーザ。そうだ。学校だけどね。どうも先生に話を聞くと――君のことを伝えに言った時に、ついでに聞いたんだけどね――どうも、当初決まっていた教育課程が少し変わったみたいなんだ」
「変わった?」、とリーザはきょとんとする。「それは、つまり、新しい教本が必要になったりするっていうこと?」
「いや、持ち物は最初に指定されていたものだけでいいんだ。ただ、神学の内容が改定されたみたいでね、まぁ大したことじゃないらしいが」
「神学が変わった――?」
リーザは、腑に落ちなかった。神学の内容が変わるということは、つまり、学ぶべき宗教が変わるとでもいうのだろうか?
それはずいぶん妙だと、リーザは不審に思うのだった。
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