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ある集団において、群れを成すのは同族たちであり、各自が持つ属性によって結び付きやすいというのは、ないことではない。
そういうわけで、リーザの目には、過半数の男子生徒よりも、少数である女子生徒の方がよく見え、ぜひとも仲良しになりたいと思うのだが、すでに彼女らの中には固まった輪が出来ており、中途で編入されたリーザは、孤立気味だった。
しかし、反対に、編入生に興味を持つ者がおり、リーザは、算術の授業の途中、そばにいる女生徒に話しかけられた。
幸い、算術の教師は、別の教師に小用で呼び出され、教壇は無人となっていた。
教室はずらりと長机と一人用の椅子が整然と並んでおり、リーザと、彼女に話しかけた女生徒は、それぞれちょうどはすかいに位置しており、リーザは始め、意識を向けたことのない方から声をかけられ、いくぶん驚いた。
「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど」
と、女生徒は、やや厚かましい口ぶりで言う。
リーザは振り向いて、褐色の長い、また緩くウェーブした髪を器用に後ろで結わえた相手を見据えると、眉をピクッと動かして、応対の表情を見せた。
「あなた――ううん、リーザさんって呼んでいいかしら?」
水色がかった瞳が綺麗だった。
「うん」、とリーザは頷く。「呼び捨てでも構わないけど」
「じゃあリーザ。わたしは、アリサって言うの。よろしく」
と、アリサは挨拶し、リーザと握手を交わすと、リーザの隣の男子に席を代わるよう頼み込んだ。
その男子は特に嫌がる素振りもなく、アリサに席を譲り、各自羽ペンとインキ壺と教本を持って交代したが、リーザは、彼女に話しかけられた時、彼が、やや苦手そうに顔をしかめるのが見えた気がした。
やはり、その口ぶりに相応に、気の強いタチなのかも知れない、などと彼女は憶測したが、あるいは単純に、教師不在の間に席を勝手に変えることに、気が進まなかっただけかも知れなかった。
アリサは、瀟洒で愛嬌のある美少女に、リーザには見え、男子に好かれこそすれ、嫌われはすまい、という風に思われた。
「お互いに斜めにいちゃ、話しにくいわよね」
と、アリサはにこやかに言う。
「えぇ、そうね」
と、リーザも、穏やかに微笑んで返す。
「先生はどうしたのかしら?」
「さぁ? 他の先生に呼ばれたみたいだけど」
「まぁ、いいわ。わたし、前からリーザと話したかったのよね」
「わたしと?」
「だって、珍しいもの。途中から入学してくるなんて」
「あぁ」
と、リーザは合点が行くと、あまり触れられたくない話題だったので、顔はアリサを向いて、目だけ逸らした。
「ちょっとね。遠くへ行く用事があって、そのタイミングが、ちょうど学校が始まる直前だったから」
「ふうん。そうだったんだ」
村の名を口にし、今まであったことを話してみようかと、リーザは思ったが、込み入った事情を明け透けに言ってしまうのは、やはり興が乗らず、気まずい沈黙が、アリサとの間を隔てた。
せっかく初めてこうして間近に話をし、ひとりの女生徒を友達と出来るかも知れないという機縁が巡ってきたのに、ただ両親の不在を始めとした不運に起因する引け目から、棒に振ってしまうのは、とても惜しい気がした。
アリサは、小首を傾げて、リーザの言葉をじっと待っている――。
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