さまよえるフリッツ【完結】   作:Yuki_Mar12

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第201話

***

 

 

 

「何ぃ?」

 

 と、ブレイズは、呆気に取られたように目を丸くした。

 

「もう一度言ってくれ」

 

 ゴクリと、ぼくは固唾を飲み込むと、口を開いた。

 

「従卒になりたいんです」

 

 ブレイズは、ハァとため息すると、やれやれと言わんばかりに手で顔を覆い、すっかり動転したようだ。

 

「そう直接言いたいがために、お前はここで待ってたのか?」

 

「はい」

 

「馬鹿げてる。何で俺に? お前とは昨夜たまたま口を利いただけの間柄じゃないか。赤の他人同然の」

 

「その通りです。でも、ぼくにも意地っていうものがあります。ぼくは力を付けるためにこの町へ来た。仲間がいます。昨夜ご覧になったでしょうが」

 

「成るほど。お前には、俺の他には、ツテとなり得る相手がいないということか」

 

「……」

 

 黙ってぼくは頷いた。

 

「ぼくの他にいる二人の内、ひとりは、薬師で、しっかりした大人ですが、彼はぼくの身内でも何でもなく、今は世話を見てくれていますが、永続的ではありません。あくまで仮初めであり、ぼくは一日でも早く、自立できる道を見出さないといけないんです。後のひとりはぼくと同じ子供に過ぎません。女の子ですが」

 

「自立って、お前、親はどうしたんだよ?」

 

「……いません」

 

 ブレイズは矢庭に険しい顔になった。

 

「父は早い時期に亡くなり、その記憶が全くないほどです。母も、この春に流行り病を患って、旅立ちました」

 

「ずっと、フェノバールで、この町で暮らしているのか?」

 

「いえ、ぼくの故郷はメンドンと言って、フェノバールよりずっと遠い村です。ここまでは、旅して来ました」

 

「メンドン?」

 

 ブレイズが、自身に関して思い当たることでもあるように、聞き返す。

 

「はい。そこで生まれ、育ちました。ブルーノという、途中までいっしょに旅した男と出会い、知り合いました。彼ももう、この世の住人ではありませんが」

 

「偶然だな。俺の故郷もメンドンっていう村なんだ」

 

「えっ? ということは、ぼくと出身が同じ、ということですか?」

 

「だろうな。他に同じ名前の村があれば話は別だが」

 

 ぼくは驚きを禁じ得なかった。まさか、こんなところで同郷の者と遭遇するなどとは、思いも寄らなかった。

 

 ブレイズは、「お前、名前は」、と尋ねて来、ぼくは答えた。

 

「フリッツ」、とブレイズ。「お前の親は、ひょっとして、農民か?」

 

「農民といえば農民です」

 

「地主か?」

 

「いえ、地主の畑を借りて耕作するだけの下働きです。ぼくも、手伝っていました」

 

「そうか」、とブレイズは、しみじみとした様子で納得する。何か、ぼくと彼の間には、共通項があるようだと、ぼくはうっすらと直感した。

 

「俺の親も、同じ感じだ。だが、あいにくと、あまり長々とくっちゃべっているヒマはないんだ。俺には叙任式がある」

 

 ブレイズは跳ね橋を渡って城の方へ立ち去る素振りを見せ、ぼくは慌てて、彼に大声で問いかける。

 

「従卒は?」

 

 彼は首だけで振り返り、「考えといてやる」、と答えた。

 

 ぼくはホッと安堵するようだった。

 

「だが、まずはおれが騎士にならないと始まらない。だから、まぁ、とりあえず待ってくれ。話はそれからだ」

 

 ――フェノバールへ来て、もう数日が過ぎる。だが、全くの無収穫というわけではない。決してはかばかしくはないが、一日、一日と、ことは前へ進んでいる。

 

 

 

 まだまだ、予断を許さない状況だが、何かの萌しは、あるに違いないと思われる。

 

 

 

***

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