さまよえるフリッツ【完結】   作:Yuki_Mar12

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第210話

***

 

 

 

 バルビタールにおける、度重なる戦争の合間には、必ずインターバルがあり、従軍した兵はその間、休養する。

 

 だが、満足するまで休めるとは限らず、呼び声がかかれば、兵はその職責に従って、馳せ参じなければならないのだった。

 

 バルビタールはこの頃、ある国と争っていた。その国もバルビタールに劣らずそこそこ大きな社会集団であり、発展した都市と城を持っていた。

 

 何度か平地での合戦を繰り返し、バルビタールの優勢で戦況は推移し、いよいよ攻城戦まで到った。

 

 相手側にしてみれば、この争いを制することが出来なければ、敗北であり、従って、敵兵はこぞって、水火も辞さない覚悟で抵抗するのだった。

 

 敵は城壁の中に立て籠もり、塔から弓や大砲などの遠距離まで届く武器か兵器で、攻め立てるバルビタールの騎士団を迎撃し、バルビタールも、破竹の勢いで来たものの、相手国の城の堅牢さに、中々思わしい形勢を切り開くことが出来ずにいた。

 

 広い川沿いの丘に立地するその国の城は、攻めてくる敵兵の進行を限定することが出来る点で有利であり、相手も、存分にその利を活かして応戦した。夥しい矢が上から降り注ぎ、大砲は着弾すると爆発し、地面を抉り、兵もろとも、周りの草木を爆風で吹き飛ばした。

 

「これでは近付けヤせんね」

 

 と、ひとまず丘の森の中へと後退して身を隠し、草木の陰から城を窺いながら、エルの仲間の男が、彼に向かって言う。

 

「今まで連戦連勝だったから、油断でもしてたんだろう。ダセえなぁ」

 

「どうするんでヤすか、これから?」

 

「投石器でも持ってきて、壁を破壊するんじゃねぇか。まぁ、この丘の上まで運ぶのはずいぶん骨だろうが」

 

「アッシらは、どう動きましょう?」

 

「まぁ、形勢を見て判断するしかねぇが、とにかく相手の城に入らないと、どうしようもねぇ」

 

「……」

 

 エルの仲間の男は、何となくバツが悪い感じに、モジモジして城へと目をやった。

 

「けっこう立派じゃねぇか」

 

「え?」

 

 と、仲間の男は、腑に落ちない風にエルに対し、きょとんとした顔を向ける

 

「あの城だよ」、とエル。「もし入城出来るようになったら、いいか、絶対金目のものは盗んでいけよ。おれたちは傭兵である以前に、賊なんだ」

 

「諒解しヤした」

 

「どの道、投石器なんかなくとも、時間はかかるだろうが、相手側は、その内食い物がなくなって、降参するかくたばるかするだろうよ。気の毒だが」

 

「その前に、裏の川から逃げやしヤせんかねぇ」

 

「この城を捨ててまだ未来があると思うなら、そうするだろう。知らねぇが」

 

 日が暮れかかっている。

 

 城の方で鐘が鳴り、戦闘の中断を告げる――戦争にもルールがあるのだ。必ず守られるかどうかは別として。

 

 矢が飛んでこなくなり、大砲の轟音が止む。

 

 エルと仲間の男は、鐘の音に従って撤退し、野営地へと戻った。

 

 

 

 その日の戦闘はもうなく、続きは、明日であった。

 

 

 

***

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