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飛脚の事務所へと、手に傷を付けたオットーは戻ってきた。
木の骨組みが露出したハーフティンバーの造りの事務所は、決して豪壮とはいえないけれど、かといって決してちっぽけでもなかった。
低い石段の上に車止めのある出入口があり、屋根は破風板となっており、二階建てである。煙突は、モクモクと白煙を昇らせている。暖炉の火が燃えていることによる煙だろう。
雪の日。車止めから、雪の粉末がサラサラと階段へとこぼれ落ちる。
オットーは、衣服の雪を粗方手で払い落して、事務所へと入る。
「ただいま戻りました」、と彼が言うと、ご苦労様といったねぎらいの声が屋内で仕事している同僚たちより返ってくる。
事務所には、荷物の配達を依頼する客が直接やってくるし、商談が成立すれば、荷物が置いていかれる。荷物の数は以前と比べると少なくなっている。政局の影響なのは言うまでもない。
オットーは、役所の手続きで得た書類をみずからの机に整理すると、二階の所長の部屋へと向かった。
コンコンと、彼は閉じたドアをノックし、返事を待つ。
「はい」
「オットーです。今帰りました」
「入りなさい」
オットーは部屋に入り、書き物をしている所長に挨拶し、役所での模様を報告した。夫人がそばにおり、ねぎらいの言葉を彼にかけると、気遣いより、温かい飲み物を用意するため、階下へおりていった。所長は話のため、書き物を中断し、筆ペンを
机を挟んで、オットーは立って、所長は肘掛椅子に座って、という形で向かい合った。
燭台が机上にあり、ロウソクの火が、薄暗い部屋に明々と燃えている。
「――成るほど。では、明朝には発つのだね」
「えぇ。その予定です。泊まりになります」
「了解した。だが――」
所長は板ガラスの窓に目をやった。
「――この天気だから、くれぐれも無理はせぬように」
「そうですね」、とオットー。「でも、冬の旅は毎年行っていますから、慣れてはいます」
「ふむ」、と所長は納得する様子を見せた。「ところで、役所の手続きは、どうだった?」
「結果は、さっき申しましたように、外部への配達の認可は通りました。ですが、やはり面倒だったのは否めません」
「変に勘ぐられたりとかはあったのか?」
「いいえ、ありませんでした。今回ぼくの向かう先が寒村で、きっと城のお偉方の眼中にないのでしょう」
「だが、我々とて、逐一配達先を選ばれるとなると、商売にならない。実際儲けは以前より少なくなっている」
「存じております。しかし……」
ドアが開き、オットーと所長はいくぶんビクッとして振り向いたが、夫人がトレーに飲み物をのせて入ってきただけだった。
二人の頭には、今していた、政権に対する疑惑を孕む話を、政権内部の者か、ないしはそのシンパに聞かれれば、無事では済まない場合があるというおそれが、よぎったのだった。
夫人は部屋を満たすどことなくぎこちない雰囲気に始めきょとんとしたが、特に意に介せず、二人の前に飲み物を出した。
オットーも所長も、カップに入った湯気の上がるお茶を口にすることで、緊張や苛立ちを抑え、いくぶんかリラックスすることが出来た。
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