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グルンシュロスの城下町にある、官製の修道院学校では、日々、子供たちが、教師の厳しい指導のもと、学問に励んだ。
男児の場合、更に武術の訓練があり、卒業後は騎士団に入りたいと望む者が多く、活発というよりは、どこか血の気の多い感じがあった。
女児においては、勿論、中には、多くの男児のように、武術に取り組んで騎士などの戦闘員になりたいという者がチラホラ見えたが、ほんの一部の男勝りがそうであるだけだった。大半の女児は、親の勧めに従って、教養を身に付けるために通学しているに過ぎず、そういうギラギラした野望などないのだった。
何と言っても、男児たちは偉くなりたいのだった。この町では、武人が強く、権勢を壟断し、他の商売人や百姓や職人などは劣弱で卑賤とされた。
騎士になれば、確かに戦闘に駆り出され、厳しい生活を強いられるが、官費で生活が保障され、安泰だった。出自が貧しかろうが、知能が優れていなかろうが、強さを示しさえすれば騎士団に招かれ、目下の者を顎でこき使えるようになるのだった。
修道院学校に通う、親族の家に滞在中のリーザの場合、彼女は、生まれ故郷であるゲールフェルト村の滅亡に遭い、長くねんごろだった執事を殺害で失い、父母は行方不明となって、その存否に関しても、同様である。
リーザは利発であり、学校にはやや遅れて入学したが、課程には、ドロップアウトせず、付いていくことが出来ていた。時折理不尽になる教師との間では、その利発さより、互いに付かず離れずの関係を構築していた。変に注目されず、かといって等閑視されるわけでもなかった。
その身に落ちかかってきた不幸を、彼女はおくびにも出さなかったが、内心では同様し、悲嘆に暮れていた。
彼女は、本当は肉親を捜索しに行きたいところで、実際、滅びた村にひとりの飛脚を伴って遠路、旅を敢行したが、執事の死の他、得られるものはなかった。
だが、子供にしてみれば、住処と保護者のそばを離れていることは、そう長くは出来ないもので、結局リーザたちは、やむなく、疑惑を晴らせずに、あるタイミングで切り上げて城下町へと帰還した。
リーザにとって、城下町での生活は、悪いものではなかった。確かに軍が幅を利かせているものの、彼女は適した距離感を察して離れることが出来たし、寄宿している伯父夫婦の家は、豪邸ではないにしろ、ちゃんと自分専用の個室があり、快適だった。学校では、アリサという友人が出来、その繋がりで、彼女の妹のエルマと知り合った。二人の家は花屋で、仲はよさそうだった。
彼女の生活は穏やかだったが、全てがあまねく充足しているのではなく、やはり、埋めなければならない欠落があって、その欠落というのは、家族のことであり、彼女は、日頃、今後どうするかという、将来の選択に迫られているのだった。
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