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雪の降る季節は、その他の季節と比べると、植物のバリエーションが乏しい。気温が低くなると、多くの植物たちは枯れ、地中において休眠状態となるからである。
中には、冬に活動する品種があるが、あまり多くはない。
そういうわけで、花屋の娘であるエルマは、冬になると、接客などの業務が減り、図鑑を読むなどする、自習の時間が増えるのだった。そして彼女は、どちらかというと、仕事より勉強の方が好きであり、しばしば姉のアリサより、学校に行けばよかったのにと指摘されるのだった。
「学生でもないのに」、とアリサがいくぶん蔑みを込めて言う。「あたしより勉強熱心だなんて、おかしいものね」
学校が休みの日の昼下がりだった。
花屋のガラス窓は凍り付いて白く濁っていたが、うっすらと、外の降雪の様が見えた。細かい粉雪で、とけにくいものであり、どんどん積もっていくのだった。
椅子に座り、寒いからと脚に毛布をのせているエルマは、図鑑に目を落とした状態で、「わたしのやっているのは、学校で勉強することじゃないもの」、と返した。
「ふうん」、と、ロッキングチェアに深く座り、グラグラ揺らしているアリサは、ぶっきらぼうに納得した顔を見せる。「まぁ、確かに、植物の勉強なんて、修道院学校では専門的にやらないものね」
花屋の中は、石を敷いた床で、壁には商品棚がしつらえられており、プランターに植わったスイセンなどの冬の植物が可憐に微笑んでいた。
アリサの座るロッキングチェアは、暖炉のそばにあり、その暖気にすっかりくつろいだ彼女は、ロッキングチェアの揺れが助けて、ウトウトとうたた寝しそうである。
エルマはある商品台のそばで椅子に座っており、集中している様子だ。
スイセン、ツバキ、ポインセチア。冬の花々。
春夏であれば彩りに溢れた商品棚は、冬の今、すっかり隙間をあけずに陳列されているものの、品種に乏しく、どこか物足りない感じがするのだった。
エルマは、確かに客の応接などに対してさほど積極的ではないものの、この花屋を任された店番として、一定の自負と責任感を持っており、売り上げを増やそうという企みを常々していた。
彼女は、何らかの方法で寒い冬に暖かい季節の花を咲かせられれば、おおむね暇だと決まっている今の時期でも、店を繁盛させられるのに、と想像した。
暖炉の炎が太陽の代わりになればと彼女は思うのだが、温度においても輝度においても、暖炉の炎は、太陽に遠く及ばないのだった。
「お姉ちゃん」、とエルマは呼びかけてみる。
「……。」
アリサは、暖気にリラックスし切り、すでに眠りに入っている。
エルマは、アリサの寝顔を少し凝視した後、脚の毛布を上げてそばの商品台にかけると、椅子より立ち上がり、窓辺に寄った。
結露した窓を手で撫でると、その跡だけ透明になるのだが、程なくまた、結露に覆われ、外がぼんやりして見えにくくなる。
エルマは、まだ十を少し過ぎただけの少女であり、まだまだ世間知らずであったが、目下城下町がどういう風になっているのか、ちょっとくらいは知っていた。
花々のアレンジや会話など、客の相手をしながら、あるいは、図鑑の花の絵と解説を眺めながら、エルマの頭の片隅には、常にそのことがあり、怪しい影が自分たちの生活へ忍び寄っている気配を薄々感じて、微かに怯えているのだった。
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