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――回想にどっぷりと耽っていられないほど、ぼくが携わる仕事は膨大であり、細かく、多岐に渡った。
ぼくがなった従卒、ないしは
赤っぽい色の短い、後ろに撫で付けられた髪が特徴のブレイズは、ぼくが仕える騎士だ。ただし、ぼくが騎士見習いとして新米であるのと同じく、ブレイズも騎士になって間がない状態で、二人共、振る舞いがぎこちなくなることが多かった。
季節はすでに雪の降る頃だった。
ブレイズが叙任式を経て騎士となり、ぼくが彼の小姓となって、かれこれ一カ月ほどが過ぎた。
色々と変化があった。
薬師のリフレは、新種の薬草を求めて、旅立った。薬品が満載の牛車を伴って、保護者同然だったブルーノを失って孤児に戻ったぼくの将来を案じて、彼は去っていった。彼には彼の人生があり、ぼくにはぼくの人生があり、それぞれは、道を違えたのだった。
滅亡したゲールフェルト村の生存者であり、逃亡者でもある少女、ミアは、この町、フェノバールを離れず、もともとやっていた服屋の仕事を見つけ、幸い、雇用された。
二人共、自主自立の道を見出したわけだった。
だが、ぼくとミアは、ずいぶん長い間、顔を合わせていない。ミアの事情はいざ知らず、ぼくの方は、とにかく忙しかった。
ぼくの仕事は、片時もぼくを解放することがなかった。朝起きてから、夜寝るまで、ずっと、ぼくはブレイズの補助に服さなければならず、みずからの意志で小姓になった以上、怠るわけにはいかなかった。
小姓の仕事もそうだし、何より、このフェノバールという城下町には、ピリピリした緊張のムードがあった。
その象徴といえるものが、城内の広場での稽古だった。冬で極寒だろうが、大雪だろうが、無関係に稽古は奮然と敢行された。
参加する騎士たちの所作を見ると、それは最早、武芸を磨くといった趣味の次元を超え、ほとんど命の取り合いに近い必死さ、厳しさ、深刻さがあった。
ぼくのように小姓・従卒という立場の男子であっても、すでに十分に武芸を磨いている場合は、稽古に参加し、騎士に混ざって特訓していた。ぼくの目には、彼らは輝かしい存在で、まだ少年に過ぎず、ぼくとさほど変わらない年齢なのに、すでに騎士同然に振舞っている姿を見ると、ぼくは感心し、敬服してしまうのだった。
ぼくはというと、その段階に至るにはほど遠く、まだ馬の世話や武具の運搬といった雑用ばかりやっており、そして雑用だけで手一杯だった。要領をまだうまく掴めず、仕事が累積する速度に対して、処理する速度が追い付いておらず、混乱してやり方がおざなりになることが少なくなかった。
余りの繁多さ、及び、自分の習熟度の低さから、ぼくはたびたび劣等感に苛まれ、落ち込んで茫然自失となることがあり、そういう時は、思い出の中へ逃避してしまいがちだった。母ととの日々、ブルーノとの旅。リーザ嬢。老いたコンラートさんとパン屋のメルさん。女性祭司のカタリーナさん。リフレ。ミア……。
ボーッとしていると、ブレイズの呼び声が飛んで来、ぼくはびっくりして、慌てて彼のもとへと駆け付け、注意を食らう――そういうことが、しばしばあった。
だが、世の中の情勢はミシミシと音を立てて荒っぽく変転していこうとしており、ぼくは、いつまでも蒼然と落ち込んではいられないのだった。
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