さまよえるフリッツ【完結】   作:Yuki_Mar12

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第247話

***

 

 

 

「ねぇ、ブレイズ」、とぼくは遠慮がちに切りだしてみた。「前から聞きたかったんだけどさ」

 

 雪の降る真夜中。

 

 夜警のために巡回しているフェノバールの町は、平穏だった。町民はあまねく寝静まっているようで、生活の気配がせず、心細く、気味が悪くなるほどだった。

 

「何だ」、とぼくの話に応じるブレイズの態度は、どこかぶっきらぼうだ。

 

「どうして、ぼくなんかを従卒として引き受けてくれたの?」

 

「自分から従卒になりたいと申し出たくせに、その言いぐさはないだろう」

 

「まぁ、そうなんだけど」

 

 ぼくと彼は、知り合いでも何でもない赤の他人同士だったが、共通点のあることが、ある時判明した。

 

 ぼくも、彼も、出身地の村が同じであり、、メンドンという村だった。

 

「ブレイズは」、とぼく。「メンドンには、いつまで暮らしていたの?」

 

「ずいぶん前だ。このフェノバールに来て、俺は、今回の冬が五度目の冬になる」

 

「けっこう長いんだね」

 

 夜警の順路をどんどん進んでいく。不審者などの異状は見られず、やりがいが感じられないほどだった。

 

「別に無理に付いてくることはないんだぞ、フリッツ。夜警の番は騎士が担当なのであって、従卒は違う」

 

 と、ブレイズが言った。ぼくに気を遣ってくれているようだ。

 

「平気さ」

 

 とぼくは返したが、強がりであり、強がるぼくを、ブレイズは、どこか呆れた感じの目付きで見た。

 

「やれやれ。しかしお前、ずいぶん気安くなったものだなぁ。最初話していた頃は、うやうやしかったのに」

 

「きっと慣れちゃったんだ」、とぼくは苦笑して言う。「それに、ブレイズに対して、別のひとの面影が見える気がするから、猶更なれなれしくなっちゃう」

 

「別のひと? 誰のことだ」

 

「言ってもどうせ分からないよ。ブレイズの知らないひとだもの」

 

 ――ブルーノのことだった。

 

 ブレイズは腑に落ちないという風に首を傾げ、ぼくはというと、微笑ましいと同時に、さびしい気持ちになった。故人を偲ぶのは、物悲しいことだった。その個人が身近であれば、その分情動は大きかった。ブルーノのイメージが脳裡をよぎり、郷愁が襲った。

 

「まぁいい」、とブレイズ。「だが、他の騎士のいるところでは、ちゃんと敬った態度で俺に接しろよ。新米の騎士の分際ですでに従卒を取っているのが、城でちょっとした話題になっているんだから」

 

「大丈夫。目立たないようにするよ」

 

 話をしながら、ぼくとブレイズはフェノバールの一角を巡回した。ただ漫然とブラブラ歩きして済ますには行かず、仕事としての意識を持ち、きちんと物陰にまで注意を配り、疑った。

 

 とにかく、町は――というよりは、むしろこの時代そのものが――ピリピリした雰囲気に飲まれようとしており、のんびり構えるわけにはいかないのだった。

 

 歩き疲れた頃、「そろそろ帰るか」、とブレイズが言うと、ぼくは内心、欣喜雀躍し、ようやく帰れるという思いで嬉しくなった。

 

 騎士の夜警は当番制で、今までもブレイズが当番の夜は、ぼくは随行したし、多分、これからもそうするだろうと思う。

 

 ひょっとすると、本来その必要のないところまでいっしょに行こうとするのは、ブルーノとの別離の経験が、心の傷としてあり、もうひとりぼっちになりたくないという恐怖心が、ぼくにそうさせているのかも知れない。

 

 そういう風に、考えてみた。

 

 

 

***

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