さまよえるフリッツ【完結】   作:Yuki_Mar12

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第254話

***

 

 

 

 時間は緩やかに、あるいは急速に、流れていった。

 

 ぼくは小姓として、ブレイズを支え、武具の管理、整備、運搬、等々、彼の身の回りの世話に務めた。彼の赴くところに随伴し、彼が必要とするケア、フォローを察知して行動し、おのれの職責を、拙いけれど果たしていった。

 

 ぼくの習熟しない仕事の拙さは、だが、段々と、失敗と反省を繰り返すことで減っていき、行動は洗練されていった。

 

 城には多くの小姓、従卒がおり、やはりその中には、優れた者がいれば、劣った者がおり、優れた者が、要領を掴んで、阿吽の呼吸で騎士の支えとなり、余暇を生み出すのに対し、劣った者は、たびたび騎士の妨げとなり、関係をちぐはぐにし、嘲罵され、場合によっては、クビにされた。

 

 ぼくは、どちらかというと劣っている方で、時にはブレイズを苛立たせたが、すっかりダメになるほどではなく、段々と学習していった。

 

 やがて、苦しい期間を経て、何とか余暇を生み出せるようになり、その余暇を用いて、訓練を行った。いずれ騎士となる志を持つ以上、下働きで満足するわけには行かず、理想へ向かって進まねばならなかった。

 

 仕事や精神修養を含め、自分のことに没頭するようになってから、知らない内に、ぼくは、最初はしばしば気に掛けていたミアのことを忘失するようになっていった。ぼくと彼女の時間はじょうずに嚙み合わず、会える機会が絶えてなくなり、縁遠くなった人間同士の必然として、相手の印象が薄弱になっていった。

 

 だが、顔を合わせることは、さほど重要ではなかった。結局、ぼくとミアの進む道はたがえたのであり、再びいっしょになるには、大人になるまで、時を待つ必要があった。

 

 ぼくらは、今は、修行に徹し、せめて自分の食い扶持くらい自力で得られるようにするための、力を身に付けないといけなかった。

 

 冬は長く、厳しかったが、繁多な生活を送る内に、勝手に過ぎ去っていった。

 

 やがて雪解けの時季が訪れ、荒れ野に緑が萌え出るようになった。

 

 気候が温暖になったことで、人々の動きが活発になり、戦争が勃発するようになった。

 

 ブレイズは騎士として動員され、ぼくは彼に随行した。

 

 フェノバール内外での情報交換が密に行われ、敵が来襲する前に、城下町の兵団は打って出ていき、ブレイズとぼくは、フェノバールが統治する地方の町へ、方面軍の一員として派遣された。

 

 ぼくは『教団』との接触を予想し、半ば義憤に燃え、半ば怯えたが、戦火を交えるのは、よその領土の兵士たちであり、その目的は、経済活動としての領土争いであった。

 

『教団』の影は身近に見えなかったし、これといったうわさを聞くこともなかった。

 

 だが、どこかできっと彼らは、活動しており、改宗を強制したり、宗教施設を破壊したりしているに違いない。

 

 もし強大な彼らの進攻を迎え撃つとして、フェノバールが信頼するに足るのか、まだはっきりとはしなかったし、ぼくはぼくで、能力の開花していない発展途上の騎士の弟子か、あるいは実際は救いようのないほど無能の弱者かも知れないのだった。

 

 

 

***

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