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広い円卓のある長い部屋は、アーチ型のガラス窓より通る日の光で明るく、また、部屋の端に等間隔で設置された燭台では、何本もの蝋燭が燃えている。
中央のその円卓の周囲には、ずらりと椅子が並んでおり、騎士を始めとした貴人専用の席はほぼすべて、すでに誰かが占めている。
大半は黒い衣服に黒いマントの騎士だったが、少数だけ、黒い祭服の者がおり、彼らはヨハネスの信頼が篤い聖職者の代表として、彼の代理として、この度の会議に出席したのである。
議長として招集をかけたエルは、まだ会議の開始を宣言せず、ひそひそ話があちこちでされている中、いくつかの空席に疑惑の目を投げた。
「何だ」、とエルは独り言めかして呟く。
すると、隣の祭服を纏う、眼鏡の、ちょびひげを生やした短髪の男が、眼鏡をかけ直すようにクイッと指、二本で持ち上げて、エルの方を見る。
「どうかなさいましたか」
「欠席者がいるのか。それとも、欠席するつもりはなく、単に遅刻しているだけなのか」
「はぁ」、と男は曖昧に返す。「わたくしめには分かりかねます」
部屋の扉が開き、ひとり、入室して、「失礼します」、と一礼する。
クロロだった。
彼はエルのもとへと近付いて、跪くと、彼に小声で報告した。
隣の祭服の男もクロロを振り返り、何事か探る様子だ。
「……成るほど」、とエル。「ふたりの騎士が都合により欠席する、と」
「はい。現在バルビタールにて別の任務に従事しているみたいです。彼らの小姓いわく」
「分かった」
エルがそう言うと、クロロは一礼し、立ち上がり、部屋を出ていった。
パン、とエルが手を一度叩く。
その音で、出席者はあまねく注意を喚起され、口を閉じ、エルの方を向く。
「会議を始める」、と彼は手を下ろす。「ふたりほど、事情により欠席となっているが、さして問題はない。今回の題目は……」
エルは、先般『光』への反抗を企てたことで攻撃され、滅びた町の運営に関して述べた。
――話しながら、エルはどこか居心地を悪くさせるものを、うっすらと感じ取っていた。
エルは高位にある上官なのに、出席者の中に、どこか傲岸さや不遜さを思わせる態度の者がいるのである。彼らは、あるいは口元に薄ら笑いを浮かべ、あるいは口を一文字にして睨むようにエルを睨んでいた。
「――と、いうわけなんだが」、とエルは話を終えようとする。「貴君たちの意見をたまわりたい。進んで町の統治と復興の指導を引き受けてもらえれば、幸いだが」
そう期待を込めて言ってみたものの、いい反応は絶えてなかった。
「――報酬次第では、やらないこともありませんが」
と、ひとりの騎士が、にやけた顔で手を挙げて言う。
「相応しい報酬以上を出す余裕などない。我欲は慎んでほしい」
「ヘッ」、と騎士は小ばかにしたように鼻で笑い、手を下ろす。「『光』がこれだけ大きい組織で、がっぽり稼いでるっていうのに、報酬が弾めないのは、どうも飲み込めませんねぇ」
「支出の無駄を抑制するのは当たり前のことだ」
「賊上がりのネズミ如きが――」
誰かがそう呟いた気がした。エルはにわかにピリッとし、険相で相手の騎士の顔を睨んだが、そのセリフを吐いたのが彼かどうかは定かではなかった。
沈黙が場を凍り付かせる。
エルは目を瞑って深呼吸し、怒気を和らげる。
「まぁまぁ」、とエルの隣の助祭が間を取り持つように言葉を挟む。「会議はケンカの場ではありませんよ。建設的にいきましょう」
――円卓を覆う険悪で荒んだ空気が薄まるには、まだもう少し沈黙の時間が必要のようだった。
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