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それは、火砲の構造をもとに設計された試作品の新兵器だった。
日没の進んでいく春の夕、エルは単身、城の武器庫へと向かい、燭台の火を頼りに、暗くて目の利かないその暗い部屋の中で、ある持ち手の付いた木箱のそばにかがんだ。
燭台をひとまず置くと、エルは木箱を開け、中に爆薬の瓶を入れて閉じ、木箱と燭台、それぞれを両手に持って立ち上がり、、武器庫を出た。
その後少し歩いて彼が移動したのは射場だった。屋外との境界のない開放された部屋で、遠くにまるい的が置かれている。
普段、この射場は弓矢の射的の訓練で使われるところであり、今は無人だった。
彼はひとり、射場に来ると、携行してきた木箱を開け、中に入っているものを取り出した。
それは、長く細いもので、いささか杖に似ていて、棒の先が湾曲しているのだった。
だが、形状は杖っぽいものの、構造が複雑で、各々きちんと意味のある部位の連続によって成り立っていた。
コーティングされたツヤツヤの木に、金属の装飾が施されており、湾曲部の始点に切れた輪っかが付いていて、指を引っかけられそうな金属の薄い板がある。
エルは、その“試作品”を、目を細めて燭台の火で照らしてまじまじと観察すると、開発者に聞いた通りに動かせるかどうか試験しようと思った。
木箱の中に、必要な一式が揃っている。
まず、彼はそれを床に立て、先端の穴より、爆薬と弾を、専用の長い棒で底まで突っ込んだ。
そして持ち上げ、装飾部の蓋を開け、中に火薬を込めて閉じ、後端の寝ている火打ち石の付いた金具を起こす。
これで、一通りの手順は済まされたようだった。
エルは、銃口と思しき穴を的へ向けてその兵器を構えると片目を閉じて照準を定めた。薄暗い中、目標はぼやけて見えにくかったが、この際、命中するかどうかは重要ではなかった。
彼は湾曲部の切れた輪っかの板に指をひっかけると、一度呼吸を整えてから、手前に引いた。
すると、パンという鋭い破裂音がして、赤い火花が銃口の穴より飛散して中の弾が勢いよく飛んでいき、エルは反動で兵器を落とし、尻餅を付いてしまった。
一瞬のことで、エルは驚いたし、尻餅で腰を痛めたが、すぐに四つん這いの姿勢で前進し、的に目を遣った。
果たして、的には穴らしき黒点が何となく見え、どうやら発射された弾は当たったようだ。
火薬の燃える時独特の臭気が辺りに漂い、尻餅の衝撃で燭台が倒れて灯火が消え、射場は心細くなるほど暗かった。
エルは試作品の具合に納得が行った様子で、おもむろに立ち上がると、一度深呼吸した。
『銃』と伝わるこの兵器――あるいは武器と言うべきものは、恐るべき威力を持っているらしい。矢では突き刺さっているだけの的に、被弾によって、えぐられた風穴が貫通しているのだ。この弾が、人体に当たった時のことを思うと、エルはぞっとした。強力無比であり、また、残忍だった。
要するに、この武器は、いわば火砲の小型、携帯型であり、威力こそ火砲に劣るものの、対人用では、弓矢や弩などと比較すれば、お笑い種になるほど、より凄まじい殺傷能力を有しているようであった。
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