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グラルホールドにおける、オットーの仕事というのは、特にこれといって決まっていなかった。
オットーは、この町の首長であるベーラムの召使といっていい立場であり、彼の庇護を受ける代わりに、彼の言い付けに従うのだった。
グルンシュロスを去ったオットーがこの辺境の町、グラルホールドを訪れた時、彼は長旅でクタクタに疲弊しており、この町より遠くへ足を伸ばす気にはなれず、この町に新顔として受け入れられることを望んだ。
彼にとって、グルンシュロス外の境域は、飛脚として出ている場合は、やるべき任務と向かうべき目的地がはっきりしていたので、迷わなかったが、どこへ行ってもよいという状況で動き回るというのは生まれて初めてのものであり、とても困惑した。
勿論、旅立つ前の準備として、地図を見るなどして、旅のイメージを思い描いたりしたのだが、あまり有益ではなかったようだ。
オットーが飛脚として、あるいは一度だけ、あるいは何度か訪れたところは多々あり、その中に好ましいと思えるのが、ないことはなかったが、どの町も村も、所詮、グルンシュロスの関係のあるところであり、どこでも、武人が最も偉くて民が圧力を被っているという政情は変わらず、あまり進んで移り住もうという気にはなれないのだった。
そういうわけで、オットーはどこか新しい未知の人里があればいいと思い、希求した。
だが、時代全体に渡って荒々しい風が吹きまくっており、力の劣った小さい集団は、弱肉強食の原理によって次々に侵略され、制圧され、慣習、土地、住民、等々は諸共吸収された。
世界は、勢力の強い集団の分断と激しい対立によって成っており、オットーが望むように、牧歌的生活を送ることの叶う人里は、ないと断言していいくらいだった。
オットーは、一縷の希望の存在を信じて、旅路を進み、賊が跋扈していたり、戦場で血なまぐさい争いが繰り広げられていたりする危ないところを避けて行くと、自然と開けたエリアを離れ、山や谷の深いところへと向かっていった。
携行した保存食で食い繋ぎながら、彼は険路を進み、やがて手持ちの食料がなくなると、草や木の実を食べて空腹を凌いだ。
旅の道中、オットーは、彼が実質的に立場を同じくしている流浪者(ボヘミアン)を見かけたが、生き生きとしている者は、ひとりとしておらず、誰も彼も、光明と健やかさとふるさとを喪失し、不定者として、薄汚い身なりで亡霊のようにさまよっており、オットーをゾッとさせたのだった。
彼の道は苦しいものだったが、彼の生存への意志が奏功したのか、行き先を定めず迷いに迷った末、とうとう山を越え、海抜の高いところへとのぼり、グラルホールドの付近へと至ったのだった。
高所の空気のせいか、何か馴染みのない感じがし、人里をようやく見つけたというのに、不安が止まなかった。
彼の前に、異境が開けていた。
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