さまよえるフリッツ【完結】   作:Yuki_Mar12

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第299話

***

 

 

 

 一通目の手紙を届けた相手の男に、オットーは、自身が興味のあること、つまり、ベーラムや、その友人であるこの男が類別される人種について、詳しく聞きたいと思った。

 

 オットーと彼らとは、肌の色や、使用する言語や、衣服の彩色・模様などの点で、明らかに違っていた。

 

 オットーは異人の存在に関して、幼い頃から、何となく親などの口からあるいは噂として、あるいは伝説として、半信半疑に聞いていた。

 

 

 

「――どうしたのかね、君」

 

「あっ……」

 

 オットーは男に呼び覚まされ、ハッと我に返る。自分の関心事で、夢うつつの状態だったのだ。

 

「具合でも悪いのか?」

 

「そういうわけではないです。ちょっとボーッとしてました」

 

「疲れているんじゃないか?」

 

 男は、オットーをどこか病人でも見るように、哀れみを込めた目で見る。

 

「いえ、体調には特に問題はありません」

 

 そう答え、オットーは手紙の束を返してもらい、肩掛けの革のバッグにしまう。

 

「では、お邪魔しました」、とオットーは一礼して言う。

 

「もう行くのか。しばらく留まってくれてもいいのだが」

 

「お言葉は嬉しいですが、まだ届け物が残っているので」

 

「そうか。遠路はるばるご苦労だった。ありがとう。貴君の一路平安を、お祈り申し上げる」

 

 男は、厳粛に、仰々しい仕草で惜別の挨拶をする。

 

「ひとつ、お聞きしてもよろしいですか?」、とオットーは、その挨拶を最後まで見届けた上で、尋ねる

 

「構わないが」

 

「あなたは、ベーラム殿とは、どういったご関係でいらっしゃるのでしょうか」

 

「わたしと彼は、古い馴染みさ。さっき言った通り、友人なのだ」

 

「失礼であれば大変恐縮なのですが……どうして、わざわざこういう場所に、孤立する形でお暮しになるのですか?」

 

「ふむ」、と男は、顎を持って考え事するように、静かに目を伏せる。「その話をしようとすると、長くなる。いかんせん事情が込み入っていてな、端的に説明するとなると、ちょっとばかりホネなのだ」

 

「そうですか」

 

「言葉足らずではあるが、ある種の悲劇があったとだけ、言っておこう」

 

「悲劇……」

 

 ――別れはしんみりしたものだった。男の言った悲劇という言葉が、重たい感情を伴って、二人の間に共有されたためだ。

 

 山荘を後にし、待っている馬のかたわらに来ると、馬は鼻をオットーの顔に近寄せ、においを嗅ぐ仕草を見せた。馬のしめった鼻先が、すぐそばまで来、その生ぬるい吐息がかかったが、オットーは物思いに沈み、中々乗馬しようとしなかった。

 

 

 

 ある種の悲劇、というのは、一体何なのだろう……。

 

 

 

***

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