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わたしたちのフェノバールは、それまでの戦績に反して、『光』に大敗を喫した。
フェノバールの再建が望まれるが、領土を奪われた敗者などに、一体どういう可能性が残されているというのだろうか。
希望は断たれたようであったが、幸い、わたしたち避難してきた者たちは、団結力があった。社会の基礎はにんげんだ。にんげんが社会を形成する。問題は、その方法なのだ。
「フォンス、お前が率先して町の者らを導いたと聞いたが」
と、ブレイズが言う。彼等は対面していた。
「ハッ」とブレイズは背筋をまっすぐにし、恭順に返す。「僭越ながら、勤めさせていただきました」
「よく血路を開いた。賛嘆に値する」
「滅相もございません。わたしは、王が囮になることで作ってくださった逃げ道をただ逃げたばかりです。むしろ血路は、王が開いてくださったのだと存じます」
「王は勇敢であり、偉大であられた。その偉大であられた王は、もうおられない。我々は王より自立せねばならない」
そう言うブレイズは、どこか心細げに、そばの木陰で座っているわたしの目には、見える気がした。
「フリッツ」とブレイズは目を合わせず、呼ぶ。
「はい」、とわたしは立ち上がり、彼のそばに寄る。二人きりの時はわたしは彼に対しカジュアルだが、周りにひとがいる時は、きちんと従卒として振舞わねばいけない。
「おれはまだ確認しきれていないが、おれの他に逃げてきた上官級の騎士は誰がいる?」
「えっと……」
わたしは記憶にある限り、その名を挙げた。連れ添っていっしょに逃げてきたので、顔と名前はある程度把握していた。
「分かった」、と彼は頷く。「今から今後のことについて話したい。集めてくれるか?」
「了解しました」
そう答え、わたしはこの木立の中、行ったり来たりし、ブレイズが召集していると言って回った。
しばらくし、ブレイズのもとに他のひとたちが集まり、彼等は木立の外まで議論しに行った。
わたしは特に付いてこいとも言われず、キャンプに残って待っていることにした。
まだ好天は続き、曙光の煌めきに相応しい快晴の空が木々の枝葉の格子の奥に見上げられた。
ミアはマルテと話しており、これまでの経過を互いに教え合っているようだった。
わたしはひとりでおり、再び樹の幹にもたれて座り込むと、ぼんやり考えた。
わたしたちに行く当てが全くないということはない。フェノバールと同盟関係を結ぶよその
だが、『光』の魔の手がフェノバール以外には伸びていないとは限らず、最悪の事態をわたしたちは常に想定しておかないといけない。
ふと、マルテと話しているミアと目が合った。彼女は反射的に微笑み、わたしも同じように微笑み返すと、互いに目を逸らした。
わたしたちは、今回大きなものを奪われることになったけれど、だからといって、すべてを喪失したわけではないと、ミアの微笑む顔を見て、わたしには思えてくるのだった。
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