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ブレイズの背中で眠りこけている間、わたしは夢を見た。それは、過去のある一日の再生のようだった。
メンドン――わたしとブレイズの故郷だった村で、わたしは母とふたりで暮らしていた。わたしたちは農奴で、日々を苦しい労働に捧げ、爪に火を点す生活に甘んじていた。
その生活は、わたしにとって、不幸だったようで、その実不幸ではないように、夢に見たわたしは思えた。なぜかと言うと、家族がいたからだ。母の存在がわたしの身近にあって、毎朝いっしょに起き、田畑や果樹園で精を出していっしょに働き、夜になればいっしょに寝た。家族がいることの温かさが、苦しい生活で苦しむわたしを――そしてきっと母をも――破滅から守っていたという気がする。
……。
『光』がミア及び、彼女が住んでいたゲールフェルト村の人々に対してしたことを顧みてみて、フェノバールにいて戦火より逃げ損ねた人々もまた、同じような目に遭っているのかも知れない、と思うと、わたしは胸が悪くなってくるようだった。すなわち、拉致、監禁、人格の否定と洗脳。ミアのように強い意志で外の世界を求めない限り、『光』の圧力は、彼等の個性を仮借なく破壊し、洗脳に都合のよい状態に作り変えるだろう。
いつしか目覚めたわたしは、ブレイズに後どれくらいで目的地まで着くか、聞いてみようと口を開いたが、馬が疾駆することで発生する風切り音がうるさく、声を張るのがホネだったので、諦めて黙っていた。
景色は流れている。わたしたちは前進し続けている。焦らずとも、いずれ着くのだ。
ガラガラと車輪の回る音がする。編隊に組み込まれた馬車の車輪だ。数台あるそれらの内一台に、ミアとマルテがいる。
彼女等は、どういう心境でいるのだろう。わたしと同じように、寝たりしているのだろうか。あるいは黙然とこの先のことを案じているのだろうか。
「おい」、とブレイズが叫び、わたしはびっくりしたが、仲間に向かっての叫びだったようだ。「インベガまで後どれくらいだ」
「この平原がやがて下りになります。その先の窪地を越えて上がっていった先の丘の上が、インベガです」
と、先導役の騎士が答える。
インベガは、きっと町の名前なのだろう。どういう町なのかわたしは知らないし、きっとブレイズも知らないだろうと思う。フェノバールと同盟関係にあるならば、種々の産業で交わりがあるだろうが、わたしは遣わされた経験がなく、きっと他の者が使節として外交のため、赴いていたのだろう。
今回は緊急で、相手方にわたしたちの訪問の旨は伝わっておらず、これだけ大勢でいきなり現れたらきっと戸惑わせてしまうので、先に行ってあらかじめ今後の話を付けてくるよう、ブレイズはひとりの騎士に命じた。
騎士は聞き入れると、馬を蹴って加速させ、先に行った。
晴れている空の青色が、いささか褪めている。日が暮れようとしているようだ。朝に発って昼を過ぎ、とうとう夕になった。ずいぶん走ってきたようだが、まだ行程は残っている。
いくら緊急でも、夜を日に継いで走るというわけには行かないだろう。馬だってくたびれているし、どこかで休憩しなければいけない。適当な場所があればいいのだが……。
わたしは狸寝入りをやめ、姿勢を正した。わたしの動きにブレイズが微かに反応し、互いに言葉は交わしていないが、わたしの起きたことが彼に伝わったようだった。
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