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会合は、重役だけで開かれることになっており、わたしを始めとした小姓は現地の兵団への入団手続きを可及的早く済ませ、彼等との合同の訓練に取り組むよう、師事する騎士に言い渡されていた。
手続きといっても煩わしいことは特になく、ただ自身の名前と経歴を簡単に所管の者に伝え、身分を明かせば充分だった。
ここでわたしが小姓という騎士の前段階の身分でするべきことは、フェノバールにいた頃とさほど変わらず、むしろ同じといってよかった。
そして、『光』の新しい戦術を身を持って思い知ってしまった今、わたしは――わたし以外の者もきっと同様の心境だと思われるが――旧習に忠実であること以外には特に讃えられるところのない、当地で行われている従来の戦闘訓練に対して、どこか白けた気分になるのは、否めないのだった。
訓練は終わりまで通しで行われるわけではなく、途中に休憩を挟む。
にんげんが、異郷の人々の輪に容易になじむことの出来る生き物であればいいのだが、中々そうはいかないのが、悩ましかった。
フェノバールの者とインベガの者は、表向きは協同しているが、やはり互いに打ち解け合うには、時間が必要のようだった。
敵前より逃げてきたわたしたちは、敵を招き寄せるだけの、敵にとって都合のよい獲物であり、町を脅威に晒すだけなのではないかと陰口をささやかれたし、負けたわたしたちを侮って面白半分で決闘を申し込んでくる者があった。
わたしたちは塞ぎ込んだり、ムッとしたりしたが、立場上、強くは出られないのが悔しかった。とはいえ、インベガの兵士たち全員がそういう悪意を向けてくるわけではなく、中には人柄の善良な者がおり、彼等の存在は、無駄な決闘やいさかいが起こらないようにするお守りのような役割を果たしてくれていた。
朝から始まった訓練が休憩に入ったのは太陽がちょうど空のいちばん高いところに来た昼間のことだった。
城で昼食の用意があると前もって聞いてはいたが、わたしは当地の慣れない人たちと、フェノバールの頃と変わりばえのしない今となっては余り意味を感じない乗馬や剣術などの訓練に変に疲弊し、外部の空気を吸いに行きたくて城外へと出た。
ちょうど番兵に外出する説明をして門を出て少し行ったところで、見知った顔と出くわした。
「……ミア」
彼女は、わたしとは逆にこれから城へと戻るようだ。
「フリッツ。外に用事?」
「あぁ、ちょっとね。大したことはないんだけど」
「訓練は捗ってる?」
問いに、わたしは曖昧に肯定して返した。捗っていないと言うと、彼女はあまりよく思わないだろう。
わたしの表情も冴えないしけたものだろうが、彼女のもおおむね同じだった。
「その様子だと、服屋の仕事はなかったみたいだね」
「えぇ。そう都合よく人手が足りてないということはないみたい」
「ゆっくり探しなよ。まだ初日だろ? 腐るには早すぎる」
「そうね。フリッツ」
彼女はくしゃっと笑ったが、どこかしなびた笑顔だった。
脈々と続いていたが断ち切られた生活の糸を繋ぐのは、易しいことではないようだった。まっすぐだった糸が、ねじれたり、歪んだりする。だが、そういう苦しい変化を、わたしたちは受け入れなければならないのだろう。
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