さまよえるフリッツ【完結】   作:Yuki_Mar12

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第321話

***

 

 

 

 マルテのこと、木立の部隊の合流、ミアの再就職先、等々、懸念される事柄はいくつかあったが、とりあえず安定した秩序に組み込まれることにより、わたしたちは、当面の平穏さは確保されていた。

 

 さて、インベガに来て間もないある日、街の付近に不審者が現れたという。

 

 わたしはてっきり『光』の者が早くも来襲したのだと青褪めたが、違うようだった。

 

 警備に当たっていた当地の兵士いわく、街への出入口に繋がる坂道の舗装道路を、ひとりの男がフラフラと歩いていたので、声をかけ、取り締まりのため、尋問を行ったという。

 

 男は、身なりが汚く、言葉の使い方もあまり覚束ないようで、浮浪者のようだった。

 

 場合によっては殺されることになったかも知れないその男は、だが、兵士の問いかけに怯えながらもきちんと筋の通った答えを返すことで、信用を得ていった。

 

 彼はだが、ひょっとしたら害をなすかも知れないおそれがあるという理由で、当座の間城の牢屋に入れられることとなった。

 

 他の者はきっと、浮浪者など切り捨てても罰は下らないなどと考えるだろうが、わたしは、彼にちょっとだけ関心を持った。まず、彼がどこから放浪して来たのか。平原より来たのなら、道中でわたしたちの遅れてくる仲間を見たかも知れない。反対に、山地の方から来たら、それはそれで真新しい情報を彼が持っていて、わたしたちに思わぬ利益を与えてくれるかも知れない。

 

 城。牢屋。

 

 変わりばえのしない訓練の最中、わたしはずっと、牢屋に行って浮浪者と言葉を交わすことを想っていた……

 

 

 

 ブレイズたちが参加した会合は、催されたその日に、さほど長くない時間の内に終了した。

 

 主題として話されたのは、やはり『光』の新戦術への対処法であり、喫緊の課題であった。防衛戦で戦った偵察などの役目を担う兵士の描いた絵などを用いて説明がなされ、概ねその脅威は相手に伝わったと、ブレイズは言った。

 

 革新的な戦術は、だが、インベガの者たちにとっては未知のものであり、実感を伴った理解を得るのは容易ではないようだった。

 

 騎士、兵士への戦闘訓練は、依然として前例通りに行われており、従って、その意義は薄い。会合の後、フェノバールとインベガの指揮官同士で訓練の内容に改変を施すべく、打ち合わせを行っているようだが、現在進行形で、まだ明確な答えは出ていない。

 

 漏れなく会合に臨席した王ギュンターは、決して頑迷ではない人柄だが、兵学に疎く、今回の話題に関してどこか投げ槍であり、彼はきっと、実戦に出た経験がなく、現場の人間に全てを委ねるしかないのだろう、と、ブレイズは推測した。

 

 何だかすっきりしない気分で訓練に打ち込み、他は基本的にぼんやり過ごしていたが、数日すると、離れ離れだった部隊がインベガに到着し、わたしたちの大部屋は輪をかけて大所帯となり、騒がしくなった。男ばかりが増えてずいぶんむさくるしくなったし、男女の生活空間は分けるのが好適ということで、合流の後、部屋が男女それぞれに分けられて二部屋となり、大部屋より面積が小さくなった。

 

 フェノバールの人々を伴って逃げる際、率先して指揮をとってくれたフォンスも漏れなくメンバーに加わっており、わたしたちは再会を言祝ぎ、握手を交わした。

 

 無事かどうかお互いに相手の安否を確認し、目の前まで迫っていた危難がひとまず去ったのだと、安堵するのだった。

 

 

 

***

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