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「チェッ。しけちまってらぁ」
と、エルが舌打ちと共にぼやいた。
彼は背中にしょっていた棒に似たものをいじくり回している。
クロロにはそれが何なのか分からなかったが、他の者も同じようで、ポカンとした顔が、ランプの灯火にぼんやりと照らされている。
「エル殿、その代物は何なのですか? ずっと背にしょってらっしゃいましたが」
と、ひとりの騎士が訊く。
彼が困ったように点検しているそれは、杖のように湾曲した持ち手の付いた棒の先端に、金属の筒が、ニョキっと突き出している。筒はその大半を油のコーティングがなされた木によって覆われており、各所に装飾が施されている、
「俺たちの火砲を携行できるように小型化したものさ。思い浮かんだアイデアを科学者に伝えて図面に起こし、職人に命じて造らせた」
「火砲ですか?」
問いかけた騎士を始め、クロロも、その他のキャンプの灯火に寄り集まっている者も、驚嘆すると同時に、にわかに関心を持って、エルの方に注意を向けた。
「ということは」、と騎士が続ける。「その棒の先の筒から、弾が発射されるのですね」
「あぁ。今回の旅で試験的に使ってみようと思って持ってきたんだが、この雨にやられて、乾くまでは多分、使い物にならないだろうな」
エルはその携帯型の火砲を両手で持ち上げて先端を正面に向け、持ち手の辺りを目のそばまで持ってくると、片目を瞑って照準を定めた。
火砲が浴びた水は木の表面に処理された油に弾かれて、水玉となってくっついていた。
「試し撃ちは、すでに何度かしている」、とエル。「出来栄えは悪くない。射場の的を撃ちぬくばかりだったが、弓矢の矢であれば突き刺さるだけのところが、こいつの弾丸は貫通する」
「それは、さぞ強力で、敵にとっては恐るべき脅威となることでしょう」
騎士は半ば感激し、半ば慄然としてそう感想を述べた。
矢が刺さる痛みは、彼は幾多もの戦を通して知っている。致命傷こそ受けてこなかったが、避けきれなかったり、流れてきた矢が刺さって負傷した経験は何度かあるのだった。
矢が体を貫通したことなど一度もないが、エルが言うように、弾丸が射場の的を貫通するのだとしたら、思うにひとの体に当たった場合も、きっと貫通するのだろう。傷口は弓矢によるそれよりも深く、果たして元通りになるまで治癒するのだろうかと、彼は恐怖と共に疑問に思った。弾丸の力によって、皮膚が裂け、肉も裂け、内部の組織がめちゃくちゃに潰される……想像した彼はゾッとし、自身が『光』の敵という立場にいなくてよかったと、ひどく安堵するのだった。
時間が経ち、ランプの灯火が届かない辺りが完全な闇と化した頃、それまで強かった雨脚が落ち着いてきだし、クロロは幌の外側に見える空模様を窺ってみたが、雲の切れ間が、暗色の夜空に微かに見えていた。
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