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城下町グルンシュロスは、この戦乱の時代にあって、強い軍隊と豊かな国力を背景に、数々の争いを切り抜け、主権と独立を保持してきた。町全体に王政が布かれ、王家の男が代々君主の座を継いで統治し、城下町の人々は、不満のない生活を送る中で、王家を支持し、秩序は安定していた。
だが、ある時、栄枯盛衰の理が現れ、城下町の情勢は段々と傾きだした。城下町が武力で制圧し、支配下とした荘園が、侵攻してきたよその領土との争いに敗北することで奪い取られ、元々そこからの搾取によって得ていた資源などが手に入らなくなり、勢力は減退していった。
そういう時のグルンシュロスの王が、暗愚であれば、有効な策を講じることが出来ず、勢力は衰微するに任せ、最終的には潰滅させられ、新しい政体に取って代わられたことだろう。
ところが、グルンシュロスの王、フレデリックは、暗愚ではなく、確かにひとを牽引するカリスマ性には乏しかったが、自己を客観視することが出来、みずからに足りない部分に関しては、他者の援助を借りて補うことが出来る融通性があった。
彼は、そぎ落とされていく城下町の勢力を憂い、また、人々の哀訴や陳情もあり、だが、従来のやり方では勢力を維持・発展させることは困難だと踏んだ中で、彼は、ある相手と同盟関係を結ぶことに、考えが至った。
それは、各地に名を轟かせる大・強国バルビタールだった。
バルビタールは、元々グルンシュロスが宿敵とし、互いの軍同士が戦火を交えたことがあり、いずれは攻略しようと思っていた、勢力の拮抗する相手だったが、バルビタールが繁栄を謳歌する一方で、グルンシュロスは気運が下がり続け、落ち目となっており、最早対抗し得るほどの力は失っていた。
恥を忍んでフレデリックはバルビタールの王オリバーに書面を認め、同盟関係を結ぶことを求めた。勿論、フレデリックがへりくだった立場であり、同盟といえども、その実は、支配・被支配の封建的関係だった。
その頃のバルビタールはすでに、現『救いの光』である『真光教団』と、緊密に結び付いており、グルンシュロスは、バルビタールにかしずいたことで、図らず同時に『光』にも屈することとなったのである。
そういう経緯で、グルンシュロスは、『光』と繋がったバルビタールより、直接的支配のために兵士・騎士が送り込まれ、それまでの政体が改変され、軍主義化するようになったのである。
軍主義化によって、軍人が巾を利かせるようになっただけに留まらず、城下町では、『光』の教え・思想が布教され、元々あった土着の宗教の信仰活動と施設とは悉く中止させられ、改築され、礼拝を主とする新しい宗教的ルーティンが習慣化され、その相応しい場としての教会や聖堂なども、新しいものとして生まれ変わったのである。
グルンシュロスに長く住む人々は、初め様々な変化・変容に驚き、戸惑いを隠せなかったが、重々しくて大きな力に抗えるわけもなく、従順に適応していかざるを得なかった。中には、反抗分子が現れることがあったが、統治者の側に立つ、強大な力を持つ軍の者たちには、彼等は弱小で、到底敵わないのだった。
それはまるで、ある強力な害毒に冒された体において、普通反応する防衛機能が、毒にちょっと抵抗してみるだけ抵抗してあっけなく返り討ちにあった後、なすすべもなく屈服し、体中が毒に満たされていくのと同じようだった。
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