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城郭に上がり、フェノバールへと入り込めたのはいいが、わたしたちは、無用な争いはなるべく避けるべきだった。
今度の作戦の狙いはあくまで『光』の兵器の鹵獲・運搬であり、戦闘ではない。
わたしは、城郭に上がって通路を用心深く歩き、その兵器の所在を確かめてみたが――きっと遥か下方の地面に設置されているのだろうが――見えなかった。物見櫓を下りてみようかなどと考えるが、やはり怖さがあった。
わたしたちの仲間には、フェノバール出身の者が大勢いるが、やはり祖国を奪われたことの憎悪は否めず、その感情が彼等をして、積極的に、また不必要に、人殺しをせしめた。これまでに見舞われた不運の腹いせのために、彼等はこの隠密行動を取るべき状況下、むしろ進んで『光』の者を探し、埋め合わせをさせているかのようだった。
第一陣にも第二陣にも、指揮官がいるが、彼等は、兵士たちの荒仕事に、見て見ぬ振りを決め込んでいた。目立つような振る舞いでなければ、たとえそれが作戦の本意から逸れていようと、構わないという感じで、結局彼等も、フェノバールの出身者で、愛郷心と憎悪から、『光』に対しては情け容赦ないのだった。
激しい交戦になる気配があまりないと分かると、指揮官はひとりの兵士に対し、梯子を下り、下の仲間たちに、しばらく城郭を上らなくていいことと、作戦の次なる局面に備えて準備することを伝えるよう指示した。
わたしは、物見塔を下りることにした。
すでに仲間の見張りのいる出入口を通り、中に入ると、細い階段があり、螺旋を成していた。
「下に下りるのか?」、と見張り。
「えぇ、城郭の上からでは、兵器の所在がつかめないもので」
わたしたちは、声を潜めて囁き合った。
階段の壁には壁掛けの燭台が設置されていて、灯火が付いているので、下りる際の不便はなさそうだった。
「もし」
と、わたしは口にした。不意に閃いた着想があって、見張りの他にそばに誰もいないので、結果的に彼に聞いてもらうことになった。
「わたしたちが、兵器を奪取することに成功したら、その次の展開は、どういうものになると思いますか」
「展開?」、と見張りはきょとんとする。「そんなこと、考えるまでもないだろう。兵器を奪ってこっちのものにすりゃ、おれたちは『光』と対等に渡り合えるってことだ」
つまり、わたしたちは、『光』への抗戦、対戦のために、その前提条件を整えるために、今度の作戦に従事しているのだ。わたしは、恩人であるブルーノの仇を討つために、フェノバールを故郷とする人々は、故郷を奪われたことと、慕わしい王の死の報いを与えるために、『光』を不倶戴天の相手として見ている。
「お前の思っていることは何となく分かる気がするが」、と見張り。「今はやさしさも、怯えも、ためらいも、何の役にも立たないぞ。出くわした人間全員を手にかける覚悟で動けよ」
図星を突かれて、わたしは苦笑がこぼれた。
「分かってはいます。これでも、わたしは騎士の端くれですから、戦いに感傷を持ち込むつもりはございません」
――わたしは、ふと、わたしたちの行く末に、影が差して見える気がした。わたしたちは、敵に奪い、奪われ、殺し、殺され、互いに喜んだし、悲しんできた。その繰り返しを今まで生きて来、そしてこれからも、変わらず生きていくのだ。
そういう繰り返しの中を、わたしたちが永劫、巡り続けるのだと思うと、わたしは、何だか空虚さを覚え、物悲しい気持ちになった。
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