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『光』の幹部の過去を知るという掃除夫との対話をまめに続ける一方で、わたしは、他の兵士たちと共に、すでに組み込まれている将来の戦争の要員として、トレーニングに励んだ。
兵器の研究は継続して進められ、その内複製が可能になり、更には、改良型の開発までされた。改良型といっても、劇的に変化したものではなく、せいぜい小型軽量化を図ったくらいである。
劇的な変化は、他にあった。
わたしたちの、わたしが古くさくて前時代的だとボヤいていた戦闘訓練の内容が、ガラリと変えられたのである。
それは、兵器の研究と密接に関わっており、わたしたちは、次『光』と戦う時、同じものを所有するようになったという点で以前までの戦力差の開きを埋められるようになったものの、結局わたしたちはこの兵器を攻略しなければいけないのである。
問題は、砲弾の爆発の威力だった。がっしりした鎧を纏った重装兵でさえ、砲弾の爆発を被れば即死である。軽装の歩兵など、木っ端みじんに吹き飛ばされるというものだ。
そこで、自然科学者と参謀は互いに話し合い、あるものを戦地に設けることを説いた。
塹壕という、壕の一種だった。直立状態のひとがすっぽり入れるほどの深さがあるもので、そこに入れば、地上にのみ影響のある爆風は避けられるし、立体物として地上に存在しないので、敵側の弓矢などの射撃に対して優位を取れるのだった。
塹壕は普通の穴というには深く、また、戦争においてはスピーディーさが要求されるので、深い穴をいかに素早く掘るかという能力とセンスを洗練する必要が、わたしたちにはあった。
そういうわけで、色々と新しいものが訓練に取り込まれたが、わけてもキツいのが、塹壕を掘る訓練だった。
元々高所にあるインベガには、付近の地形が要害となっていて、塹壕を掘る必要がないのだが、平原まで下りて、その訓練は行われた。金属製の重みのある大きいシャベルで、穴掘りし、その後、衝撃や振動などで簡単に崩れないように、木の板などで壁を強化した。
塹壕の訓練は、いかに適切な範囲を重量のあるシャベルで早く掘削出来るかというものであり、技術が求められた。
わたしたちは毎日土塗れになるまで訓練し、取りあえず、インベガ付近を塹壕地帯にするまで訓練は続けられるようだった。
共に訓練する皆は大体ピリついていて、彼等と和やかな話をするには、うっすらと障害があって気遣わしく、どこか難しいようだったが、城の廊下の隅で話す掃除夫だけは、そんな雰囲気に毒されることなく、いつも間の抜けたくたびれた佇まいでおり、知らない内に、彼のその感じは、疲れがちになったわたしにとって、リラックスして息を抜くのに好適なものになっていたのだった。
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