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わたしは毎日過労でクタクタだった。掃除夫と話していると、話の内容そっちのけで、彼の身分が羨ましいとさえ思えてくるくらいだった。城の清掃と塹壕の掘削、どちらがより多くの労力を要するか、比べるまでもないというものだ。
わたしたちの町インベガは、来る日も来る日も繁多だった。『光』の反撃への防備のために、やることは無限にあった。
戦争の趨勢を決めるのは、より多くの物量であり、より高い技術だった。泥臭い近接戦闘は従来ほど重要視されなくなり、塹壕が作れたり、兵器を操作出来たりする『工兵』が生まれ、尊ばれた。
兵器の量産が急がれた。そのために、鋼鉄や材木などの資源が搔き集められ、職人が総動員され、夜を日に継いで、部品などが大規模に製造され、設計図を元に組み立てられ、要所に設置された。
一連のことに費やされる物資や人的エネルギーは凄まじいまでであり、しかし、ほとんど誰も、忙殺されることで、おのれの献身が果たしてどういう風に結実するのか想像することがかなわず、イライラしがちだった。
わたしの身近なところで言えば、ミアは服屋で糸紡ぎを主たる仕事としていたが、騎士・兵士に供される服の生産のために、彼女もやはり多忙であり、マルテも、戦争用の衛生用品の生産のために、似たような状況にいるようだった。
上官のブレイズは、ほとんど自身の時間を持っていなかった。彼の従卒であるわたしも、勿論、彼の状況に準じて忙しかったが、彼はわたしなどの比ではなく、わたしより高位であるのみならず、有能でもあるので、汲々として働いていた。
部屋で寝る時、彼のベッドはまだ空であり、朝起きた時には、知らない間に睡眠していたであろう彼は、終わらない仕事のためにすでにいないのだった。
こんなことはうんざりだ――そういう感覚が、インベガの人々には共有されているようだった。
武芸を磨いた騎士が、戦場で華々しく武器を振るい、互いに平等な条件で雌雄を決するという昔ながらの戦いは、苔が生えているようだった。
周到に準備の整えられた、それぞれ必要充分な戦力を保有する、わたしたちと『光』の両陣は、次の戦いで、白黒を付けることになるのではないか……そういう予想が、何となく、わたしたちに共有されているようだった。
美学のない戦いは極めて野蛮であり、わたしたちは、むなしい生死のやり取りに終始するだろう。
だが、それがこの時代の必然だとするならば、わたしたちは、自分の辿る運命を、それがどれだけ過酷なものであろうと、甘んじて受け入れるしかないのではなかろうか。
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