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マルティンが栄誉ある戦死によってこの世を去ってからというもの、ブルーノの家には沈鬱な雰囲気がすっかり下りて消えなかった。
家はマルティンが大黒柱となってもっていた。その大黒柱が斃れたということは、残された家族が緩やかな衰滅への道へと進みだしたということであった。
ティーネは中々気丈に振舞えなかった。やもめというのがどうも居心地が悪かった。そばに男がいるべきだと思った。いてくれないと困ると思った。
彼女には、生来そういう
そういうことから言えば、マルティンは本当は彼女には適していなかった。なぜなら、彼はしょっちゅう家を留守にし、妻に気苦労をかけた。そんな中でティーネがいちずを保てたのは、マルティンのじぶんへの確かな愛情と誠意を信じ、また確信していたからであり、その情愛に対するむくいたいという気持ちがあったからである。
マルティンを襲った死というものは、マルティンに及ぶだけではなく、彼を超えて、ティーネにも、またブルーノにも、及んだ。家は死霊に憑かれ、生あるものの生気をじわじわと奪っていった。
ティーネは心を病んでノイローゼになり、わけもなく泣くようになった。食事はまともに取らず、胃袋が求める最低限しか口にしなかった。
彼女は娼婦になり、村から街へと移り、大きい家を小さい家に引っ越した。息子はもうただの道連れでしかなかった。学校に行くかもという貴人への道は閉ざされ、逆に下降への道が開いた。
しかしティーネのブルーノへの愛情は消えておらず、常に疲れていたが、ぼんやりと濁ったその眼で息子を見るともなしに見ると、おもむろに近付き、抱き寄せ、頭を撫でてやるのだった。
その時の母の感触といえば、もう肉の感触が薄く、かちかちの骨と皮ばかりで、抱擁されるブルーノは子供ながらに、新たな死の近付いてきていることをほのかに予感したのだった。
ブルーノは、もうずっと
ブルーノは、無気力だったし、無力でもあった。何かにすがりたいという望みを持つことさえなく、死霊の持つ死に至る毒に、母と一緒に蝕まれていった。