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少し休みたいという令嬢の意を受け、ぼくは彼女を残し、そばを離れた。
とはいえ、エスコートすべき相手を一人にして放置するわけには行かないのだったが、絶妙なタイミングで、ハラハラした様子のコンラートさんがぼくらを見つけ、合流した。
「お嬢様は……」
執事はぜえぜえと肩で息をしてそう話し出す。きっと大急ぎで馬車を預け、町を奔走し、探し回ったのだろう。よく見つけたものだと思う。あるいはひとに令嬢の特徴を教え、目にしたかどうか聞いて回ったのかも知れない。いずれにせよ、主人の娘に忠実ということで、模範的な姿をコンラートさんは示してくれたのだった。
「お嬢様は……だいじょうぶなのですか?」
「だいじょうぶよ、コンラート。多分ね」
令嬢みずからが答える。
彼女は、上り坂の上にある見晴らしのいい広場のベンチに座って、悩ましいとでもいう風に頭を抱えているのだった。
「ちょっと熱っぽいだけ。心配してくれてありがとう」
執事は安堵した様子を見せる。
「あんまりわたしに近付かないでね。ひょっとしたらわたし、ヘンな病気に罹っちゃったかも知れないから。移しちゃって広がったら大変でしょ」
「そんなこと、わたしくめは気にしません」
「わたしが気にするのよ、コンラート」
令嬢は顔を俯けてため息し、こう続ける。
「もしわたしが死んだら……」
その不吉な発言に、ぼくとコンラートさんは揃ってドキリとする。
令嬢はしばらく唸り、考え込む様子だったが、「ダメね」、と苦笑をこぼした。
「死んだ後のことなんて考えられない。お父様もお母様も、コンラート、あなたもきっと悲しむでしょうね。それはわたしの存在意義を知るようで、とても悦ばしいと感じるけど、残していく家族に対して、不憫に感じさせもすることだわ」
神妙な面持ちで、ぼくもコンラートさんもその言葉に耳を傾けた。
だが、ぼくは内心、少し苛立っていた。焦りからだった。
「ごめんね、フリッツ」、と令嬢がぼくの方を向いて言う。「行きたいところがあるんでしょう?」
令嬢の手前、ぼくは自分の苛立ちを決して見せるつもりはなかった。しかし、実際どうだったかは分からない。あるいは眉間にしわを寄せるなり、落ち着きなく足を鳴らすなりして、思いがけず焦りの感情を表出させてしまっていたかも知れない。
「すいません」、とぼくは、謝ることに対して謝ることで応えた。
「ちょっとギルドへ。聞きたいことがあるんです」
「いってらっしゃい。わたしはだいじょうぶ。コンラートといっしょだから」
ぼくは一礼し、広場を後にし、ギルドへと向かった。時間が無限にあるわけではないので、自然と足取りはせかせかしたものになった。
道の上り下りの忙しい街を行きながら、ブルーノはどうしているだろう、と想像した。
ひょっとすると、彼を頼りたいという気持ちがあったから、そうさせたのかも知れない。
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