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ぼくらは、荒れ野となった村を歩き回り、村がことごとく
商店や工場が並ぶ村の中心は、ひととものが密に集まっていたことから、最も損害が大きかった。
見覚えのあるものがぼくの注意を引いた。
物干し竿が何本も倒れている。衣服がかかったまま倒れていて、その衣服も、焼けていたり、破けていたりし、ひどい有様だった。
こうまで徹底的に被害を受けていることを鑑みれば、ミアの服屋だけ無事というのは到底考えられないことだった。
リーザ嬢を移送するという仕事を受け、ぼくは結局、ほとんどブルーノの付き添いより以上のことは出来なかったけど、ちょっとくらいは、主体となって動き、役に立つことが出来たという、そういう自負がある。
その証拠に、ブルーノは、ぼく個人に対して報酬を――子供だましの食べ物やおもちゃではない、正真正銘の貨幣を支給してくれた。
だが、ぼくが買ってあげよう――買って、彼女がお礼を言ってくれ、喜ぶ顔を見たいと思ったミアの店の商品は、こうして地べたに散乱して、汚損され、売り物とはいえない状態になっている。
ぼくは激しい憤りを感じた。どうしてこんなことになったのだと、問い詰めたい気分だった。
コンラートさんがポツリと呟く。
「我々の領土は、守られていたはずです。この村にはシュトラウス様を始め、その他の地主様がおられ、更により大きい街には、その規模に相応しい軍隊があり、それを指揮する政治家がおり、仮に外部からの侵略があっても、むざむざ蹂躙されてしまうようなことは……」
「きっと」、とブルーノが言う。「負けたんでしょう。圧倒されたんです。この惨状を見るに、そう考えるほかありません」
「まさか、わたしにはにわかに信じられません……だいたい、唐突過ぎます」
あれだけ豊かだった麦畑の麦は、嫌がらせのためか全面荒らされ、刈られ、無残だった。
「出し抜かれたんでしょうね。外交上の懸案がなかったから有事を想定しなかったんでしょうが、それはこっちの思いであって、向こうに侵略する気があれば、どんな友好関係も無意味です」
「しかし動機が分かりませんね」
「動機なんて単純です。領土拡張欲とでもいうようなものでしょう。きっとこの村をやったのは物質主義者なんでしょう」
ぼくはしゃがみ、麦を拾って見つめる。日が当たれば黄金色に輝いていた広大な一面の麦の連続は、もう失われ、後に残ったのは、不愉快極まりない誰かの悪意の跡だった。
シュトラウスさんも、遺体が見当たらないから死亡したとは断言出来ないけど、畑といっしょに邸宅も被害を受けたので、無事ではないことは確かだ。
遺体の数と、実際の村民の数とが合わないことが不可解だった。生存者は皆、どこに行ったのだろう? どこにいるのだろう?
秋風が埃っぽい上に血なまぐさく、ぼくはますます気分が落ち込んでいった。
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