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足がなくなったのは痛手だった。
コンラートさんとその馬と馬車のことだ。
彼は慇懃に別れを告げて湖を去っていった。
ぼくとブルーノは二人きりになって、また旅路の続きにでも行く感じだった。
だが、人里を訪れる予定などなく、ぼくらは人探しに向かうのだった。
今日はどうしよう、という話は、なかった。コンラートさんの別離に対しても、ブルーノは小さな不快感を控えめに表出するだけで、それ以上はなく、その決断に、消極的であれ、最後には同意し、その後ろ姿を見送った。
ぼくらはそれぞれ座りながら、何となく見下ろしているゆうべの焚火の跡同然に燃え尽きた感じだった。勢いも、熱も、光明も欠いていた。
そのしまりのない雰囲気が引き寄せるのか、ぼくらが食べたパンの屑を求めて、卑しい野鳥が数種、キャンプに飛来して集まり、ぼくは、その鳥たちの、ぼくたちの心中を占める問題をまったく知らずにただ食欲に従って地面を無我夢中で突いている様にひどく不愉快になった。
「さて」
ブルーノが呟くように言って、大儀そうに立ち上がる。
鳥たちが、やや警戒したようにピリピリした足取りで離れる。
「そろそろ動くか。いつまでもこうじっとしていたって、どうにもならないしな」
彼はうんと伸びをすると、手のひさしで朝日を防ぎつつ山々を眺めて、続けた。
「展望は確かにないが、だからといって動かなければ、おれたちはずっと闇の中だ。まぁ、手探りでやっていくだけだ」
ぼくも遅れて立ち上がり、お尻の小石や土埃を払うと、「ブルーノ」、と呼びかけた。
彼は、ひさしの手を下ろす。
「あの村にさ、敵がいたの、覚えてる?」
「あぁ、覚えてる。ギルドハウスの二階から矢を放ったやつだな」
「うん。あいつらが、きっと知ってると思うんだ。あの村で何が起こったか、村人がどこに行ったか」
「あの時は、焦っちまったからしっかり相手を観察できなかったが、それは保証されないぜ」
「どうして?」
「あいつらは、お前の言うように村を襲った勢力の一味かも知れない。だが、もう潰れた村に何の用がある? 村人を拉致したら、それでやるべきことは済んだんだから、撤収するだろう。だから、あそこに残っているのは、あるいは死肉を餌にするハイエナみたいに、ゴミ漁りにでも来た賊だった、ということがありうる」
――ブルーノの言うように、あの村に残っている連中が賊なのだという風に想像すれば、ぼくが思い込みで、村に戻り、敵を出し抜くか、実力で打ち倒すかして拘束することが出来たとしても、彼らはぼくらが望む情報を何一つ持ち合わせてはいない。彼らが持っているだろうものは、せいぜいくだらない盗品ぐらいだろう。
ぼくの内にあった、展望を開く可能性は、いわば小さな、だけど見るべき灯火であったわけだが、その灯火は、今や更に小さくなり、もう見るべきものではないように思える。
では、どこへ向かえばいいのか。
五里霧中だった。
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