でも……とぼくは思った。
何も手がかりがないにしても、何もしないわけには行かない。
ブルーノ曰く、こういうことは珍しいことではないみたいだった。
時代はいつでも侵略をその内に含んでいる。常に誰かが脅かされ、蹂躙され、搾取されている。それが無辜であってもそうだ。それは世のことわりなのだ。また、約束は守られるためにある一方で、破られるためにもある。平和条約のようなものが領地間にあったとしても、誰かの思惑で簡単に反故にされる。そして、その思惑というのは、ぼくらがしばしば持つ、怒り、恨み、妬み、蔑み、などと比べて、そう縁遠いものではないのだ。
ひょっとしたら、ブルーノは、人探しを断念するかも知れない。
シュトラウスさんから貰えることになっている報酬の額と、これから彼を始めとして村人の捜索に費やされる時間や労力を天秤にかけて、もしも、後者が重いとなれば、シュトラウスさんは路傍の石となって、ぼくらとは無関係な人物として処理される。ミアも、ギルドハウスのおやじも、なかったことにされ、コンラートさんとは完全に別れ、ぼくらが続けている旅は、新規蒔き直しという具合で、リセットされる。
彼なら、そうすることはたやすいだろう。
よきにつけあしきにつけ、ブルーノは怜悧なひとだと思う。割り切りがよく、何かに執着することがあまりないということだ。彼がやることなすことは大体の場合、飛び切りうまくいくことはないが、同時にまた、飛び切りまずくいくこともない。全ての行いの結果や成果が、及第点と落第点のちょうど中間くらいに落ち着く。
彼がそれを意識しているという風には、ぼくは思わない。だから、彼のそれは、一種の才能というべきものなのかも知れない。木工品の加工だけは専門的にやった経験があるが、それ以外のことで、彼がやることは、得意でも不得意でも、何となくするりと、賞賛も難詰も出ない程度にこなせてしまう。
どうするかなぁ。ブルーノが呟いて、後ろ頭を掻いている。
「あいつらがただの賊だったとしても」
と、ぼくは切り出した。
ブルーノは、頭を掻くのをやめた。
「あの村に手がかりがないかな。敵の痕跡とかさ」
「さぁな。それは行ってみてみないと分からない。少なくとも、昨日帰った時は、めぼしいものはなかった気がするがな」
「あの時は、村の惨状に茫然としてたから、そんんなに詳しく見られなかっただけだよ。突然攻撃されもして、動揺したし」
「まぁ戻ってみても構わないが、どうせまだおかしな連中が残ってるに違いない。お前がどこで自分の命をなげうつつもりか――そもそもそんな意志があるかどうかさえ知らんが、ともかく危地にわざわざみずから踏み込むことになる。それは分かってるんだろうな」
「もちろんさ」
ブルーノは、やや眉をひそめ、ぼくの迷いのない朗々たる即答に、意表を衝かれたようだった。
《仕事、がんばるよ》
いつの日か、彼と話した時の自分の言葉が思い返される。
あの時は、仕事への覚悟を問われて、はきはきと答えることが出来ず、ぼくは考え込んでしまったのだった。
ぼくの仕事は、必ずしも綺麗なことや楽なことばかりじゃない。時には、辛苦を伴うし、正しいという確信を持てない場合もある。あるいは人を殺すことだってある。
今のぼくは、もうためらうことはしなかった。その意味がなかった。ぐずぐず考えていても、何も始まらないことが分かるからだ。頭の中で思考をこね繰り返したところで、実際の行いがなければ、何もしていないのと同じだ。
やると決めたのなら、最後までやり切るだけだ。自分が向かおうと思った方へ足を運ぶのだ。時間は、未来へと進むのであって、過去へは戻らない。
必定に
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