さまよえるフリッツ【完結】   作:Yuki_Mar12

85 / 451
第85話

***

 

 

 

《お元気ですか――》

 

 

 

 彼女は何がいいかと悩みながら書き出してみて、何か気恥ずかしい感じがして、しっくり来ず、だけどボツにすると紙がもったいないので、諦めて続きを書くことにした。

 

 ふるさとへ送る手紙をしたためているのだった。

 

 リーザは結局散歩には出ず、机に向かうことにした。

 

 別に、今でなくとも、後で散歩しに行ったっていいのだ。朝ごはんがいつ出来上がるか分からないけど。

 

 羽ペンに墨を付ける。

 

 

 

《――わたしは元気です。ブルーノたちのお陰で、無事、城下町に到着することが出来ました。

 

 町は村とまるで違い、とても大きなところで、ガイドがいないと、きっと迷ってしまうでしょう――》

 

 

 

 リーザは、今したためているのが、父母へ宛てた、なんてことはない手紙だというのに、どこか妙に胸がドキドキしていたが、それは彼女が、まだまだ、親離れとは程遠いあどけない子供であることをほのめかしていた。

 

 

 

《――学校はもうすぐですが、それまでは休みです。

 

 その間、この町の空気を吸い、町民とおしゃべりして、当地の雰囲気に一日でも早くなじめるように、町をブラブラ探索でもして過ごしていきたいと思います。

 

 お友達が欲しいところですが、学校が始まれば、自然と出来ていくんじゃないかと思います。出会いと絆を大切にしていきたいです。

 

 今回はこれくらいにしておきます。

 

 また書きたくなったら、手紙を書きます。パパとママからも、お返事があればわたしはとても嬉しいです。

 

                                 あなた方のリーザより》

 

 

 

 リーザは、取りあえず書き上げて、読み直してみて、誤字脱字やまずい表現がないか確かめた。

 

 そして幾つか気に入らない箇所や修辞的にあやしい箇所を、辞書を参照して訂正し、別の紙に、清書した。

 

 最後に封筒に入れ、封蝋を押して完成なのだが、火がなく、今階下に行って釜戸の火を貰うか、後でおじさんに火打石で火種を作ってもらうかしないといけない。

 

 調理の邪魔になるのは気が引けたので、結局、封蝋の火種は後でおじさんに頼むことにした。

 

 うんと伸びをし、リーザはハァと大きくため息すると、だぶだぶの寝間着を垢抜けたタウンウェアに着替えた。タウンウェアといっても、長そでの下着に、膝下まである袖なしの、胸元の空いたガウンを重ねただけのものだけど。

 

 寝ぐせの付いた紙をくしでといて直し、納得が行く恰好になると、彼女は机を整理して、窓の方を向いてベッドに腰を下ろした。

 

 窓を通しては、城壁までなだらかに下っていく、木々の点在する下草の斜面が見え、城壁の向こうには、遠い山並みがぼんやりと見えた。

 

 朝ごはんはまだかな……。

 

 少しばかりの空腹を覚え、お腹に手を添えた彼女は、窓の風景を見るともなしに、じっと、ぼんやりと、眺めている。

 

 

 

***

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。