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《お元気ですか――》
彼女は何がいいかと悩みながら書き出してみて、何か気恥ずかしい感じがして、しっくり来ず、だけどボツにすると紙がもったいないので、諦めて続きを書くことにした。
ふるさとへ送る手紙をしたためているのだった。
リーザは結局散歩には出ず、机に向かうことにした。
別に、今でなくとも、後で散歩しに行ったっていいのだ。朝ごはんがいつ出来上がるか分からないけど。
羽ペンに墨を付ける。
《――わたしは元気です。ブルーノたちのお陰で、無事、城下町に到着することが出来ました。
町は村とまるで違い、とても大きなところで、ガイドがいないと、きっと迷ってしまうでしょう――》
リーザは、今したためているのが、父母へ宛てた、なんてことはない手紙だというのに、どこか妙に胸がドキドキしていたが、それは彼女が、まだまだ、親離れとは程遠いあどけない子供であることをほのめかしていた。
《――学校はもうすぐですが、それまでは休みです。
その間、この町の空気を吸い、町民とおしゃべりして、当地の雰囲気に一日でも早くなじめるように、町をブラブラ探索でもして過ごしていきたいと思います。
お友達が欲しいところですが、学校が始まれば、自然と出来ていくんじゃないかと思います。出会いと絆を大切にしていきたいです。
今回はこれくらいにしておきます。
また書きたくなったら、手紙を書きます。パパとママからも、お返事があればわたしはとても嬉しいです。
あなた方のリーザより》
リーザは、取りあえず書き上げて、読み直してみて、誤字脱字やまずい表現がないか確かめた。
そして幾つか気に入らない箇所や修辞的にあやしい箇所を、辞書を参照して訂正し、別の紙に、清書した。
最後に封筒に入れ、封蝋を押して完成なのだが、火がなく、今階下に行って釜戸の火を貰うか、後でおじさんに火打石で火種を作ってもらうかしないといけない。
調理の邪魔になるのは気が引けたので、結局、封蝋の火種は後でおじさんに頼むことにした。
うんと伸びをし、リーザはハァと大きくため息すると、だぶだぶの寝間着を垢抜けたタウンウェアに着替えた。タウンウェアといっても、長そでの下着に、膝下まである袖なしの、胸元の空いたガウンを重ねただけのものだけど。
寝ぐせの付いた紙をくしでといて直し、納得が行く恰好になると、彼女は机を整理して、窓の方を向いてベッドに腰を下ろした。
窓を通しては、城壁までなだらかに下っていく、木々の点在する下草の斜面が見え、城壁の向こうには、遠い山並みがぼんやりと見えた。
朝ごはんはまだかな……。
少しばかりの空腹を覚え、お腹に手を添えた彼女は、窓の風景を見るともなしに、じっと、ぼんやりと、眺めている。
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