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リーザが城下町へ来てから、数日が経った。
先日書いた手紙は、あの後きちんと叔父の手を借りて封蝋を押し、
雨がしとしと降っていた。空気はほんのりと湿り気を帯び、気温はまずまず低く、どこかしめやかな風情のある日和だった。
学校の始まる日はもうすぐだったが、まだ休みで、また雨ということで、リーザは屋根裏部屋で、学校でやることになる科目の予習をしていた。
叔父夫婦は熱心なものだと感心を示したが、リーザにしてみれば、日々の個人的な勉学は、幼い頃からの親の教育による慣習でしかなく、もちろん遊びなどの娯楽とは程遠いが、かといって負担というわけでもなく、彼女自身、物事の道理が分かる悦びのようなものを覚えてからは、余暇の一部を本読みや植物の観察に充てるなどするようになった。
リーザは肘を机上に突き、頬を手で支え、大きくあくびした。
勉学の楽しみに、苦痛が勝ちだしたようだった。
彼女は雨で白っぽく濁った外の景色を見た。晴れた日には彼方の連山まで見晴るかすことの出来る窓の景色は、今は城壁まで狭くなっており、見えていた連山の稜線には、雨雲がすっかり覆われてしまっている。
つい、「ハァ」、とため息が漏れてしまうのも無理はなかった。
彼女はしばらくその姿勢で窓の景色を眺め、やがてうつらうつら舟を漕ぎ出して、ビクッと眠りかけた意識から勢いよく跳ね返るように我に返ると、外に行こうと思った。
雨が降っているので、
行ってきます――
フードを被り外に出ると、細かい雨粒が風に乗ってリーザに降り注いだ。
ぐっしょり濡れるような雨脚ではなく、散歩しても害はあまりなさそうだった。
散歩といえど、彼女には行く当てがあり、それは、彼女が通うことになっている学校だった。
一度、叔父のエスコートで行ったことがあるが、一人で、改めて行ってみようと思ったのだった。今度は違う仕方で見えるかも知れない。
郊外の斜面を、上の栄えた町中へと向かって上る。
周りには、この雨の中、畑で農作業をしている百姓や、物思う風にゆっくり歩く騎士や、駆けまわる彼女より年下の子供たちが目に入った。
リーザはそんな周囲の模様を、特に関心を持つこともなく、一瞥するだけだった。
斜面を進み、息が上がり、体温が高まってきた頃、彼女は建物が込み合う城のある中心へと来、記憶の導きに従って、道を行き、角を曲がり、坂道を上ったり下ったりした。
そして、とうとう学校に辿り着いた。彼女にとっては二度目の来訪となる。
リーザはポンチョの帽子を脱いで、その威厳ある外観をいささかの緊張感をもって眺めた。
学校というものは、聖職者や貴族の子弟が通うものであり、その管理運営は、母体である宗教団体が行っている。
晴れの日に訪れて見た修道院を兼ねた学校の屋根は、赤くくすんでおり、雨が降って薄暗い今日は、その色が、黒に近くなっている。
間に踊り場のある階段をまっすぐ昇れば、いかめしい塔が二棟並んだアーチの出入口が待っており、そこを潜れば、天井が高く、また幅も広い通路へと出、片方を見れば職員室や校長室などの大人が使う部屋がまずあり、もう片方には、刈り込まれた生垣が芸術的に見事な中庭がある。生徒児童の教室は、この中庭を囲んであるのだった。
前回は叔父を随伴し、許可をもらって見学させてもらったが、今回はひとりということで遠慮した。
この修道院学校の威容を見ていると、リーザは、自分が何だか選ばれたにんげんであるという気がしてきて、とても誇らしいと思うと同時に、自分には高貴過ぎるという風に思って、気後れしてしまうのだった。
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