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フリッツたちが訪れたゲールフェルト村は、ミアが住み、リーザも住み、開けた広々としたところにある村で、社会集団として見れば規模は大したものではなく、むしろ小さい村だったが、農業や手工業などで経済力を付け、決して貧しい村ではなかった。
シュトラウス氏は村の富豪であり、村の自治に大きい影響力を持っていた。農業を始めとして複数のビジネスを手掛け、村民の中で希望する者があれば雇い入れ、先祖代々大事に保有されてきた麦畑の労働者として任命し、耕作のノウハウを教えた。彼は尊大ではあったが、傲慢ではなく、人の上に立つ者に最低限必要とされる以上の知識、教養、礼儀作法は身に付けていた。だから、敬意を持たれはしても、敵意や憎悪を向けられることはなかった。
執事であるコンラートはよく彼を慕っていた。
馬車を平原に走らせて、コンラートは深刻に、主人の身を案じていた。
――だが、まずは愛娘であられるリーザ様に、このことをお知らせせねば……
殺されなかった村の人々が、例えば身代金のために人質にされたとすれば、それはあるいは理に適ったことなのかも知れない、とコンラートは思った。村は小さいけれど、蓄えている物資、財貨は相当ある。少なくとも、シュトラウス家の金庫の中には、息を呑むほどの財産が保管されている。現金ではなく、貴金属が入っている。
だから、村を攻撃した首謀者は頭がいいに違いない。ゲールフェルト村が内実栄えているのだから、中央に納める税額、及び物品の納品量もそれに比例して多い。従って、連れ去った村人をだしに
しかし、リターンがある一方では、リスクもあるというものだ。今が乱世とはいえ、暴挙がまかりとおっていいとはならない。秩序があるということは、それを守る者がいる。そして彼らは、秩序を打ち壊そうとする者を許さない。
いずれにせよ、敵は金策のために村を襲ったのだろう。コンラートはそう考えた。
日が暮れようとしている。馬も速力を落とし、これ以上長距離を行くのは酷というものだ。
コンラートは、馬の速度を緩め、近傍にある大木の陰に寄った。
すでに何度か小休止をしているが、馬を止まらせるたびに、自分が今、無防備な状態で旅路にいるのだと悟り、誰かに襲われないかと恐れ、びくびくしてしまうのだった。
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