撃墜の乙女〜TSした男は、パラレルワールドで生活する〜   作:布団から出られない

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3 戦う意味

目を覚ました時には、目の前に知らない男女がいた。多分、さっきの戦闘の時に俺を助けてくれた2人なんだろう。ていうか、もしかして2人とも俺の寝顔見てたってこと? 恥ずかしい。いや、元の自分の顔ではないから、多少は恥ずかしさも和らぐ………いや、そんなことないな。普通に恥ずかしい。

 

 

 

 

「よかった。目覚めたんだね、渚ちゃん」

 

 

 

 

 

「単騎で突っ込むのはもうやめとけ」

 

 

 

 

 

 

普通に渚呼びされてるわけだけど、もしかしてこれ、俺が今使わせてもらってるこの少女の名前も渚だったりする? まあ、そんなことはどうでもいい。多分2人とも俺の仲間、いや、厳密には、俺が今使わせてもらってる体の本来の持ち主である渚って子の仲間だろう。で、仮に2人に助けられなければ、俺はあのピンク色の機体に乗ったオカマ野郎にやられていた。もう一度奴らと戦うことを考えると、仲間は欲しい。それに、馬鹿正直に俺の状況を話した場合、俺の身の安全が保障されるとは限らない。だとすれば、今ここで俺がするべきことは、元の体の持ち主である少女のふりをすることだ。まずは少女の性格から探っていくとしよう。まず、助けられた時、男の方が俺のことを『バカ渚』と呼んでいた気がする。つまり、この体の元の持ち主はおそらく『アホの子』。それに、今さっき男が言った、『単騎で突っ込むのはもうやめろ』という発言。ここから読み取るに、俺が想定する少女の性格は。

 

 

 

 

 

 

「あははー! やらかしちゃった。でもさ、いけると思っちゃったんだよね〜。なんか、こう、ドカーンって感じで? できたらいいかなぁって。そしたら、ズドーンって、なんか図太いビーム? みたいなの撃たれちゃってさぁ〜」

 

 

 

 

 

 

大体こんな感じじゃね? アホで明るい。これが俺の考える、少女の性格だ。オノマトペを使うことで、いい感じにアホっぽさが出ていると思う。口調も明るめで、声のボリュームも少し大きめに。うん。我ながら迫真の演技である。ワンチャン役者なれるんじゃね? オーディション受けてみようかな。

 

 

 

 

 

 

 

「渚ちゃん、大丈夫? 無理してない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、俺の演技は2人にはイマイチ受けなかったようだ。女の子の方は俺のおでこに手を当てて、熱でもあるんじゃないかとあらぬ疑いをかけてきている。何なら体温計片手に持ってまでいる。でこで測る必要ある? それに、男の方は、俺のことを訝しんだ目で見てきている。

はい、失敗ですね。少女の性格は、アホで明るい女の子ではなかったらしい。多分演技は完璧だったはず。さて、どうしようか。

 

 

 

 

 

 

 

「頭くらくらしゅる〜。熱あるかも〜」

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず熱あるふりしとけ。うん。何とかなるだろ。少なくとも女の子の方は騙せる。男の方も色仕掛けでも何でもして適当に言いくるめればオーケーだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「下手な演技はやめろよ」

 

 

 

 

 

 

 

と、思っていたんだけど……。俺の作戦は、どうやら失敗に終わったらしい。俺が熱を出したふりをし始めた、その数秒後には、俺の胸ぐらを、男が掴んでいた。

突然の男の行動に、俺は思わず『きゃっ』なんて女の子らしい悲鳴をあげてしまっていた。だってびっくりしたんだもん。仕方なくないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、誰だ? 渚じゃないだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………俺は渚だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

男は無礼にも、俺の胸ぐらを掴んだまま、怖い目で俺に誰だ、と、そう問いかけてくる。いや、お前が誰だよ。人に名を尋ねるときはまず自分からって先生に習わなかったのか? とまあ、そんなことはさておき。正直これ以上の演技の継続は不可能だと判断したため、俺は素の自分に戻り、男の質問に答える。男が胸ぐらを掴んだことで、後ろにいる女の子があたふたとしているが、まあ、そのまま何もしないでいてくれると助かる。俺が一度に対処できる人数は、1人だけなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「嘘をつくな。渚は簡単に人に弱みを見せたりしない。熱があっても、それを俺達には悟らせようとしてくれない。そんなやつだ」

 

 

 

 

 

 

 

言いたいことはわかる。確かに俺は、この男の言う渚ではないのだろう。けどね、俺、名前渚なんよ。この体の元の持ち主の子と名前、一緒なんよ。嘘ついてないんよ。

 

 

 

 

 

 

 

「あーわかってる。わかってる。俺は渚じゃない。けど、俺は渚なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

「んーとな、俺は確かにお前の知ってる渚とは別人だ。けどな、俺もまた渚なんだよ。そう、一緒なんだよ、名前が」

 

 

 

 

 

 

 

「何を言ってる……」

 

 

 

 

 

 

 

「んー、なんて言ったらいいんだろ。あー多分俺、渚って子の体乗っ取ってるんだと思……ってうわっ!」

 

 

 

 

 

 

 

男は急に俺の胸ぐらを掴んでいる力を強くし、目もより一層ギラギラとした、敵意をむき出しにしたようなものとなっている。乗っ取ったって部分で突っかかってきてるんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「おい、一旦落ち着け。確かに乗っ取ったって言ってるけど、俺だって乗っ取りたくて乗っ取ってるわけじゃなくてだな……」

 

 

 

 

 

 

「今すぐ渚の体から出ていけ!」

 

 

 

 

 

 

 

あ、駄目だ。こいつ話が通じない。多分、冷静に話し合うのは無理そうだ。だったら………。

 

 

 

 

 

 

 

「後ろの子、俺の言ってること分かる?」

 

 

 

 

 

 

 

「渚ちゃん……じゃ、ない……?」

 

 

 

 

 

 

 

「理解はやくて助かる」

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず、女の子の方に話しかけるようにしよう。多分男の方は冷静に話すのは無理そう。多分こいつ渚(俺じゃない方)に惚れてるな。

 

 

 

 

 

 

 

「俺は渚だけど渚じゃない。多分、この体そのものはお前らの知ってる渚なんだと思う。けど、中身が違うんだ」

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、元の渚ちゃんは……」

 

 

 

 

 

 

 

そこなんだよな。俺自身、元の体の持ち主である渚がどうなってるのか、正直分からない。いや、たまに体が無意識で動くことはある。それが元の渚の意志なのか、それともこの体に残っている癖のようなものがそうさせているのか。それが分からないことには、ちょっとなぁ……。

でも、これは俺の勘でしかないが、渚はまだ生きてるんじゃないかって思う。俺の体の中で、今はまだ意識が眠ってるだけで、存在自体はしてるんじゃないかって。

 

 

 

 

 

 

「この体の中に、いるよ。きっと」

 

 

 

 

 

だから、俺は少し嘘をつく。いや、嘘ではないのかもしれない。けど、もし違ったら、俺のこれは2人を騙す嘘になってしまう。

だから、もし渚が生きていないのだとしたら、その時は謝ろう。多分、その場合、渚のことを殺したのは、きっと()だろうから。

 

 

 

 

 

「どうすれば渚は戻ってくる?」

 

 

 

 

 

「んなこと言われたって……」

 

 

 

 

 

「はやく答えろ」

 

 

 

 

 

 

えぇ……そんなん俺も知らないんだが。こいつ相当渚に惚れ込んでんな。こういうタイプは答えが出るまでいつまでも問い詰めてくるんだろうな。完全に俺のこと怪しんでるし。なら仕方ない。

 

 

 

 

 

 

「多分今話してるこの俺がいなくなれば、渚は戻ってくるんじゃないか」

 

 

 

 

 

 

「じゃあ今すぐお前が渚の体から出ていけ」

 

 

 

 

 

 

まじで短気だなこいつ。人の話聞けっつうの。

 

 

 

 

 

「もうちょっと順序踏んで話さないか? そもそも俺だって出ていけるなら出て行きたいけど……無理なもんは仕方ないだろ」

 

 

 

 

 

と、そんな時、ドタバタと2人の後方から慌てたような足音が聞こえてくる。2人の他にもいたのか。俺(厳密にはこの体の持ち主である渚)を助けにきた時は2機しかなかったから、てっきり他に仲間はいないもんだと思ってた。起きてから今まで静かだったからというのもあるけど。

 

 

 

 

 

 

「大変っす! 奴らがやってきました! すぐに準備を!」

 

 

 

 

 

 

後ろからやってきたのは、眼鏡をかけ、髪をバードテールにした茶髪の女の子だ。今のとこ全員10代くらい? 平均年齢低くないか?

ふむ、敵襲とな? どうやら俺がこの前戦った奴らと敵対しているようだけど、向こうは明らか軍隊やら何やら、正式な部隊って感じだったけど、こっちの戦力はどう見ても寄せ集めにしか見えない。

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、お前の話は後だ。鈴、行くぞ」

 

 

 

 

 

 

「うわぁっ! ちょっと待ってよ悠貴君!」

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、とりあえず戦闘パートと行きますか。あいつらを退けないことには、今後の俺の振る舞い方も決めれないしな。そう思って俺は、悠貴と鈴、だっけか? その2人についていく……。

 

 

 

 

 

 

 

「……何でお前がついてくる?」

 

 

 

 

 

 

「え? 俺も戦うんじゃないの?」

 

 

 

 

 

 

「得体の知れないお前に背中を預けられるか!! おい美月! こいつ見張っとけ! 少しでも変な行動したら、わかってるな?」

 

 

 

 

 

何だよ。せっかく協力してやろうってのに。ふん、いいもんね〜。俺がいなくてもやれるんだろ? ピンクの機体とかまじでやべーからな? 俺がいなくて苦戦なんてことになっても知らないからな!

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと悠貴さん!? 無茶ですよ! 渚さんなしであいつらとなんて! って、どうしちゃったんですか………。渚さん? もしかして悠貴さんと喧嘩でもしましたか?」

 

 

 

 

 

「あ、うーん。そんなとこ」

 

 

 

 

 

そういやこの子は事情知らないんだったな。どう説明するかなー。てか、本当に悠貴って奴単体じゃやばいっぽいなこれ。うーむ。加勢するべきか、どうか…。いや、実際さ、こいつらいなくなったら俺、どうすればいいのかわかんないんだよな。そもそも、何でここにいるのかもわからないし、夢って思いたいけど、感覚が現実だって告げてる。一番安牌なのは、この体にいた元の渚を知ってるこいつらと関わりながら、元の世界に帰る方法を探すこと、何だけど……。

 

 

 

 

 

 

「別にいいや」

 

 

 

 

 

 

元の世界に帰って、どうするかって言われても、正直わからん。元の世界でやりたいことがあったわけでもないし、この世界が心底嫌だっていう風に感じたわけでもない。人を殺して多少嫌悪感は感じたけれど、それくらいだ。この体がそうさせているのか、それとも単純に俺が薄情な屑だっただけなのか、あるいはその両方か、それはわからないが。

だから、俺からすると、こいつらを助けようが見捨てようが、結局こいつらに助けられる前の1人行動に戻るだけだし、さっき助けられた恩はあるけど、それは今まで行動を共にしてきた元の渚のためのものであって………。

 

 

でも、何でだろう。俺の体は、早く助けに行けって、そう言っているような気がする。いや、多分きっと、これが元の体の……渚の意思なんだろう。

ああ、まあ、そうだよな。どうせ、何やっても俺の勝手だ。元の渚の意思とかどうでもいい。だから、助けに行こうが、見捨てようが、俺には関係ない。

 

 

 

 

 

 

「渚さん! お願いします! 悠貴さん達の加勢に行ってください! このままじゃ、2人が…!!」

 

 

 

 

 

 

ああうるさいな。わかってるっての。ああそうだよ。ここでこの子のこと無視しても、元の体の主である渚の意思を無視しても、俺には関係ない。だからさ。

 

 

 

 

 

「『F-A-MD1106』はどこ?」

 

 

 

 

 

 

「渚さん…!」

 

 

 

 

 

あ、名前、ちゃんと覚えてら。今までFなんとかって言ってたのに。ま、いいや。とにかく……。

 

 

 

 

 

「助けに行くんじゃない。でも、連中にやられっぱなしなのはなんか腹立つ。だからぶっ潰す」

 

 

 

 

 

 

ただ、それだけだ。悠貴達が危ないだとか、少女の方の渚が言ってるからだとか、そんなことはどうでもいい。だって、俺には関係ないんだから。

だから、俺はただ、俺のためだけに戦う。ただその過程で、ムカつくやつをぶっ飛ばす過程で、誰かを助けたりすることがあるかも知れないってだけだ。

 

 

 

 

 

「待ってろよオカマピンク野郎!」

 

 

 

 

「オカマピンク野郎…?」

 

 

 

 

 

さぁて、復讐(仕返し)と行きますか!!

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