前回の続きです。
それではどうぞ。
五万円少女、もとい東継実がやって来て二日が経って、彼女について少し分かった事がある。
まず一つ目、
「........」
「あ、オッス継実」
「........」
それは基本無口である事だ。決してリアクションが無いわけじゃない。何かを言えば頷いたり、首を横に振ったりしてこちらに対して反応を示す。けれど、声を出して何かの言葉を発する機会はあまり多くない。
しかし、飯を食べる時は『いただきます』『ごちそうさま』とちゃんと言ってるので、どうやら、何かの信念や障害があって言葉を言えないというよりは、普通に言葉を言うのが面倒のか言葉を発していないような感じらしい。精神的な障害を抱えている訳ではないのでよしとしよう。
二つ目、
「..........」
「ん?もう読み終わったの?はい、これ次の巻」
「................」
「どうした?渡した本を見つめて、もしかして飽きた?え、ちょっと何してるの?何で全巻持って行こうとしてるの?その漫画結構あるから重い........って軽々と持ち上げてる!?」
継実は本好き、というよりインドア派の人間だった。S県はこれと言った有名な店やらがない田舎なので、学生は外出しなければ、特に何もすることが無くて暇だろうと漫画本を貸してあげると、一巻を僅か十分ぐらいのペースで読破。俺でも早くて三十分で読み上げるのに早すぎる。本当に内容をちゃんと覚えているのかと尋ねてみると、その内容通りの出来事やらセリフまで答えやがった。しかも何も見ずにそのページの絵を模写して見せたりするからあらゆる絵のセオリーを無視して、コピー印刷機みたいな動きで漫画の絵を再現しやがる。おまけに庭にある小さいバスケゴールでスリーポイントシュートの練習してたら継実の奴一発で決めやがった。
どうやら継実は勉強も運動も出来るようだ。おまけにスタイルも良い。最強すぎるだろこの子。
そして三つ目、
「東さん、お話しがございます。俺のベッドの下に隠してあったエロ本なのですが今朝、見てみると無くなっていました。心当たりはありませんか?」
「................」
「黙秘は肯定と捉えますよ?」
「................知らない」プイッ
「そっぽ向いてる時点でアウトだよ。仮に貴方の寝室から俺のエロ本が出て来た場合、貴女は思春期を拗らせてひっそりと同居人のエロ本を盗んだえっちな女のごはぁ!?」
「えっち」
彼女はエロ関係にとても厳しい。下ネタもダメである。
ちょっと待って?百歩譲ってエロ本はダメなのは分かるよ?何で下ネタもダメなのさ。そんな純粋な子なの?いや純粋なのは良いけど度が過ぎたらまずいからね?将来子供作ろう!となったら誰もが通る道だよ?もしかして赤ちゃんはコウノトリが運んでくると思ってるのかな?
そのため、いつの間にか俺が隠していたエロ本を探り当てて何処かにこっそりと隠し直しているのだ。これに関して問いただした際、可愛く睨みつけて『むぅ』みたいな声を上げるので、実行犯が彼女であることは分かり切っている。
俺も思春期の高校生、性欲だって溜まるものだ。何とかして発散させたいが、母上に相談したら『運送会社でもバイトしたら?』と言われて肉体労働先へと叩き込まれてしまうに違いない。いくら就職希望者と言って肉体労働は大っ嫌である。
「継実、買い物行くぞ」
「........」コクッ
今日は継実の服を買い物に行く日なので、一緒に出かける準備をする。っと、その前に........。
「つー訳で助けて?」
「死ね」
「えぇー?」
「折角の休日に押しかけてくる輩は疾く死ね」
「相変わらず厳しい口だなぁ。あ、どうもご無沙汰しております。良かったこれ、文明堂のカステラです。つまらない物ですがどうぞ。ああ、はい。一緒に買い物にでも行こうかと。大丈夫です、途中で倒れても背負えますので、俺が。ははは!伊達に鍛えてないですよぉ!自分運動部でしたから!」
「人の親を懐柔するな、蓮美」
「社交辞令って知ってるかい結の姉貴」
俺の住むK市は何もない。
約七割が住宅街で残りの三割は飲食店、つまり娯楽が殆どないのだ。
俺の家の近くも、学校、公園、郵便局、コンビニしかないのでマジで退屈なのだ。公園で遊べだと?ふざけんな、小さい公園なんだぞ?あと最近自販機の値段が高くなったせいで水が買えん。つまり死を意味する。
まぁ、現在進行形でお尋ねしている友人の家にはスーパーがあるので、最悪其処のクーラーに当たりながら買い物もありだが、今回は食物を買う訳ではないのでノーカウント。
「何で今日に限って私に言うんだよ。
「肝心の本人は病院じゃん、それにお前絶対断るじゃん」
「うら若き乙女の自宅に、男子高校生などを呼ぶものか」
「彼氏を取っ替え引っ替えしてる癖に寝言が言えるとはな」
「マジで帰れ」
「協力してくれたら焼肉奢ってやる(奢るとは言ってない)」
「................」
いつ染めたのか分からん髪を一度掻き毟ると、溜め息と共に我が友人は彼女の部屋へと戻ると、承諾したと思った俺は部屋へ向かう。
彼女は小学五年生の頃に転入してきて、何だかんだ言って仲良くなった。今は別々の高校に通ってるが、いつの間にか彼氏が出来た。しかし、いつの間にか別れては別の彼氏と付き合っては別れては、また付き合ってはまた別れる、意味不明な事をしてるが、それでも友人だと思ってる。まぁ当の本人は友人とは思われてないのだけど。
「相変わらずジャニーズは好きなんだ」
「Hey!Say!JUMPしか興味ないだけだし」
「の割には部屋中ポスターやらアイドルの顔写真全員分貼ってあるな。つーか掃除したら?俺の部屋より埃臭いぞ?」
「耳鼻科でも行ってこい。ゴミなんてこの部屋に一つもないっての。ちゃんと週に一度は自分で掃除しているし」
「ふっ、俺からしたら汚ねーけどな」
「出て行け」
「まぁまぁそう言うなよ、マジで困ってんだから」
姉貴は自室の床に座り込むと、行儀悪く足を組み、此方に視線を向ける。姉貴が視線を向けたのは俺では無く、俺の後ろに隠れている継実であった。
「私に用事ってのは、お前の後ろに隠れている子?ってか誰?」
「俺の遠い親戚の東 継実。夏休みが終わるまで俺の家で泊まってるんだよ」
「それ大丈夫なの?いくら遠い親戚だからって高校生と一緒に暮らすとか」
「お前も彼氏の家行ったり迎えたりしただろ」
「おいそれ誰から聞いた」
「一樹」
「よしあいつ殺す」
ごめん一樹、お前の墓は俺が建ててやる。そう心の中で謝罪する。
「つーかさ、なんでそんな平然と同居してんの?馬鹿なの?鈍感過ぎない?」
「何らかの事情があるんでしょ?理由があったとしても今は俺の隣に居る訳だし。実害はあるけど、追い払うほどじゃあないよ」
「実害あるんじゃん」
「うん、今日はそのことに関して姉貴に助けて貰いに来たんだよ」
「お前確か妹いただろ?」
「あいつ部活」
「........はぁ」
めんどくさいなぁ、とぼやきながら溜め息吐く姉貴。
「で、何?」
「今から継実の服を買いに行くから付き合ってくれ」
「なるほど、だが断る」
「マジで頼む!!一樹が居ない以上お前しか頼めないんだよ!!」
「ふざけんな、別に今日じゃ無くても良いじゃんか」
「服が無いんだよ!継実の持ってる服が一着も無いんだよ!今来てる奴しかないんだよ!よく見てみろ、長袖だぞ!?こんなクッソ暑い時期に長袖は自殺行為だと思わんのか!」
「ファッションの一種でしょ」
「言っとくけど夜は寝巻きないから下着姿だよ。妹の奴だとスタイル的にレッドカード、しかも妹とお前より胸大きいから尚更」
「即行に行って即行で帰るぞ」
いえーいやったー、一緒に着いていく事になったー。そんな事を一人で馬鹿みたいにはしゃぐと姉貴は小さいバックを開いては財布やら携帯などを入れる。
「んじゃ、歩いて300mぐらいあるファッションセンターしまむらでも行きますか」
「はぁ?馬鹿か、しまむらだけな訳ないでしょ?」
「え?んじゃ何処行くの?」
「ララガかイオンかヨーカドー」
「イオンはダメじゃん、俺と継実チャリないぞ」
「んじゃララガかヨーカドーで決定、最悪ママに頼んで車出して貰うから大丈夫でしょ」
「で、何を買うの?」
「重要なやつだよ、まぁ色々買うんだよ」
「色々って?」
「女子から言わせんな馬鹿」
なんか怒られた...女の子ってほんと分からん。
雛森 結(ひなもり ゆい)
17歳 女
優華の友人、彼氏持ち。
何故姉貴呼びするのかは後ほど。
一樹(かずき)
紹介は後ほど。