俺の住むK市は本当に何もない。よって、買い物は大抵、近所のデパートとなる。
食品関係ならば、スーパーという選択肢もあるが、欲しい物を一片に買うにはデパートになる。中途半端に色々揃っている為、特定のブランドやマイナーな作品を求めなければデパートで大抵の買い物は済ませられる。しかし、買い物は専門の店で済ませたいのだけれども、田舎の街の中でも専門の店がある町はそれほど多い訳じゃない。デパートとなればチャリで漕げばK駅の目の前にあるララガーデン、イトーヨカドー、少し頑張ればイオンになるのだが、現在姉貴のチャリは故障、俺と継実も歩きで来たので、イオンは断念。よって、電車でGOしてララガーデンで買い物する事になった。
「んじゃ、俺は適当にぶらぶらしているから、終わったら連絡してくれ」
「おい待て、何言ってんだテメェ。テメェが頼んだんだから一緒に来いよ。つーか、私を二人きりにするんじゃねぇ!ほぼ初対面の相手と何を喋っていいのか分かんねぇんだよ!」
「大丈夫大丈夫、継実は初対面でもそうじゃなくでも基本的に無口だから。というかさ、生理用品を買いに来た女子と一緒に居る男子って絵面的にヤバくね?男をランジェリーショップに連れてくるようなもんだよ?」
「きついに決まっているだろ?それくらいの恥は甘んじて受け入れろ。私に対するセクハラの罰だ」
「俺は別にいいけどさ?二人が生理に関して、あれこれ言っている横で聞こえなかった振りすることになるんだけどそれでもいいの?」
「わ、私は一向に構わん!」
「何で知ってんだよそのセリフ」
「一樹が言ってた!」
「言ってねぇよあいつ基本ライダーネタ(激寒ギャグ)しか言わねぇよ」
「........買い物」
「お、珍しく喋った。ほら姉貴、覚悟決めろ」
それから俺達はララガーデンに向かい、俺は年頃の女子二人の整理に関してのあれこれの会話を聞き流しつつ、スマホの麻雀アプリで時間を潰しながら買い物を済まして行き、『生理用品の他に欲しい物ある?』と継実に質問したら、何故か大量のお菓子やらポットケーキミックスを買い物カゴにぶち込んできたという少々のハプニングがあった。
エッチな事には基本的に過剰反応するのに、何でこういう生々しい生理の話とかは聞かれても平気なのだろうか?分からない...。
もしかして継実って、極度のお菓子好きなのか?今日は日曜日って事もあって俺印のホットケーキをご馳走してやったら珍しく目を輝かせていたもんな。普段はレイプ目をしているのに、だ。
「さて、必要最低限の物を買い込んだし。後は継実の服でも買いに行くか。姉貴よ、何か見立ててあげてくれ」
「オッケー、可愛くしてやるよ」
「あ、ちなみに俺好みに仕上げてくれたら焼肉だけでなく、しゃぶしゃぶも奢っちゃう」
「しゃぶしゃぶは要らん、五万で取引だ」
「焼肉は?」
「あれはあれ、これはこれ」
「今の忘れてください大事な軍資金なんです」
そういう訳で、ざっとララガ内の洋服店に向かって、どれが好みかを選んで貰うことにした。軍資金は五万円あるのである程度、大体の上下の服を揃える程度に一着ずつ買っても問題無い。
「サイズ的にだとこの辺かなー?ま、夏物なら結構なブランド品でなければ大丈夫だろ、うん」
「流石は双子って所か、服に関してマジで詳しいな」
「お前が服に興味ないだけだろ」
「だって大半は兄貴のお下がりだし、あんまり服には困ってる訳じゃないしな」
「え?お前兄貴の着てるの?それも?」
「うん、俺の方がガリガリだから紐入れてキツくしてるだけだよ」
「えええ!?」
「ちなみにこれはかつて兄貴が来てたやつだよ、今の兄貴身長伸びて180cm以上あるから」
「デカすぎだろ!?」
「でも昔は太っててね、それでトラウマになっていつも俺の事嫉妬してた」
「お前がひょろひょろ過ぎなだけだろ」
「ブーメラン乙」
姉貴と話していると、いつの間にかぐいぐいと俺の左腕を摘んで引っ張ってくる。どうやらお目当ての服を見つけたようだ。
「あれ」
「ん?どれどれー?んんんー?おかしいなぁ〜、これ普段着じゃなくて部屋着、もしくはパジャマに見えるんだけどさ、明らかに着る季節間違えてない?熱中症になっちゃうよ?」
「ダメ?」
「おっと?珍しく会話で俺に頼み込んでいる?普段は面倒臭くて一挙手一投足で意思を伝えて来るのに。ガチで欲しいパターンか。ううん参ったねー」
継実はあまり言葉を交わさない。会話を好まないというよりは、なんだろうか? 言葉にしなくていいことは、言葉にしないことが多い気がする。なので、大抵は言葉よりも態度や行動で示して、会話をすること自体稀なのだが……この通り、言葉が必要な時は、きっちりと口に出して頼み込んだりする。今回のパターンとしては、どうやらそのパジャマがとても気に入ったらしい。
「継実さんよ、確認したいんだが」
「?」
「これを着て外に出ないってなら、買ってやる。流石にこれは部屋着用として、だ。約束できる?」
「ん」
「即答...、よし!」
「おーい、パジャマも良いけど普段着も選べよ」
そう言って姉貴が差し出したのが白のワンピースであった。試しに継実は試着室に向かって着替えると、直ぐに試着室から出てきた。あれ?本当に試着したの?そしたら気に入ったらしく買い物かごに入れました。喜んで貰えて良かったです、でも一回だけ見せて貰いたかったです。まぁ普段着なら俺の部屋に部活用で使ってた服やら妹の服があるから大丈夫だろう。少々胸に締め付けてしまうかもしれんが我慢して貰おう。誰かの『好き』を大切にしたいって、ケムリクサで学んだ俺ガイル。
「ほい」
「........あ、ありがと」
「ん、どういたしましてだよ」
パジャマとワンピースを購入して買い物袋をそのまま手渡すと、継実は中身の入ったそれをぎゅっと抱き締め、顔を赤くしながらお礼を言ってくれた。つい継実の赤くした顔を見てドキッとしてしまった。
「ねぇ姉貴、さっき見た?今の継実の恥ずかしそうに小さくお礼を言ったの?」
「ん?あぁ見てた見てた」
「凄いよね、ギャルゲーだと、ぴろりろりんっ♪って音が鳴るところだよ。一瞬ドキッとしたよ」
「そう言うのは一樹に言ってくれ」
「この鼓動の高まり...、もしかして、恋?」
「心臓発作だろ、はよしね」
「さっきから辛辣な言葉と適当な反応やめて貰って良いっすか?」
「お前に慈悲はない」
「少しぐらい好感度上がったって良いじゃないか!」
「お前がそういう言動をしなければそのまま好感度上がったままだったかもな?ほら見てみ?困惑しつつもお前の馬鹿さ加減を非難する目を」
「中途半端なジト目って可愛いよね!なんか癖になっちゃう!」
「下がれ!性癖にされるぞ!」
性癖にされるぞってなんだよ......。でもまぁ、あれだよね?散々、俺の事を脅かしていた姉貴もいつの間にか継実と気軽に話できるようになっているみたいだし、よしとしよう。
「まぁ何だかんだ言ってもうお昼ですしおすし?昼飯でも食べましょうや」
「じゃあ寿司な?」
「お寿司」
「え?何で寿司?」
「お前がお寿司って言ったんだろ?」
「いやそれはギャグで........」
「お寿司」
「........」
「お寿司」
「だーもう分かったよ!寿司にすれば良いんでしょ!?ってかララガに寿司屋ってあったっけ?」
「まぁ多少歩くが、あるにはある」
「ちゃんと回転寿司だよね?回らない高級寿司店なんて高校生は行けないからね?」
「........」
「おーい何で目を逸らすのかなー?まさかとは思うけど本当に回らない寿司屋しかないのか?えぇ!?マジで回らない寿司屋なの!?言っとくけど軍資金も服で注ぎ込んだから半分もないからね!?」
「蓮美...、ゴチになります!」
「ゴチ」
「ふざけるなああああああああああ!!」
そしてララガから少し離れた回らない寿司屋に連れて行かれては約三万円の代金を支払った。とほほ、俺の軍資金が........。
でもまぁ、継実が目を椎茸みたいに輝かせて喜んでくれたのだからよしとするか。
雛森 結
女 17歳
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雛森一樹
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