無表情少女と俺の夏休み   作:餡 子太郎

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美少女がナンパに遭うのは漫画だけなのでは?

 

「いや~、遊んだ遊んだ」

 

「俺も久しぶりにはしゃいだわ」

 

「......」

 

Rタウンにやって来て数時間後、俺達はRタウンを一周しながら買い物をしてはゲーセンで遊んでの繰り返し、気が付けばすっかり日が暮れ始める時間帯になっていた。でもまぁ、母親には晩飯は要らないと連絡はしてあるし、百合愛も俺が居ようが居なかろうがどうでも良いと思ってるだろう。かと言ってあんまり遅くまで外に出歩いているとお巡りさん出動してお世話される羽目になってしまうので、タイムリミットが課せられはいる。なのでさっさと晩飯食って、さっさと退散してしまおう。そう思った俺達は、手頃で親しみのあるファミレスを探す事に。

 

「どうだった継実よ、今日の感想は」

 

「まぁまぁ」

 

「うわはー辛口コメントだー。しかもまぁまぁと来たぞ〜、良くも悪くもないってか〜?」

 

「............」

 

「うんともすんとも言わなくなっちまったよ、一樹これどう思う?」

 

「俺に聞いてどうするんだよ」

 

そんなやりとりをして歩きながら、晩飯を食べる為のレストランを探す。そんな途中だった...、俺の下半身に迫り来るものが...。

 

「......すまん、ちょっとお花摘んでくるわ」

 

「お前は淑女かよ、普通にトイレ行きたいって言えよ」

 

「いや、お前だけならまだしもさ。継実も居るじゃん?」

 

「早く行って」

 

「はい、行かせて頂きます」

 

すっごい中途半端な睨んだ目をしてくる継実に許可を得たので、早速男子更衣室へと向かう。それにしても一樹大丈夫だろうか...、あいつ俺が居たから継実と会話出来てるけど、俺抜きで会話出来るのかね......。そんな事を思いながら尿を足す。5分もしないうちに一樹と継実の待つ場所へ向かうと、思いがけない光景を目にしてしまった。

 

「君可愛いねぇ〜、俺と飯食いに行かない?」

 

「え、その......、俺男なんすけど.....」

 

「あ、大丈夫大丈夫。君も一緒に」

 

「いやこっちが大丈夫じゃないんですけど、ってか連れ待たせてるんで」

 

あ、あれ〜?なんかナンパに遭ってませんかね〜?それも一樹と継実さんが...。いや、継実は分かるよ?無表情とはいえ、顔はべっぴんさんなんだもん。でも一樹もオッケーとかこいつ、やるなぁ!!絶対こいつ性癖歪んでるな(確信)

 

まぁ、親友と妹みたいな親戚にこうなってるのを遠くから見ても面白くも、黙ってるのも認められないので、ちゃちゃっと助けにいきますか。

 

「悪い悪い、トイレが馬鹿みたいに混んでてさ!見てよこれ、手洗ってたらなんか知らないおじさんに水飛ばしてきたんだけど!ねぇこれどう思う?」

 

「うわっ、汚ね....」

 

うん、我ながら良い演技だ。ちなみに服が濡れてるのは本当である。ほら、トイレによくあるウィ〜ン、って馬鹿うるさい乾燥機?みたいなやつを使わずに手をぶらぶらを振ったら飛び散ったやつだ。何でかって?あれ嫌いなんだよ、うるさいから。

 

とまぁ、こんな感じでナンパしてきた男の人は俺にドン引きしてどっか言ってしまった。これが孔明の罠ってね。

 

「......さて、飯食いに行くか」

 

「何事も無かったかのような態度やめろ」

 

「いやだって、君たち絶対お礼は言わないでしょ?」

 

「そんな恩知らずじゃねぇよ、さっきのはマジで助かったわ」

 

「................」

 

あいも変わらず、継実は俺に目を向ける事なく何処かへ視線を向けていた。ふっ、俺は気長な紳士だからな、お礼には及ばんよ。

 

「...あれ食べたい」

 

......本当の事言っちゃうと、ちょっとは感謝の意を表して欲しかったです。

 

 

 

「ふぅ~、やっぱりラーメンは最高だな」

 

「ラーメンなんていつぶりだったかな、半年は食ってなかったな」

 

「...」

 

ナンパから一時間後、晩飯にラーメン店を後にした俺達は、店を出て、帰りの電車に乗ろうと駅へと歩く。あそこの店は中々よかったな。麺が細麺でよくスープに絡んでいた事と、何よりほうれん草があったのが高得点だ。ただ、油がちょっと気になるかな?でもまぁ、次回も行ってもいいかもしれんな。

 

「なぁ一樹、次は何処へ行く?」

 

「家に帰りたい」

 

「今日じゃねぇよ、次回だよ次回」

 

「家に引きこもりたい」

 

「ダメ人間め、少しは運動しろ」

 

「こう見えてもな、俺はふーちゃん(愛犬)の散歩には毎日やってるんだぞ?」

 

「どうだか......、ってか継実は?」

 

「え?」

 

一樹に言われて、隣を見てみると、側に居た筈の継実が居なくなっていた。俺と一樹が後ろに振り向くと...。

 

「ねぇお嬢さん、もしかして今一人?」

 

「......」

 

まーたナンパされてるよ(白目)

 

「君、可愛いね。よかったら俺とご飯行かない?」

 

「.......さっき食べた」

 

「おっとそうだったか...。ならさ、デザートなんてどうよ?俺此処で一番美味いクレープ屋知ってんだ」

 

「......」ギロッ

 

「おおっ、そんなに睨まないでよ。でもそんな顔も可愛いね!」

 

「......」ギロッ

 

あのナンパ野郎、継実相手にめちゃくちゃ苦戦してんじゃん。ってか今日、ナンパに遭い過ぎじゃね?一度だけでなく二度も来た。いつの間にか漫画設定になってんの?

 

「一樹、先に駅に行っててくんない?」

 

「そんな装備(丸腰)で大丈夫か?」

 

「多分大丈夫だ、問題ないだろう」

 

「随分とあやふやだな...。先行ってるぞ?」

 

そう言って駅へと向かった一樹。こういった面倒事には一樹では対応できない、そう踏んだのだ。ただでさえ俺以上にコミュ障だし、ヘタレだし、消去法で俺がいくしかないのだ。いや、最初から行くつもりだったんですけどね。なので早速、継実とナンパ男の元へ。

 

「すみませんねぇ、うちの連れがご迷惑をおかけしましたぁ」

 

「あ?なんだお前?」

 

あ、これ漫画展開でよくあるテンプレパターンじゃん。

 

「いやぁ~、実は彼女とはぐれてしまいまして...。でも無事に見つかりました!ありがとうございます!」

 

「は?何そのまま連れて帰ろうとしてんの?」

 

うっわ、くっそめんどい奴だ...。変な意地?プライド?があるから避けられてんじゃん。意外と俺より馬鹿だったりして。

 

「俺達もう帰らないといけないんで、お巡りさんにお世話なんてごめんなんで。そんじゃ!」

 

そう言って継実の手をとって、この場を脱出する。でもなぁ、この後嫌な予感がするんだよなぁ。何か漫画展開すぎて、肩掴まれて止められそうだなぁ。って思ってたら俺の右肩にがっしりと掴まれた。

 

ははぁ、すげぇ...。俺、預言者の素質あったみたいだわ。いや、単なるフラグ建築、回収一級者だったわ。

 

「クソガキ...、あまり調子に乗ってると痛い目に遭うぞ?」

 

あっははー、そんな目で睨まないで下さいよ~。ちょっとしたジョークじゃないですか~。ジョークですよジョーク、ジャパニーズジョークですよ。

 

......よし、いい加減現実から逃げるのは止そう。これはあれですね、多分俺ボッコボコにされて、継実を誘拐しようとしてますね。ちょっとお客様困りますよ、痛いのは勘弁、マジ勘弁。

 

なので俺は、何が何でも逃げることにした。

 

「.......御免!!」

 

「きゃっ」

 

俺は継実を姫様抱っこいしてそのまま一樹が待ってるであろう、駅まで一直線。ナンパ男も慌てて追いかけてくるが、お生憎様。バレー部時代で鍛えられた俺は、短距離では俺がダントツで早かった。駅まで其処まで距離がないので、継実を障害物にぶつけないよう避け、改札口に到着して継実を下ろし、改札口のゲートを潜れば俺の勝ち。何で負けたのか、来世まで考えておいてください。それじゃ、さようなら。

 

え?もう答え言ってるって?それは失敬、俺ったらウッカリ屋さん♪

 

「おうどうした?まさか追いかけられたのか?」

 

「そのまさかでござるよ」

 

「うっわ、ほんと今日は厄日じゃん...」

 

「全くでござる」

 

「......」

 

「ん?どうした継実、俺の袖を引っ張って。あ、分かった皆まで言うな。お礼言いたいけど、今の状態じゃあお礼が言えなんだろ?礼には及ばないぜ?遠い親戚でも、俺達は家族だからな!」

 

「逃げる時に御免じゃ分かりにくい」

 

「はい、すみません。俺もテンパってたんで」

 

君は人に感謝する時の心はないんか?

 

 

 

 

 

さてさて、俺達三人は電車に揺られながら最寄りの駅へと向かってるが、右隣には精神的にも、体力的にも限界がきた一樹がスヤスヤと寝ているが、今大変な事になってます。何故かって?

 

俺の右肩に頭がのっかってるんだよ。

 

やばいやばいやばい、こいつ中性的な顔立ちと女装してるから、傍から見たらカップルやんけ。まぁ電車内は俺らしか居ないんだけど。しかもこいつ、女性用の香水使ってる所為かクッソ良い匂いするし...。

 

なんなのこいつ?誘ってるの?

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

「鼻の下伸びてる」

 

珍しく継実から話しかけてきたと思ったら、飛んだ誤解だった。

 

「は、はぁ?の、伸びてねぇし!大体、こいつは男で...、って継実さん?何スマホで写真撮ってんの?そして俺に見せて...、ってホントに伸びてるわ...。いやキッショイわ」

 

「元からでしょ?」

 

確かに俺はイケメンじゃないが、其処までキショクはないだろ?

 

「ふっ」

 

「無表情のまま鼻で笑われた!?この子もしかしてエスパー!?」

 

「分かりやすいだけ」

 

そ、そんなに分かりやすかった?おっかしいなぁ、顔に出さないようにはしていたんだが。

 

「...でもまぁ、助かった」

 

そう言って俺の左手を掴んで、

 

「ありがと」

 

と、ストレートに感謝の言葉を贈った。

 

「っ.......、お、おう」

 

無表情ではあるが、あまりのギャップにドキッとする。あれ?この子、不愛想なのに可愛いぞ?

 

「優って、面白いね」

 

「え、何急に?」

 

「それと、馬鹿だね」

 

「だから何急に!?」

 

「駅着いた」

 

「まだ電車止まってないからすぐに立ち上がるんじゃない!あと一樹、起きろ。着いたぞ...、って涎垂らすなぁぁぁぁぁ!!」

 

...今思った。俺、継実に振り回されてない?

 

 

 

 

「どうだった?優と出かけてたんでしょ?」

 

「優にお姫様抱っこされた」

 

「優...、最低」

 

「誤解だぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

うん、俺...。振り回されてるわ。

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