魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜転生したら魔法?がある世界だった〜 作:D-5
「オラァ!!」
訓練校のグランドの中央、皆が見守る中ギンガとカカオが激しく衝突し甲高い金属音が響いた。
俺が退院してからもう数ヶ月経ち、訓練校での生活も残り僅かとなっていた。
時が過ぎるのは本当に早いな、長いと思った一年があっという間だ。
現在行っているのは訓練校では伝統の卒業間近の全力の模擬戦だ。実力が近いペア同士を戦わせて自分たちの実力の最終確認と他の訓練生達にこの一年の成果を披露するのを兼ねている催しだ。
そして俺たち相手は実力が同等と見られたカカオ・ジョニーペアだった。
「ハァッ!!」
「フンッ!!」
再度ギンガのリボルバーナックルとカカオの大剣が激突し金属音と火花を撒き散らす。
前衛同士のぶつかり合い、力は拮抗していて両者共に決定打はまだ出ていない。
「ヴェント君!」
「あいよっ!インパクトブースト!!」
短いやり取り、だがこれだけでギンガが何を求めているのかが分かる。
ペアを組んで最初の頃は一々言わなければ分からなかったが今はここまでできるようになった、これも一年間の訓練の成果か。
俺の放ったブースト魔法はギンガのリボルバーナックルに吸い込まれる。リボルバーナックルのギアの回転が上がり高速回転する加速する。威力が底上げされたリボルバーナックルの一撃をカカオに放つ。
「ハァッ!!」
「ぬおっ!?」
再度衝突、しかし今度はギンガが迫り勝ち、カカオは大剣を放しはしなかったが大きく後ろに弾かれ体勢を崩した。
「もらった!!」
「させないわよん」
「っ!バインド!?」
カカオに追撃しようとしたギンガの左腕に魔力でできた鎖が絡み付き動きが阻害された。
ジョニーのチェーンバインドだ。ギンガはバインドを強引に引き千切り拳を振り下ろしたがその間にカカオは後退しジョニーの近くで立てなおした。
「もう、カカオちゃん突っ込みすぎよ」
「ワリィワリィ、助かったぜ」
ジョニーはデバイスでカカオの頭を軽く叩く。
カカオはあの事件で勝手に前に出たことでジョニーを危険な目にあわせてしまったことを悔いて一人突出することは少なくなり連携を心掛けた動きをするようになった。
それからカカオ・ジョニーペアの実力は瞬く間に向上した、元々二人の個人の実力は訓練生の中でも群を抜いていたのでその結果、実力は今や訓練校一とまでなった。実際にこの二人との模擬戦での勝率はかなり下がったしな。
「それじゃ援護頼むぜ」
「ええ、任せてちょうだい!漢女には不可能はないのよ!!」
やっぱ今までのは小手調べか、こっからが本番だ。
『ギンガお前はジョニーを、俺はカカオの相手をする』
ギンガに念話で指示を送りながら俺も前に出てグローブをしっかり着けなおす。
『OK。で、プランは?』
『Dだ、アレ『………』をやるぞ』
『アレ『………』ね…………了解!』
プランD、俺らの切り札的コンビネーションパターンだ。
カカオとジョニーに見せたことのないとっておきだ。やりあうのはこれで最後になるんだ、披露してやるよ!
ギンガは一瞬視線をこちらに向ける、仕掛けるタイミングは俺に譲渡するとのことらしい。最近念話を使わずともアイコンタクトだけで大抵の事はわかるようになったな~、まあそんなくだらない事はいきますか。
「……………GO!!」
合図ともに俺たちは動き出した。
足の速いギンガを先行するとその行く手をカカオが防ぐ。おそらくジョニー狙いだというのを読んだのだろうか……いや、単純に前衛同士の戦いになると睨んでの行動か、まあどっちでもいい、お前の相手は俺だよ。
「させねぇよ!!」
カカオは大剣にレアスキルである炎熱効果を纏わせて横一閃で振り突っ込んでくるギンガを迎え撃つ。
タイミングはバッチリ、そのまま行けば攻撃を受けてしまうことになるのだがギンガそれを。
「ウイングロード!!」
「んなっ!?」
ギンガが使ったのはナカジマ家の魔導師だけが使える固有魔法『ウイングロード』これは魔力でできた道を空中に作り出すことができる魔法だ。
ギンガはこれを用いて通常の陸戦にはない三次元軌道での回避をした。そういえばギンガもウイングロードを見せたのはこれが初めてだったな。
頭上を越えられたカカオは驚きギンガの姿を追うように視線を上へ向けた、そこに俺が―――
「腹がガラ空きだぜ」
「しまっ……!?」
《pail(パイル) strike(ストライク)》
「オラッ!!」
「ぐはっ!?」
俺の鋭い一撃が(実際に鋭い、パイルストライクは拳に纏わせた魔力を円錐状にして一点集中させてそのまま殴る攻撃だ)ガラ空きのカカオの腹に突き刺さる、ギンガに気を取られて防御を疎かにしていたのでかなりキツイはずだ。
これがプランDの第一段階だ。先行したギンガが急速に回避して相手の気を逸らしたうちに俺が一撃を加え、ギンガは速度をほぼ殺さずもう片方の相手へと奇襲するという寸法だ、今回は初見の技が多いから巧く決まったな。
それじゃ第二段階の準備をするか。
「ぐ……うおおおおお!!」
「おっと!」
ダメージは結構大きいはずなのだがカカオは怯むことなくそのまま反撃を繰り出してきた。俺はそれをシールドを張り角度をつけて流す。
しかし流しているのだがやっぱ重いなこいつの攻撃は。
「オリャオリャオリャ!!」
「っ!ふっ!」
カカオは大剣を操り連続で斬激を放ってくる、俺はそれを避けられるものはよけて無理なものはシールドで受け流す。
この連続攻撃は反撃の隙を与えないようにしているのだろう。だがカカオは焦っていた。
ギンガがジョニーを押しているからだ。
本来中距離戦を主体としているジョニーは前衛がいないということもありギンガは肉薄されていた、ジョニーは近接戦もこなせるが相手はシューティングアーツを主体とした生粋のクロスレンジスタイル、どちらが優勢かは歴然だ。早くジョニーの援護に向かいたいカカオのとる行動は――――
「うおおおおおお!!豪炎一閃!!」
大剣に凄まじい熱量の炎を纏わせて大きく振り上げた。予想通り一気に決めようと大技でくる、これを待っていた。
「しっ!!」
「グッ…!」
大きく上段に構えたと同時に一気に接近しカカオの顔へ軽いジャブを喰らわせる。バリアジャケットがあるのでダメージは期待していないがそれで十分だ、カカオの大技は出は早く威力は高いがほんの一瞬意識を極限まで集中させなくてはいけない、そのうちは完全に無防備になる!そこにジャブなどを喰らわせれば。
「っ!?」
軽い痛みに顔を顰めるカカオ、集中を妨げられ大剣から炎は霧散する。隙だらけの今がチャンスだ!
「オラァ!!」
《Hard(ハード) Beat(ビート)》
「ガハッ…!?」
再度カカオの腹にボディーブローを喰らわせ大きく吹き飛ばした。方角は丁度ギンガとジョニーが戦っている場所へ。その内のジョニーの方へ。
「でぇい!!」
「ぬぅん…ってグヘェ!?」
吹っ飛んだカカオはギンガの攻撃を迎え撃とうとしていたジョニーにぶつかりそのまま地面へ倒れこんだ。
あーなんか予定狂ったな、まあ元々カカオとジョニーを一纏めにする予定だったから手間が省けて好かったんだがしかし重要なことはそこではなかった……重なり合ったカカオとジョニーの位置が問題だった、仰向けに倒れているジョニーの顔の上にカカオの顔が………うわぁ、こいつはひでぇ。
『ヴェント君、ナイス!』
ギンガ、お前、声に出さなくてよかったな。お前は丁度見えていない位置にいるからいいが見物人達、特に男子たちが皆吐き出しそうな顔をしている。
ま、まあ、コンビネーションシフトの手順を省略できたからいいが、その発言は色々と危ないからな。
「……………(返事がないただの屍のようだ)」
「ちょっとカカオちゃん、その反応はどういうことよ…………あ゛あ゛?」
カカオは心に酷い傷を負ったようだな、まあ俺もあんな事があったら首吊ってるかもな…………。
『?動きが止まってる、どうしたんだろ?でもチャンス!一気に決めようヴェント君!!』
いやギンガ、お前はあの状態のカカオに止めを刺せというのか?
さすがにそれは………いやむしろ刺したほうがいいか。強い衝撃を与えてやれば忘れるはずだ、それがダチとしてのせめてもの手向けだ。
「決めるぞギンガ」
「うん!ウイングロード!!」
再度ギンガのウイングロードが発動、その光の道は空を走り伸びていくがそれは道を作るためではない、光の道は徐々に向きを変えて地面とは垂直になりカカオたちを囲うように周囲を走る、そしてできたのは二人を閉じ込める高く聳え立つ光の檻だった。
これでプランD最終段階の準備が整った!
「収束………!」
突き出した両手の先に周囲の魔力素を収束させる、その大きさは瞬く間に膨らんでいき俺の両腕でも抱えきれないほどの大きさになる。
収束した魔力をここまで圧縮できることを知ったのは最近だ。
魔力量の多いスフィアを圧縮する技法は高等技術らしいが俺には安易にできる、恐らくこれがチャラ男の言っていた特典とかなんかなんだろう。
小さいが高密度を誇るスフィアを維持したまま俺は走り出す。
「いくぞ!」
「うん!!」
行き先はギンガ、俺はギンガの組んだ手の上に足を乗せる。そして―――
「でぇえええええええい!!」
思いっきり跳ね上げた、入学一日目にした訓練のときと同じように。
ギンガの力を借りて高い高度へと行くことの出来た俺の眼下には、慌てふためいているジョニーと死んでいるカカオの姿が見える。
ウイングロードの檻は真上が吹き抜けていているが相当高い位置にあるので飛行魔法などを使えない限り脱することは困難だ。
この檻を作った真の目的、それは逃げ場を無くすため。プランDの最終目的は複数の敵を一箇所に集めて大火力で殲滅するだ!そしてここで使うのがあの事件のときに発覚した俺の力!
「メイクマジック!!」
《Pillar》
持っていたスフィアは形を変え全長約5mほどの巨大な柱になった。これが俺の奥の手『メイクマジック』だ。この能力は魔力スフィアを俺のイメージ通り成型できるというものでこの前の事件の時にチャラ男(のホログラフ)をぶっ飛ばそうとしたとき放った魔力が形を変えたのもまさにこいつだ。
ジョニーが俺のことに気づいた様でさらに慌てる姿が見えた、ショックのあまりに無反応のカカオにビンタまでし始めた。今更足掻いてももう遅いぜ?
「喰らいな!!」
《Destruction(ディストラクション) pillar(ピラー)!!》
「ちょ、ちょっと待っ……いやああああああああああああああああああああ!?」
檻の穴へと突き刺すようにブチ込んだ魔力の塊である柱によって二人は潰された、最後にジョニーの悲鳴が聞こえたが気にしないことにしよう。うん。
「しょ、勝者カグラ・ナカジマペア!!」
審判をしていた教官が俺たちの勝利を宣言して模擬戦は終了したのだった。
◆
「イテテテテ……気が付いたら負けてた……」
「ま、まさかヴェントちゃんがあんな技を持っていたなんて………」
カカオとジョニーはテーブルに突っ伏していた。
現在は八時、一日の日程も終わり終身時間まで自由の時間だ、夕食で賑わっていた食堂もピークは過ぎて大分静かになっていた。
しかしカカオの奴どうやらジョニーとのキスのことを記憶から消したようだな、まあ精神の拮抗を保つ為の自己防衛本能が働いたんだろう。その方がいい、覚えていたらコイツ自殺しかねんからな。
「あ、ねえねえ今度の休暇、みんなどうするの?」
「休暇か?」
雑談をしているとギンガが数日後から始まる休暇の予定を俺たちに聞いてきた。休暇とは卒業間近にある一週間の最後の連休のことだ、そしてこれが終われば訓練校での日々ももう終了間近だ。早いものだな一年てのは。
「ん~?俺は家に戻るぜ、親父たちに帰って来いって言われてるからな」
「私は漢女道の総本山に行くわ、師匠に修行の成果を見せるときなのよ」
カカオはベルカの騎士の家だから色々と面倒だとぼやいていたな、実家から手紙が来るたびカカオはいつも鬱陶しそうだったし。
しかしカカオのことはわかったがジョニーよ、その漢女道ってのはなんだよ……。
「むふふふ、それはな・い・しょよ、ヴェントちゃんが漢女道に入ってくれるなら教えてあげてもいいけど……」
「断る」
「あらん、残念」
嫌な予感しかしないのでこれ以上聞くのは止めておこう。
「ヴェント君は?」
「俺か?俺は母さんの付き合いについていく感じかね」
「お母さんに?」
「ああ、局のお偉いさんやらが開くパーティーに出席しなけりゃいけないんだよ、面倒くせぇ」
ああいう場って嫌いなんだよな、全員腹の中に黒いもんを大量に抱えて作り笑いでニコニコして近づいてくるのは。
同い年、もしくわ年下の子供のいる大人は…特に女の子の親は許嫁にどうだ、と言い出してくる始末だ。
皆母さんの会社の技術と資金が欲しいから子供を出汁にして近づこうとするんだよな………まあその度母さんが追っ払うけど。
「あ、あはは。す、凄いねヴェント君」
「お前って、やっぱお坊ちゃんなんだよな………」
「さすがカグラ・インダストリーの御曹司よね、玉の輿狙っちゃおうかしら」
「お坊ちゃん言うな。それとジョニー、俺の半径三メートル以内に近付くな」
「やん、冗談よ」
冗談でも言うなよ、実際俺の素性が割れてから玉の輿狙いの女子たちからのアプローチが多くてしてきて困ってんだよ。
男子からは『このリア充が!』とか言われるけど、こんなのどこもよくねぇよ、全員目がギラついて怖いんだよ、代われるなら代わってやりてぇよ。
「まあ、俺はそんな感じだ。で、ギンガはどうなんだ?」
「私はスバルと一緒にお父さんの所に遊びに行くんだ」
「あ~そういやお前の親父さん局員だったな」
じゃなきゃ局の病院に入院なんてしないし。
「うん、だからね部隊を見学しにいくの。卒業後のためにね」
「そうか。休暇が終わったら俺にもその話も聞かせてくれよ」
「うん、わかったわ」
俺も勉強になると思うしな。
「はぁ~、早く休暇にならねぇかな~」
「そうよね、私も師匠に会うのが待ち遠しいは」
俺以外は休暇が楽しみみたいだな、俺は憂鬱だよホント。
まあ、親孝行だと思っていくしかないよな……。
チケットの予約もしとかないとな、えーと確かミットチルダ臨海第8空港行きだったな。部屋に戻ったらやるか。
はぁ………ゆっくりしてぇぜ。
しかしその願いは届くことはなく俺はあの事故に巻き込まれたのだった。