魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜転生したら魔法?がある世界だった〜   作:D-5

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遅れてすまぬ


第10話

「ハァハァ……」

 

 俺は燃え盛る空港の通路を進む、左右に分かれた道を右に曲がろうとしたが炎が上がり道を塞ぐ。

 

「っ!…こっちもダメか」

 

 仕方なくまだ安全な左に曲がる。向かう先は第二ロビー、出口ではない。

 こんな危険な場所に残らずに避難すればいいのだがそうはいかない、なぜなら……。

 

「ギンガーーーー!スバルちゃーーーーん!」

 

 まだこの空港内にいるだろう二人の名前を大声で呼ぶ、が返事は返ってこず聞こえるのは燃える炎の音だけだった。

 

「こっちにはいないのか…………早く探し出さねぇと」

 

 クソッ、何でこんなことになったんだ。

 

 

 ことの始まりは一時間前のことだった。

 

 

 ~~One hour ago~~

 

 

「じゃあ、迎えは遅れるんだね母さん」

 

『ごめんねヴェント、急な会議が入って…しかもこんなときに限ってクラウスさんもギックリ腰で休んでて……』

 

 申し訳なさそうな声が通信機の向こうから返ってくる。

 休日に入り、母さんのパーティーに付き添うために空港に来たのだが、迎えが来ないのだった。

 本当だったら母さんが迎えに来てそのままパーティ会場まで行くはずだったんだが、母さんは仕事が入って来れなくなり。幼少の頃からの運転手のクラウスもギックリ腰で動けなくなっているようで誰も迎えにこれないようだった。

 

「いいよ別に、一時間か二時間くらい潰せばいいんだろ?だったら大丈夫だよ」

 

『うぅ~ごめんねヴェント~。な、なるべく早く仕事終わらせて迎えに行くからね!』

 

「うん、わかったよ母さん、じゃあ切るね」

 

『お母さん頑張るからね!』

 

 母さんはそう言って通信は切れた。あの気合の入り方だったら一時間程度で終わるだろうな、母さん子供みたいな容姿だけど仕事できるからな。

 

「さて、どうするか……適当に土産屋でも廻って時間を潰すかって……あれ?」

 

 あそこに見える青髪に大きなリボンの後ろ姿は……。

 

「ギンガ?」

 

「え?あっ、ヴェント君!どうしてここに」

 

「いや、前に言ったとおりパーティーにな、お前は…親父さんの所にか」

 

「うん。もしかして同じ飛行機だったのかもね」

 

 そうなのかもしれないな……まあ俺はファーストクラスの席だったから気づかないのも当たり前か。

 

「そうだな…ところでスバルちゃんは?一緒に行く予定だったんだろ?」

 

 この前の話のときに俺はそう記憶していたんだが……。

 

「あっ!ねぇヴェント君、スバル見かけなかった?」

 

「え?いや、見かけなかったが………」

 

「そう……はぁ、どこ行ちゃったのよ、もう……」

 

 あーこの流れはもしかして。

 

「はぐれたのか」

 

「うん……少し目を放した隙に」

 

 やっぱりか……スバルちゃん好奇心旺盛で行動力がありすぎからな。

 でも面倒だな、この空港無駄に広い上にこの人ごみから探しだすのには骨が折れるぞ。

 

「アナウンスは?」

 

「さっき頼んだけど反応は無し」

 

「通信は?」

 

「ダメ…というか端末を持ってない」

 

 絶望的だな、おい。

 

「はぁ……しょうがない、探すの手伝ってやるよ」

 

「え、で、でも悪いよ。ヴェント君にも予定があるんじゃ…」

 

「迎えが来るのが遅くなってな、時間をどう潰すか悩んでいたところだ。だから手伝ってやるよ」

 

 スバルちゃんのことも心配だしな。

 

「ヴェント君…ありがとう」

 

「気にすんな。じゃあ手分けして探すか、とりあえず通信はいつでも取れるようにしとけよ」

 

「うん!じゃあお願いねヴェント君!」

 

「ああ」

 

 ギンガはそう言い駆け出していった。

 

「んじゃ、行きますかね」

 

 とりあえず土産屋を中心に行こう、もしかしたらいるかも知れないしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スバルちゃーん…ここにもいないか」

 

 んー、当てが外れたか?それともこちら側にいないか……まあ、とりあえずもっとよく探してみよう。

デバイスに着信が掛かる、ギンガからだ、もしかして見つかったか?

 

「おう、そっちはどうだ?」

 

『あ、ヴェント君。ダメ……そっちは?』

 

「見つからない」

 

『もう、どこ行ったのよスバル……』

 

「まだ探してないのはどこだ?」

 

『えーと…第三ターミナル』

 

「俺もだ、いったんそこで合流しよう」

 

『うん』

 

 そこにもいなかったらもう一度探すしかないな……しかしほんと広いなココは……。

 んっ?今一瞬地面が揺れたような………。

 一瞬の揺れを感じた次の瞬間、窓から見える遠くのターミナルが爆発を起こした。

 

「!?」

 

 ば、爆発!?しかも大きい!方角からして第三ターミナルから煙が上がっていた。

 

「「「「「わ、わああぁああぁああ!?」」」」」

 

 突然の恐怖により一瞬にして阿鼻叫喚の場となった、恐怖に駆られた人々は逃げ出すために我先にと出口に向かい大波となる。

 事故か?それともテロか?どちらにしろ危険なのには変わらない。

 

「ギンガ聞こえるか!おいっ!」

 

 まさか爆発したところにいたりしないよな!

 

『ヴェ、ヴェント君……………!』

 

 っ!…よかった無事か。

 

『す、スバルは……まさかあそこに………』

 

 やばい、ギンガの精神が不安定になっている、とりあえず落ちつかせないと。

 

「落ち着けギンガ、まだそうだと決まったわけじゃ……」

 

『わ、私探して来る!』

 

「ちょ、ま、待てっ!ギンガ、オイッ!!くそっ!切りやがった」

 

 現在第三ターミナルからは火の手が上がり、勢いを増している。

 危険な状態なのが分かる。あんな所に何の装備も無しに行くのは危険すぎる。

 

「クソッ!休暇ぐらいはゆっくりさせろよ!!」

 

 俺は待機状態のデバイスを起動し人波に逆らって第三ターミナルへと駆け出したのだった。

 

 

 

 そして現在

 

 

 

「くそっ、どこ行きやがったんだ」

 

 第三ターミナルから上がった火はその範囲を広げていき空港全体にまで及んでいる。

 

「熱いな畜生!オーイッ!!ギンガーー、スバルちゃーーん!!」

 

 簡易のバリアジャケットを展開しているから多少の耐熱効果があるがそれでも上昇し続ける室内の温度はキツイな。

 

「こっちにはいないのか………!オーーイッ!!」

 

 ……………返事は返ってこずただ俺の声だけが木霊する。ところが俺の意味に不自然な音が飛び込んでくる。

 何かが扉を叩く音だった。

 

「誰か居るのか!」

  

 俺の声に反応し叩く音が大きくなる。音の発生源を探す……こっちか!

 駆けつけた先には歪んだ扉があった。開かなくなったのか……!

 

「誰かいますか!」

 

「た、助けてくれ!ドアが、ゲホッ…開かないんだ!」

 

 逃げ遅れた人がいた、扉が開かなくなって閉じ込められたか。引っ掛かりに指をかけ開こうとするがビクともしない。破壊するしかないか。

 

「ドアからなるべく離れてください!破壊を試みます!」

 

「あ、ああ」

 

 頑丈そうな金属製ドアだな、拳で壊せるか?

 

「ハァアアア!!」

 

『Haed Beat』

 

「くっ~~~~~~!?」

 

 ドアは凹みをつけるだけで壊れはしなかった。どんだけいいドア使ってんだよ!

 

「力じゃ無理か……だったら別のやり方だな」

 

 一秒だけ収束し魔力スフィアを細いに針状にしてドアロック機構があると思わしき場所の僅かな隙間に差し込んだ。

 ロックしている箇所さえ壊せれば後は開けるはずだ。

 針金状の魔力を切ると差し込んだ箇所に小さな爆発が起きる。俺の魔力特性がこんなところで役立つとはな……。

 後は力づくで開けるはずだ。

 

「今から開きます!」

 

 強化魔法を使って扉を強引に開く。

 

「大丈夫ですか!」

 

 内側にドアが倒れたら俺は急ぎ中に入るとそこには空港の職員がいた。全員炎の熱気にやられて消耗していて中には倒れている人まで。

 

「あ、ああ……」

 

「管理局の者です。もう大丈夫ですよ」

 

「おお、管理局の!」

「た、助かった……」

「これで戻れる!」

 

 最初は俺が子供だからか怪訝な顔をしたが局員であることを告げると一気に安心したのか活気が戻った。

 とりあえずは…。

 

「動かないでくださいね……っ!」

 

『Shell Barrier』

 

 俺はこの人達にドーム状の防御魔法を施した。この魔法は一定時間熱や衝撃から内部の対象を保護することができる、これならこの人達を守ることができる。ただ魔力の消費量が大きすぎるのとここから離れられなくなるのがネックだな……やっぱ俺の魔力特性厄介すぎる。

 それと少し怪我をしている人たちに対して応急手当としてヒーリングを掛ける。

 

「これでしばらくは大丈夫です」

 

「あ、ありがとう」

 

 一先ずはこれでいいだろう、でもいつまで持つかは分かない、それにギンガたちも探しにいけない……どうする………。

 

「おーい、誰かいるかーーーー!!」

「いたら返事をしてくださーい!」

 

 いいタイミングだ!救助隊か!

 

「こっちです!要救助者数名がここにいます、来てください!!」

 

 大声で救助隊を呼ぶ、声が返って来たからコッチに来てくれるはずだ。

 これでこの人達は助かる。

 

「大丈夫ですよ、これで助かります」

 

「あ、ありがとう」

 

「いえ…ところで」

 

 俺はスバルちゃんかギンガの容姿を詳しく説明して行方を知らないか聞いた。もしかしたら知っているかもしれないと思ったからだ。

 

「……すまない、私たちも逃げるのに必死で君の言ったような子達のことは全然……」

 

「そうですか…」

 

 やはり情報は無いか……もしくはもう避難したのか?

 

「あ、もしかして…………」

 

「っ!何か知っているのですか!」

 

「え、ええここにくる少し前に女の子とぶつかって、もしかしてその子かも」

 

「どっちに行ったか分かりますか?」

 

「大きな女神像がある第三エントランスです」

 

 大きな女神像…………第三エントランスホールだな!

 

「ありがとうございます!」

 

「管理局です、助けに来ました……って君!どこへ行く気だっ?!」

 

「後はよろしくお願いします!」

 

 あの場を消防隊の人達に任せて俺は駆け出した。

 行く先は炎が激しい箇所だ、バリアジャケットに回す魔力量を増やし炎の中に突っ込んでいく。

 無事でいてくれよスバルちゃん!

 

 

 

 ◆

 

 

 

「スバルちゃーん!!どこだーーーっ!」

 

 クソッ、どこだ。

 辺りを見渡しても見えるのは燃え盛る炎だけ、人の姿は見当たらない。

 瓦礫が落ちてきて倒壊までの時間はそれほど残されていない。

 

「………急がないと!!」

 

 炎を掻き分けながら進んでいくと小さな人影が見えた。

 いた!スバルちゃんだ、膝をついて泣いているスバルちゃんの姿を発見した。

 特に酷い怪我は無さそうだが……。

 

「スバルちゃn―――!?危ない!!」

 

 スバルちゃんを呼ぼうとした時、スバルちゃんの背後の巨大な女神像が崩落した。

 スバルちゃんは俺の声に気づず逃げることも出来ない。

 

(くっ!………間に合わない!)

 

 俺の使える高速移動魔法じゃこの距離じゃ遠すぎる。

 傾きスバルちゃんへと倒れる女神像、急ぎ駆け出すが間に合わない。ダメなのか、と思った時だった、桜色のバインドが女神像を捕縛し倒れるのを止めたのだった。

 視線を上へと移す、そこには白いバリアジャケットを纏った一人の少女がいた。

 

「よかった間に合った…助けに来たよ」

 

 俺は彼女を知っていた、航空戦技教導隊、エースオブエース高町なのは。

 管理局員で知らないほうがオカシイくらいの有名な人物だ。

 

「でも、助かった……」

 

 彼女がいなければ今頃スバルちゃんは女神像の下敷きになっていただろう。

 

「よくがんばったね偉いよ。もう大丈夫だからね……安全な場所まで一直線だから!」

 

 高町教導官はスバルちゃんの元に降り、スバルちゃんにバリアを張ってデバイスを上へと向けた。

 一直線ってまさか…て、天井を撃ち抜くつもりか!?

 い、いや、教導官の色んな噂が確かなら不可能ではないと思うが………でもそんな無茶は普通はしな……。

 

「一撃で地表までいくよ!」

 

『All right. Load cartridge』

 

 やっぱりかぁーーーーー!しかもご丁寧にカートリッジを二発も使ってるし!!

 収束されていく魔力、それは凄まじくこの前の事件の男のとは桁違いなのは明白だった。

 航空魔導師ならこの方法が一番早く外に出れるだろう、だけど無茶すぎるだろ……。

 

「なっ!?」

 

『master!』

 

「え、しまった!?」

 

 皆が油断していたのだろう。

 天井の一部が剥がれ、落ちてきた。更に不幸なことに落下地点にはスバルちゃんがいる箇所である。

 幾ら高町教導官の張ったバリアでもあの大きさの瓦礫では潰されてしまう、高町教導官は魔力を収束していて動けないでいる、このままではスバルちゃんは………。

 その時俺の身体は動いていた。

 

「あ、ああ、イヤァアア!!」

 

「オオオオオッ!!」

 

「え?!」

 

 アサルトステップで奔る。今の俺は人生の中で一番早く走っているだろう。

 女神像を足場に跳躍し瓦礫に突っ込む、殴って壊す。この拳じゃ小さすぎる。なら巨大な拳でぶち砕く!

 高町教導官の集めていた魔力を収束で掻っ攫う。さすがランクS魔導師の収束砲の魔力、かなりの密度と量だ、これなら短時間で高威力のものが作れる!

 収束した魔力は形を変えて巨大な拳へと変わる。デバイスが処理しきれず火花を散らしているが壊れても直せる!

 

「オラァアアアアアアアアッ!!」

 

 落ちてくる瓦礫に拳を打ち込んだ。巨大な瓦礫ひび割れ、粉々に砕け散り。周囲に細かくなった破片を散らす。

 

「ハァハァ……ま、間に合ったか…」

 

「ヴぇ、ヴェント……お兄ちゃん?」

 

「ああ、探したぞスバルちゃん」

 

 俺はスバルちゃんの頭に手を乗せて笑う。

 すると緊張の糸が解けちまったんだろうな、スバルちゃんは俺に抱きつき泣いてしまった。やっぱ怖かったんだろうな……そんなスバルちゃんを俺は撫で続けたのだった。

 

「え、えっと君は……」

 

「あ、申し遅れました。自分はヴェント・カグラ訓練生であります。とりあえずここは危険です今は脱出を優先しましょう、高町教導官」

 

 天井が崩れてきてるんだ悠長に話している暇はない。

 

「う、うん!レイジングハート!!」

 

『Load cartridge』

 

 再度カートリッジを使用し収束を再開する。桜色の魔力がデバイスの先端に集まっていく。

 

『Buster set』

 

「ディバイーン………」

 

 収束が終わり収束された魔力が今。

 

「バスタァーーーーーーーー!!」

 

 放たれた。放たれた魔力は天井を突き破り空へと奔っていった。……これがオーバーSの力…か。

 アレを喰らう犯罪者がなんか哀れに思えてきた。

 

「さあ、いくy………」

 

 高町教導官はスバルちゃんを抱き上げるが…そこで問題が発生した。

 

「えっとカグラ君はどうしよう……」

 

 そう、空を飛んで逃げる予定だったのだが高町教導官は一人しか抱えられないのだ。もちろん俺は飛べない。

 

「あー………えっと、そうだ浮遊魔法ってあります?」

 

「え?あ、あるけど……」

 

「ならそれをかけて牽引してください、これを持って」

 

 俺は魔力スフィアを作り出してから紐状にし高町教導官に手渡した。

 やっぱ形成能力だけは使い勝手いいな。

 高町教導官は魔力形成を見て少し驚いていた、持ち直してすぐに魔力糸を受け取り手に巻きつけた。

 

「うん、それじゃレイジングハート」

 

『Floater』

 

 俺も魔力糸を巻き終えたら高町教導官のインテリジェンス・デバイスが浮遊魔法を掛けてくれた。

 しかし高そうなデバイスだな、メンテだけで一ヶ月の給料が吹っ飛ぶんじゃねぇか?そんなくだらないことを考えているうちにピンク色の魔力に包まれると俺の体は浮遊した。

 

「じゃあ行こう」

 

「はい」

 

 先導する高町教導官に牽引されて俺は空へと飛び立ったのだった。

 

 

 

 

 それからは無事安全な場所に降ろされ俺たちは助かった。スバルちゃんと俺は救急車に乗せられ病院に搬送された。

 それとギンガも無事に救助されたらしい。しかも驚いたことにギンガを助けたのはなんとハラオウン執務官だった。

 この前の事件のときにも助けてもらったので二度目になるな、なんか縁でもあるのか?でもギンガも無事でよかった。

 それよりも今は……。

 

「グスッ、ヴェントォ~~~」

 

 泣きながら抱きついて来る母さんをどうにかしなければ、周りの視線が痛い!

 ていうか俺の休日は結局入院でお釈迦になったよ、畜生!!俺に休息の時をーーーーーーー!!

 

 でもいったい何が原因でこの火災は起きたんだろうな、後日報道された時も詳しいことは発表されなかったしな。まあ、どうでもいいか。

 

 

 

 

 

 だがこの火災事件の原因、これが四年後に起きるとある事件と繋がっていただなんてこの時の俺は知る由もなかったのだった。

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