時間が流れるのは早く。気が付いたら既に15歳。今年から桐藤ナズサこと俺は高等部に進級した。
ということでですね。待ってたぜェ!! この
はい。遂に来ましたエデン条約編。ここから忙しくなりますよ。
ゲームではエデン条約編がどの時期なのかはハッキリしていませんでしたが、1つだけ確定しているものとして、ナギサ様&ミカが3年生に上がってからの物語。
判明している情報はこれだけですが、それさえ分かれば充分。ナギサ様が3年生になるまでに色々と準備と計画を練り、目標を定めてきました。
改めて宣言しましょう。この世界で俺が成すべきこと。それは……ナギサ様の脳を破壊すること。そして原作の名シーンを生で見ること!
……はい。
やっぱりね、せっかく転生したのならば原作の名シーンを見たいのがオタクの性。
しかし、エデン条約編は一分一秒全てが名シーンと迷シーンで溢れかえっており、全てを追うことはこの世界で肉体を持ち生きている以上は物理的に不可能。更に高等部に進級したと同時に、半強制的にティーパーティーであるナギサ様の妹として、次期ティーパーティー候補としてナギサ様の付添人に任命されてしまった。おかげで自由に動ける時間が目に見えて少なくなってしまい、もうすぐエデン条約も来るので更に忙しくなる。
ですので、苦渋の選択の末に可能な限りで絶対に見納めるシーンを列挙してきました。
・ロールケーキをぶち込みますよっ!
・補習授業部のプール掃除。
・ミカのわーお。
・アズサとモモフレンズの出会い。
・コハルのエロ本バレ。
・補習授業部の水着パーティー。
・ハナコによって明かされる黒幕(大嘘)
・ミカが裏切り者の姿として正体を明かし、アリウスの生徒を引き連れて先生に立ち塞がる。
・脳を破壊された後遺症によりお茶を吹くナギサ様。
・ヒフミによるタイトル回収。
・ミカとサオリの一騎討ち。
これが第一目標達。
大分篩にかけてしまいました……もっと色々見たいよぉ……。美食研究会の助けでゲヘナ自治区を切り抜けるシーンとか、アズサvsアリウススクワッドの対決とか、先生に甘えるヒナとか……。どれもエデン条約編を語るには大切なシーンなのに……断腸の思いではあるが仕方がない。せめて列挙したものは必ず見逃さないようにしなければ。
そして第二目標ナギサ様の脳の破壊に関してですが……。
具体的な方法としては、ミカと一緒にトリニティを裏切ります。
と、言ってもただ裏切るだけでは味気ないので、こんなシチュエーションを計画しました。
大切な友達すらも信じられず疑いをかけた者を纏めて追い込んだナギサ、然しそこには誰一人として裏切り者はいなかった。その後、誠心誠意謝罪し和解することは出来たものの、ナギサには深い傷が残ってしまう。そこへ降りかかる残酷な真実。真の裏切り者は幼馴染のミカだった。
エデン条約調印式当日……突如飛来した巡行ミサイルによって通功の古聖堂は崩れ落ちた。混沌に陥る会場。その最中にナギサの目の前でもう一人の裏切り者が現れる。そう、裏切り者は二人居たのだ。その正体はずっと傍にいた妹であるナズサだった。彼女は見せつける様に瓦礫を踏み付け『それなりに楽しかったですよ。ナギサ様との姉妹ごっこ』と吐き捨てた……。
……これが俺の考えた最強最高のナギサ様の脳破壊方法です。
ちょっとやりすぎかもしれないが、きっと大丈夫。ブルーアーカイブには先生がいる。彼、あるいは彼女がいる限り、決してバッドエンドには向かわない。全員に救いがある。それがこの
こちらもしっかりと達成できるよう計画を練ってきた。その為の
裏切り者になるということは、エデン条約を阻止(正確には利用)を目論むアリウス分校の生徒達と接触する必要がある。そして、その為には避けて通れない道がある。文字通り。
アリウス分校の説明するに当たって、まずはこのトリニティ総合学園の歴史について触れなければならない。
トリニティ総合学園は元々パテル、サンクトゥス、フィリウスという3つ学園を中心に、幾多ある学校間の紛争を避けるため連合となった学園であり、かなり血生臭い歴史が創立に関わっている。その軋轢が僅かではあるもの今も確かに残っている。
因みに、この時に各校の代表が話し合う為に設けられた場がティーパーティーと呼ばれ、現在も生徒会がその名を冠して残り続けている。
しかし、当時その連合の創立に反対した学園があった。
それがアリウス分校。
ただ、平和の為の統合に反対するものの末路は火を見るよりも明らかだった。平和の為に築き上げた連合は、徹底的にアリウス分校を迫害し追放した。今やその名を知る者すら少ない。
そしてアリウス分校は、とある道を通じないと辿り着けない秘境へ身を潜めた。しかし、その時には既に学園としては機能していなかった。その後も、外部とは一切の接触を憚り続けたアリウス自治区は、やがて内戦が乱立し陸の孤島と化していた。
そこへ一人の大人が訪れた。エデン条約編の諸悪の根源と言っても過言ではない、主役どころか敵役にすらなれなかった存在ベアトリーチェおば……ベアトリーチェお姉様である。彼女は唯一無二の大人として、絶対の支配者として振る舞いアリウス自治区を乗っ取り、更には己の計画の為にアリウスの生徒達を半ば洗脳に近い教育を施し、捨て駒として育てている。
字面にして書くととんでもない畜生だな。他のゲマトリアは多少なりとも、人情らしき物があるのに……あるよね?
シャーレの先生とは真逆の大人、絶対に相容れることはないな。
そして、エデン条約編はプロローグよりも前身、第0章とも言える部分がある。
ミカがアリウス分校の生徒と接触し、些細な悪戯心がきっかけになり、ティーパーティーの一人、百合園セイアを殺害してしまったことだ。実際は殺害には至っておらず、セイアを守る為に敷かれた情報統制だったのだが。これにショックを受けたミカは、計画を止められなくなりやがて、罪悪感と自己嫌悪の連鎖の末、魔女として暴走してしまう。
ここで今大切なのはミカがアリウス分校と接触出来たこと。アリウス分校の自治区は、古聖堂の地下にあるカタコンベの先にあるのだが、このカタコンベが厄介なのだ。全体像を把握できないほど張り巡らされており、出口に繋がる道が変わるという性質上辿り着くのは困難極まりない。
つまり裏切り者になるには、アリウス自治区へ辿り着き、現地の生徒と接触出来たミカに自治区へ連れていって貰う必要がある。
余談だが、俺も自分なりに古書館でそれっぽい文献を漁ったり、シスターフッドの教会の立ち入り禁止区域に侵入したりと、手掛かりを探したものの徒労に終わった。しかも、シスターフッドに目を付けられ、完全にブラックリスト行きになってしまい、教会から出禁を喰らう快挙まで成し遂げた。
幸いにも、ミカはいつも何か企みが浮かんだ時は必ず話を持ち掛けてくる。
勿論それは今回も例に漏れなかった。
***
「ナズちゃん。私、遂にアリウス分校の自治区への道見つけちゃった☆」
「マジか……」
聖園ミカにとって桐藤ナズサは幼馴染であり、可愛い後輩であり、唯一無二の悪友と言える存在だった。
初等部、中等部では二人で色々な事をした。キヴォトス全域で話題になってたゲヘナ自治区のスイーツ店にこっそり忍び込んだり、帰り道結局バレて絡んできたゲヘナ生徒を返り討ちにしたり、命を削る本気の一夜漬けをして赤点をギリギリ回避したり、誕生日にサプライズと称してナギサにケーキ爆破を仕掛けたり、その度にナギサから叱られるのがお決まりであった。
高等部に進級してからは、ミカはティーパーティーに選ばれ、ナズサも次期ティーパーティー候補としてナギサの付添人になり、お互い立場上の関係で派手なヤンチャはできなくなってしまった。
そんなある日、ティーパーティーの定例集会にてミカが放った一言――アリウス分校とも仲良くできないのかな?確かにそれは、思いつきで言ったのものだったが、紛れもない本心でもあった。しかし、それを聞いたセイアとナギサはまた適当な事を……と怪訝な顔付きをしていた。それに心底腹を立てたが、その中でもナズサは流さず真剣に話を聞いてくれて、更に協力するとまで言ってくれた。その顔は、あの二人で悪戯を仕掛ける時によく見せていた笑みだった。時間が経って立場が変わっても、二人の関係性は変わっていなかった。
「リスク冒して色々やったけど……やっぱりこうなったかぁ」
「というわけで、今度のティーパーティーでの給仕よろしく~☆」
「趣味悪いぞ、ミカァ……正義実現委員会にパワハラで訴えようかな」
それは高等部に進級してからの話。
悪友であるあのナズサが、今まで一緒に問題ばかりを起こしてきたナズサが、乱れることなく清楚に制服を着こなし、姉であるナギサに給仕をしている姿を初めて見た時にミカは大爆笑した。更に自身もティーパーティーだからと、あまり使わないティーパーティーとしての権限をとことん使い、ナズサに給仕をさせていた。更に何処から仕入れたのやら、メイド服等昔のように着せ替えさせたりと好き放題やっていた。途中、ナギサに苦言を呈されてからは自重しているが、普段は対等な相手に、一方的に命令出来るアレはなかなか癖になる。
「それで、何時行く?」
「そりゃ勿論、今からでしょ!」
「オッケー、準備してくるわ」
「え、即答?……いいの?誘っといてなんだけど、今はナギちゃんの付添人でしょ?」
「まぁお小言は貰うと思うけれども……そんなんで日和るナズサさんではないよ?」
「……ふふ、やっぱり変わらないなぁナズちゃんは。私も人の事言えないけど」
景色が全く変わらないカタコンベを突き進みながら、この先で待ち受ける未来を思う。
最初は上手くいかないだろう。積み重なったアリウスの憎悪は、そう容易いものでは決してない。それでも、隣にいる悪友と生真面目すぎる幼馴染、少し気に食わないけど、自分よりもずっと賢くて聡明な友達。みんながいればきっと乗り越えられる。手と手を取ることが出来るはずだ。
歩き続けて数十分。外の光が漏れこむ出口の先に……崩れ落ちた寺院の跡のような場所へ出た。
「要件だけ言え。トリニティ」
出迎えはすぐさまやってきた。黒いキャップと黒いマスク、その眼は侵入者を撃退せんと鋭く睨み、手には何時でも構えられるようにARが握られている。
……まずは一歩足を踏み出し手を差し出す。決して銃口を向けにきた訳ではない。ファーストインプレッションは大切だ。
「初めまして☆ 誰だか知らないけど、あなたがアリウスの生徒だよね?私は聖園ミカ!こっちが桐藤ナズサちゃんで……」
始まりは複雑なものでなかった。
どこにでもいて、どこにもいない。
なんてことないただ一人の女の子の、純粋な想いから物語の幕は上がった。
「どうしよう、どうしようナズちゃん、私どうしたら...」
とある夜。
寝静まった校内のとある場所。
そこに2人の少女がいた。
「私、セイアちゃんを殺すつもりだなんて……こんなつもりじゃ……」
吐露する。己の罪過を確認するように。誰かに届ける訳でもなく。
「あれ? どうして私、セイアちゃんを襲撃してって命令したんだっけ?」
「私は……私は……」
自分でも支離滅裂を言っていると理解は出来ている。それなのに頭が、思考が纏まらない。
ただ手を取り合いたかっただけ。ただ嫌いだっただけ。ただ少しだけ意地悪がしたくなっただけだったハズなのに……。
「取り敢えず落ち着いてミカちゃん」
後悔と焦燥に押し潰され、自分の存在すらも不明瞭になって――握られた手は暖かかった。
目の前には、いつもと変わらない笑みを浮かべた友が居た。
「安心して……大丈夫。私も付いてるし、それに……ミカちゃんには救いがあるから」
一体何を根拠に……それは、ただの気休めにすらならない物。それでも。全てを理解しながらも。変わらずそこにいた友を見てミカは安堵した。
それと同様の深い絶望と後悔も襲ってきた。
あぁ。どうしてこうなったんだろう。何を間違えて、何がいけなかったんだろう。もう私には何も分からない。
……でもひとつだけハッキリ言えることがある。
……ごめんね。ナズちゃん。私があんな事を言わなければ。誘わなければ。巻き込まなければ。君も傷付けて……。
……私って最低だ。それでも隣にいてくれるナズちゃんに喜んでいる。
だから……せめて裏切り者は……みんなに嫌われる魔女は私だけでいい。
***
アリウス自治区の最奥、生贄の祭壇。バシリカ。
そこでは領主であるベアトリーチェ以外は、基本的に誰も足を踏み入れることは許されていない。しかし現在、ステンドグラスから伸びる斜陽には2つの陰が映し出されていた。
「それで一体貴女は何者なのでしょうか?如何にして私の存在を掴み……
確かにカタコンベを抜けて、アリウス自治区へ辿り着いた者は初であった。しかし所詮はそこ止まり、羽虫が1、2匹紛れ込んだ程度どうということでない。利用出来そうならば使うだけ、その程度の認識だった。
しかし1匹、蛇が紛れ込んでいた。ベアトリーチェは領地であるアリウス自治区の状況は全て視え聴こえる。その能力はアリウスの生徒すらも知らない……が、それを眼前で跪くトリニティの少女は、ベアトリーチェの存在を了知しているだけでなく、その能力までも察知し……絶対に見過ごせない――――色彩を持ち出してきた。
「まずはこの聖地にお招きいただき誠にありがとうございます。そして、どうか領地内での狼藉をお許し下さい」
「……いいでしょう。私の領地へ不法に侵入したことは不問とします。それで?」
「御厚意痛み入ります……申し遅れました私、桐藤ナズサと申します。単刀直入に申し上げますと、実は……私には未来が視えます」
「……!!」
一見荒唐無稽に見えるナズサの発言……それは決して軽視できるものでなかった。
そう、既に未来を読めるものはキヴォトスに存在している、ベアトリーチェはその対策も打っていた。しかし、その相手は目の前の少女ではなかった。
そして自身に探知されることなく、ここまで突き止めてきた事にベアトリーチェは僅かながらも恐怖を覚えた。
最悪の状況だ。その一言に尽きる。ここにきて新たな予言者の出現とは。
この少女は恐らく……ゲマトリアの存在は勿論、自身が目指す”崇高”の全貌までも把握している可能性がある。
そして阻止する為の勝算があるからこそ、態々単独でここまで出向いてきたと考えるのが妥当だろう。アリウススクワッドを呼び出せるように警戒レベルを引き上げる。
だが、それは杞憂に終わった。
「……そこで……視えてしまったのです……」
「……?」
「キヴォトスを破滅に導く……神を。ベアトリーチェ様が……色彩が……」
少女は嗚咽に震え、破滅を齎す
桐藤ナズサはこれから訪れる未来を予見し、抗うのではなく服従の選択肢を取ったのだ。
「そう……ですか」
……口端が吊り上がる。
そうだ。何を焦っていたのか。私の計画に狂いはない。完璧で正しい。
敵対者とも言えるシャーレの先生も、私の崇高の前で敗れ去ったのだろう。
その勝利の証と言っても過言ではない未来を読み解くこの少女の存在が、私の計画をより一層強固で盤石な物にする。
「それで? ただ私に未来を伝えに来たわけではないのでしょう?」
約束された勝利を前に、ベアトリーチェは上擦んだ声音を隠そうともせず尋ねる。それで貴様は一体何を望むのか。と。
「……はい。私が持つ色彩の情報の提供、必要とあらばトリニティの古書館、シスターフッドの暗い秘密。なんでもします。一生仕えます。ですのでどうか……私の姉である桐藤ナギサと、今日一緒に訪れていた聖園ミカだけは……2人の命だけは奪わないでください」
「お願いします……」
涙を堪え、消え入る声を振り絞り、震える体を抑えながら切実な願いと共に、恥も外聞も捨てて頭を垂れる。
……なるほど。これは
自身の立場を正しく理解し、折れた聡明なこの少女。桐藤ナズサ。こんなにも御しやすく、長期的に使える有用な駒を態々捨てる訳がない。
「分かりました。崇高へ頂いた暁には二人の生命は保証しましょう……ただし、一生仕える……その言葉を忘れないでくださいね?」
「!……はい。ありがとうございます! ありがとうございます!」
契約とも言えないようなこんな口約束程度で、歓喜し涙している様は……未来が視えても、聡明であっても所詮は子供という事実の証左だった。
……さて、精々酷使してあげますから、しっかりと働いてくださいね?
「ギヴォトスを破滅に導く(反転した)神を。ベアトリーチェ様が(呼び寄せた)色彩が(ギヴォトスを認識してとんでもないことに)」