・鐘。塩素。ドライヤー。秘密の部屋。側溝の中で眠るナイフ。レイプされて妊娠した生徒会長。ライターで虫に火つけて殺して、笑う。飼ってた犬が逃げ出して街中を探す夢を見た。真夜中の病院のリノリウムの床に横たわって体中を血液が巡る音を聞いた。ゲームの中の海の一番深いところまで潜って、酸素がなくなって溺れ死ぬのを待った。誰にも知られていない悪徳を、それでもポケットに隠して神様の目を欺いた。親を失ったまだ幼い兄弟たちが消えた暖炉の前で凍えて眠るシーンを、テープが擦り切れるまで何度も繰り返し見た。たとえ全ての理由をなくしても両手を空に広げ、真っ赤なマフラーを振り回してくるくると踊り、回るのだ。
・さよならを言うために来たのです。彼女は手を水平に広げ、防波堤を歩く。ネクタイピンが彼女の歩調に合わせて揺れる。曖昧虚ろな空を反射して。きらきら、きらきら、きらきら…。
・雨粒たちはボンネットの上で震えながら光る。追い越すバックライトが鮮やかな線を、車窓に残しては消えていって。暗黒を等間隔に過ぎていくビーコンに瞼を細め、微睡む。僕らはシートに深く体を沈める。これから起きることに思いを巡らせる。額や背中に冷たい汗を感じる。くだらないけど、必要なこと。決めたことなのだから…。
・日差しの中アスファルトに手をついて、知らない町の知らない交差点、蜃気楼の向こうで笑うカモメ、これら悉く全てが、私の瞼の裏にピンクの残像を残す。
「そう、胸の前で手を組んで」
「目を閉じる」
真っ青な画用紙をを引き裂くようにジェット機は飛ぶ。鐘の音、戦争の合図。ギアナ高地のある森に地獄は実在したのだ。渡り鳥たちは逃げるように北を目指した。冬が来る前にこの地の生き物はみんなきっと死んでしまう!父の遺影をそっと裏返す。悲劇のカップルは車ごと蜂の巣にされた。世界中の携帯電話がけたたましい悲鳴をあげ、最後に僕たちは砂浜に、あるいは病棟の廊下のリノリウムに、そっと耳を押し当て、血溜まりが広がっていくのを指に感じる。
「目を閉じて」
「轟音のさなか君は何を願った?」
・あんたのことなんて別に好きじゃないんだからっ!義理だからっ!あんたのことなんて全然心配じゃないんだからっ!あんたねぇ!ふんだ!別に…それくらいどうってことないわよっ!なによっ!あんたのことなんて何とも思ってないんだからねっ!いくじなし…!あんたのことなんて別に好きじゃないんだからっ!義理だからっ!あんたのことなんて全然心配じゃないんだからっ!あんたねぇ!ふんだ!別に…それくらいどうってことないわよっ!なによっ!あんたのことなんて何とも思ってないんだからねっ!いくじなし…!