仮面ライダーギーツ外伝 一歩IF:片脚の男   作:みなかみ

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16話 交差Ⅲ:いざゴールへ!

 

 仮面ライダーリバイス・真。五十嵐一輝の覚醒によって発現した、リバイスの真の姿。かつてのベイドとの戦いでも現れた姿であるが、一輝とバイスの意思が一つに宿り、その力も格段に増加していた。

「バイス!一緒に行くぜ!」『あいよ!』

 リバイス・真は走り出し、ブーストデッドマンの胸部を殴りつける。一見それは普通の打撃に見えた。が、拳が命中した瞬間、リバイス・真を覆っていたピンクと黒のエネルギーが拳に収束。より強力な衝撃波を放った。パンチと衝撃波の二段階攻撃にブーストデッドマンは耐えきれず、胸部の赤い装甲が砕け、校門まで吹き飛ばされた。

 その様子を見たマグナムデッドマンは、近接戦闘は不利と捉え、両腕のライフルで辺り一帯を撃ち込み、リバイス・真に弾丸を降り注がせる。これに対しリバイス・真は、右方向に地面を強く蹴り、二度目の衝撃波で加速、それを左右に何度も繰り返して、弾丸を全て避けた。そして、マグナムデッドマンに急接近し、左腕のライフルを二段階の後ろ回し蹴りでへし折った。

『よっしゃ!俺っちたちめっちゃ強くない!?』

「あたりまえだろ。俺とお前なら、リバイスは最強だ!」

 マグナムデッドマンは、このままだと不利であると判断したのか、倒れていたブーストデッドマンに、紫紺の弾丸を放った。弾丸に頭部を貫かれたブーストデッドマンは、全身が不格好に形状変化しながら起き上がり、マグナムデッドマンに飛び付いた。そして二体のデッドマンは合体し、上半身はそのままに、下半身はブーストデッドマンの装甲を身に纏った、マグナムブーストデッドマンへと変貌した。リバイス・真が付けた傷も、修復されている。

『BOOST&MAGNUM…!』

『あいつら合体しちゃったよーっ!』

「いや、むしろ一体になって都合がいい。援護する」

 マグナムブーストデッドマンは、地面を踏み付けて地割れを起こし、地中から吹き出た火炎を介して射撃。炎を帯びた弾丸がリバイス・真に迫る。

『RIFLE』

 ギーツがマグナムシューターをライフルモードに変形。正確無比な射撃で弾丸を弾き返す。そしてハンドガンモードに再び戻し、左腕のアーマードガンを展開。同時に弾丸を連続発射ながら前進。至近距離まで接近して、アーマードガンでの近接戦闘を行う。右腕で相手の銃を抱え込み、アーマードガンで頭部へ射撃。マグナムブーストデッドマンは顔を逸して避けたが、右手に持ったままのマグナムシューターで脇腹を撃ち込み、怯んだ所をブーストの加速とタイミングを合わせた蹴りで、上空まで押し上げた。

「決めろ!リバイス!」

「あぁ!」『あいよ!』

 リバイスは蹴り上げられたマグナムブーストデッドマンよりも高く跳び上がり、必殺キックの構えを取る。

『トゥルーレックス!ファイナルリバイスフィニッシュ!』

 リバイス・真のキックは、マグナムブーストデッドマンの胸部に炸裂。全身を纏うエネルギーが右足に集まり、波動となって何倍にもキックの威力を増す。その膨大な力はマグナムブーストデッドマンを貫き、リバイス・真は地面をえぐりながら着地する。

『よっしゃ!3!2!1!』

 二人は、最後のカウントを顔を上げながら言い放った。

『「0!」』

 リバイス・真がカウントを終えると、マグナムブーストデッドマンは、空中で爆発した。マグナムブーストデッドマンが撃破されると、悪魔軍団は指揮が下がったのか、校門の外へと撤退してゆく。それを見届けたリバイス・真とギーツは、変身を解除。リバイス・真は、一輝と実体化したバイスに分裂した。トゥルーレックスバイスタンプが、元の姿に戻ってゆく。

「へんっ!情けない奴らだな!」

「まぁ、今は学校を守れたからokだろ。おかえり、バイス!」

「一輝、ただいまぁ〜!」

 一輝とバイスは肩を組んで喜び合う。それを英寿は感慨深そうに眺めていた。

 日の出が、一時の安息を告げていた。

 

             *

 

 デザイアロワイヤル運営、デザイア神殿にて。

「ふざけるな。貴様にお膳立てなどされなくとも、簡単に人類など絶滅させられる…!」

 バリデロは杖をコラスの首元に押し当てる。ツムリとヒロミは、反抗するでもなく、その状況を物珍しそうに、愉悦の表情で眺めていた。コラスも、命の危機があるにも関わらず、余裕の笑みでバリデロに返してみせた。

「案ずるな、ビ〜ップ。本番はその後だよ」

「そうだバリデロ。今は楽しもう。マグナムとブーストはやられてしまったが…」

 イザンギは、籠の中で泣いていた幸四郎にギフスタンプをかざす。すると、幸四郎とギフスタンプは共鳴し、幸四郎はギフスタンプの中に取り込まれた。ギフスタンプは、紫色で、刺々しい新しい形に変形する。

「完成したぞ…ネオギフスタンプ…」

「その力…試してみてはどうだい?」

 コラスはイザンギに向けて五つのバックルを投げる。イザンギは振り返ること無く、そのバックルたちにネオギフスタンプを押印した。

『NINJA…!』『ZOMBIE…!』『BEAT…!』

『MONSTER…!』『JET&CANNON…!』

 実体化した五体のデッドマンは、雄々しく叫ぶ。

「あら、おじゃま虫さんが紛れ込んでるみたいね…」

 ツムリは爪を噛みながら空中の画面を指差す。浮世英寿や五十嵐一輝といった参加者の映像がそこでは流れていたが、エリアの端を疾走する赤いバイクの様子を、カメラが捉えていた。

『ギリギリまで近づけば、ブックゲートは繋がるか…』

 神山飛羽真の存在が、運営に感知された瞬間であった。

 

             *

 

 ひたすらディスプレイとにらめっこする狩崎。画面には『Loading…』と、ゲージが表示され、進捗は95%まで進んでいた。イザンギとバリデロに破壊されたベリリュンヌは、狩崎の研究室まで運ばれ、赤い壁を突破するための装置として転用される事となった。ベリリュンヌを動かすために必要な鍵は、システム制御の為のシャイニングホッパープログライズキー。そして、時空を超えるドライバー。先にプログライズキーの入手に成功したさくらと玉置は、狩崎と合流し、狩崎よりも険しい表情で、プログラムが完成する様子を見守っていた。

 数値は、96、98と上昇し、やがて『ALL CLEAR』の表記と共に、プログラムの構築が完了した。制御盤に挿し込まれていた複製型シャイニングホッパープログライズキーが黄金に光る。

「YES!プログラムはこれで完成だ…!」

「よっしゃあ!」

 玉置とさくらは、力強くハイタッチをする。

「あとは、大ちゃんたちを待つだけだね!」

 研究所には光が差し込み始めていて、いつの間にか夜が明けていたことを彼らに教える。

「おや、噂をすれば何とやらだね」

 狩崎がそう告げると、転がり込むように大二と花が研究室に入ってきた。二人はヘトヘトで、転んだ拍子に資料の山が崩れ二人が埋もれる。大二の右手にはしっかりとアルミケースが握られていた。

「大ちゃん!花!大丈夫!?」

「あ、ああ…」「なんとかね…」

 大二曰く、山奥の研究所…ショッカー基地跡地には、時空の歪みによって怪人たちがうじゃうじゃおり、対処に相当悩まされたとのこと。ショッカー基地跡地から遠く離れると実体を保てないようで消滅したが、怪人と戦いながら探しものをするのは、相当骨が折れたようだ。狩崎は上機嫌でアルミケースを受け取る。

「Thank you!大二、花!早速準備に取り掛かろうじゃないか…!」

 狩崎が開いたアルミケースには、時空を超えるドライバー・センチュリードライバーが収められている。

「準備はもう済んでいるよ。これで、all ok!」

 ベリリュンヌの制御盤にセンチュリードライバーを取り付けると、機械全体にセルリアンブルーのエネルギーが流動し、研究室の天井が大掛かりに開く。ベリリュンヌのパラボラアンテナは、遠く離れた赤い壁に向けられていた。

「先ずは試運転。一輝の携帯と通信できるか試してみるか…」

 パラボラアンテナの尖端にエネルギーが集まり、赤い壁に照射される。すかさず狩崎は手元の端末で、一輝のガンデフォンにコールをかけた。数秒のコールの後、一輝は電話に出た。

『狩──狩崎さん!?』

 電話先の一輝の周りには複数人いるようで、子供らしき声も聞こえた。通信こそ繋がったものの、電波は不安定で、狩崎を呼ぶ一輝の声にはノイズが混ざっていた。

「繋がった!」

 一輝の声を聞きつけた大二たちは、ワッと狩崎の元に集まる。

 

             *

 

 目標の12時間が過ぎ、なんとか学校の防衛に成功した。一晩中戦い続けた仮面ライダーたちの疲労は凄まじく、全員が寝室で休んでいた。布団の上で胡座をかいた一輝は、自身の身の上を語りだした。その背後ではしゃぎまわっているバイスを横目に見ながら。

 本当にうるさいなこの悪魔。

「俺の家では、悪魔も家族なんだよ。今までずっと、戦いのせいでバイスのこと、忘れちゃってたけどな」

「忘れてた…?」

 英寿はより神妙な面持ちで一輝の話に踏み込もうとする、一輝が続きを話そうと口を開くと、突然ジャケットの中のガンデフォンが震えた。外との通信は不可能のはずであったが、何が起こったのか。バイスと遊んでいた子どもたちも一輝を取り囲むように近づく。

「ウソ!?電話繋がったの!?すっげーじゃん!」

「狩崎さんだ…!」

 一輝はガンデフォンをスピーカーモードに切り替え、電話に出る。

「狩崎さん!?狩崎さん!?」

『繋がった!』

 電話の向こうから一輝の仲間らしい面々の歓喜の声が上がる。

「皆、聞いてくれ。イザンギとバリデロに、幸四郎が攫われた。狙いはギフの力だ…!」

『幸四郎を………兄ちゃん、今から俺たちもそっちに向かう。壁から脱出して、幸四郎を助ける方法を探そう』

「それはできない」

 周りの安堵の空気をばっさりと切ったのは、英寿だった。膝立ちになった英寿は、静寂の中話を続ける。

「このゲームをクリアしなければ、犠牲になった人たちは蘇らない」

「でも英寿。多分犠牲になった奴らは退場扱いだ。このままゲームを続けるのは、コラスの思う通り何じゃないか?」

 このゲームを乗るか降りるか。対立した意見に、教室の中の面々は口ごもる。デザイアロワイヤルをクリアしたとて、運営はこのゲームをノーゲームとして認めてくれるのか。デザグラそのものの真実が明るみになっていない今、運営を当てにするのは乗り気になれない。

「でも…子どもたちは助けないと」

 景和が女の子の頭を撫でながら呟く。電話先の人物たちは、デザイアロワイヤルの状況をよく知らないだけだ。彼らの一般人と家族を助けようとする行動は正しい。

「コラスが運営のドライバーを奪ったのがそもそもの原因だ…ゲームを進めれば、奪い返せるチャンスがあるかもしれない。そもそも、こんなことになったのは、俺の願いのせいでもあるしな」

 それでも俺はこのゲームに乗る。意外にも、吾妻道長は乗り気ではなく、立ち上がって黒板にもたれかかった。

「このままゲームを続けたって、あいつらの思うツボだ。外から出てぶっ潰す方が速い」

「でも、ツムリちゃんだっておかしかったし…運営が元々機能してないんじゃ…」

 祢音は英寿の側によって、ここに残る意志を示した。

「なぁ…一輝、俺たちはどうする…?」

「俺は…!」

『ok、そっちの事情は大方わかった』

 一輝がバイスに答えを伝える前に、電話先の狩崎と呼ばれていた男が割り込んできた。ハーフなのか、外国の訛りが混ざっている。

『こうしよう。私達は、一時間後に壁の中に突入する。これは君たちがゲームとやらをクリアするまでのタイムリミットだ。それを過ぎたら危険と見なして、我々が事態の収拾を図る』

 事態の収拾ね…あっちには、それをやってのけるほどの実力があるらしい。しかし、景和は狩崎の提案に反発した。

「じゃあ、それまでに子供たちはどうするんですか…!」

「方法ならあるよ」

 声を荒げる景和を止めたのは、神山飛羽真だった。教室の扉を開けた神山飛羽真は、また被害者を探しに走り回っていたようだ。ヘルメットを小脇に抱えている。その穏やかな声に、電話先の狩崎も思わず驚いたような反応を示す。

『Mr.神山!?何故あなたがここに……』

 この反応…神山飛羽真は、こいつらとどんな関係なんだ。ブックゲートと言い、謎だらけだな…

 電話先の声が、五十嵐大二に切り替わる。

『飛羽真さん。方法って?』

「ブックゲートを使う。エリアのギリギリで使えば、何とか外と繋げられた」

「なら決まりだな」

 英寿は、ブーストバックルを手に取った。

 

 

 校舎から出ると、既に壁が収縮を始めているのが確認できた。

「放棄されたバスだ。子供たちはこの中に」

 これも悪魔たちに襲われた人々が残したものか。神山飛羽真の呼びかけに、子供たちは素直に従って、バスに乗り込んでゆく。あの俺たちを排除しようとしていた青年も、やけに素直だった。そして、運転するのはもちろんこの男。

「なんで俺が…」

 吾妻道長だ。イライラしながらハンドルを握る吾妻道長を、景和がまぁまぁと抑える。子供たちを避難させるのがこの二人だ。この事態の対処を巡って、俺たちは、とある作戦を立てることとなった。ここら一帯の悪魔は俺たちが処分できたが、神山飛羽真によると、ゴールの周辺にはまだ軍勢が残っているらしい。子供たちを連れるには危険すぎる。よって、子供たちを避難させるべくエリアの際を目指す吾妻道長、景和のチームと、二手に別れてゴールを目指すチームに分かれることとなった。

「はい。最初のページを開けば、ゲートが繋がるよ」

 神山飛羽真は、バスの手すりを掴んでいた景和に、ブックゲートを渡した。

「子どもたちを頼んだ」

「…はい!」

 振り返り、神山飛羽真は軽トラックの運転席に着席した。荷台には、既に俺と祢音が待機している。先頭には、ブーストライカーに跨った、英寿と一輝。バイスは、一輝の中に思念体として収納できるらしい。バイクは二人乗りだから、致し方無し。文句を言っているようで、一輝が忙しなく対応していた。

「ゴールで会おう」

「ああ。出発だ」

 ブーストライカーの先導の元、バスとトラックが発進する。

 学校を少し離れると、神山飛羽真の言っていた通りだ。通りに悪魔が密集している。俺たちが悪魔を引き寄せている合間に、バスがエリアの端を目指し、子どもたちをブックゲートで脱出させる。それが確認できたら、一斉にゴールを目指す。作戦はこの通りだ。

 だがまずは、目の前の悪魔たちをどかさなければ。前に進めない。ブーストライカーとトラックに乗っていた俺たちは一斉に変身し、悪魔が作る波の中へ突入した。

「変身!」『「変身!」』

『BOOST!』『仮面ライダー!リバイ!バイス!リバイス!』

「変身!」「へ〜んしんっ!」

『BLAST!』『BEAT!』

「突っ込むよ!」

 神山飛羽真はハンドルから手を離さずに、そのまま直進する。それに合わせて、俺はトラックの運転席の上に立ち、足を一振り。ガス噴射による気流を操作して、悪魔を空中へ退ける。

 そこにブーストライカーに搭乗していた二人…いや三人か。後部席に座ったリバイがバイスを肩車している。リバイスは二人で一人の仮面ライダーであると同時に、一人で二人でもあるのか。とにかくリバイは辛そうだが。バイスが尻尾を巨大化させ放った薙ぎ払いで、一瞬だけ道が開けた。

 その一瞬の間にブーストライカーは加速し、悪魔が降り注ぐより速く波の隙間を駆け抜けた。ここからは別行動だ。

「祢音!」「うん!」

『BEAT STRIKE!』

 ナーゴが必殺技を発動すると共にビートアックスを掻き鳴らすと、地面から紫色の音量メーターが生じ、悪魔たちが押し上げられる。音量メーターに足を取られている内にトラックは進路を変え、交差点を右に回る。英寿たちとは別ルートで、俺たちもゴールを目指す。後ろ目に、バスが交差点をUターンしていくのが見えた。悪魔は俺たちに気を取られ、がむしゃらに追いかけてくる。作戦は成功のようだ。

 太腿のファンから斬撃性能のある風を放ち、悪魔の進軍を抑える。これじゃゾンビ映画だな。トラックは既に機能していない高速道路のETCを通り抜け、山岳地帯に入る。

 

 

 高速道路に入ってから、二十分が経過した。

「ゴールは…サッカースタジアム…!」

 ナーゴが見上げていた空には、虹色の柱が立っていた。つまりあそこが俺たちの目指すべきゴール。俺たちは山道を通過する迂回ルートだから、英寿たちよりも到着は遅い。だがその分、悪魔の数は少なかった。警戒を怠らなければ、俺たちもゴールに辿り着けそうだ。別に辿り着く必要もないのだが。

 高速道路はかなり荒れていて、隣接した崖から冷たい風が吹いている。ずっと戦い詰めだったからだろう、かなり疲れが溜まっていた。

「二人とも、休まなくて大丈夫?」

「平気」「全然大丈夫です!」

 ここで折れるわけにはいかない。決意を新たにトラックの後方に注意を払うと、地面にヒビが入り始めているのが見えた。まさか…

「来るぞ!」

 叫ぶと同時に地面が割れ、一体のデッドマンが這いずり出てきた。黄色と青の装甲。不格好に肥大した腕、鋭い牙。

「今度はモンスター!?」

 モンスターデッドマンは、両拳を並行に揃えると、一気に腕を伸ばし、トラック向けて強力なパンチを放ってきた。腕が伸縮に伴って、拳はさらに肥大化する。神山飛羽真がハンドルを切って間一髪で避けられたが、当たればタダで済まないどころじゃない。パンチを外したモンスターデッドマンは、進路を示す看板に腕を巻き付け、縮めてターザンロープの要領で荷台に跳び乗ろうと迫る。

「くっ…!」

『SET FEVER!』『HIT!MONSTER!』

 何とかフィーバースロットでモンスターを引き当てられた俺は、荷台に接近したモンスターデッドマンに対抗して、グローブを巨大化させたパンチを放った。モンスターデッドマンも巨大な拳でパンチを放ち、そのままの状態で拮抗する。しかし、上空のモンスターデッドマンのほうが位置エネルギーがある分かは有利で、俺は次第に押し返される。

「奏斗!」

 膝の曲がりそうになった俺を、ナーゴが支えてくれた。いける…これなら…!

『GOLDEN FEVER VICTORY!』

「「だあああああっ!」」

 俺たちはギリギリパワー勝負に打ち勝ち、モンスターデッドマンを跳ね返す。モンスターデッドマンは地面に投げ出され、大きなダメージを負ったようだ。すぐに追撃は来ない。今のうちに体制を立て直して…

『TACTICAL BLIZZARD…!』

 トラックが急停止した。停止したと言うより、動けなくなったという方が正しいのかもしれない。タイヤが完全に凍っていた。タイヤを包む氷は地面を伝い、正面の道路まで伸びている。

「二体目…!」

 トラックの前方に立っていたのは、体とギターが一体化したデッドマンだった。ビートデッドマン……画面が丸形スピーカーそのものになっていて、浮き上がった牙だけが不気味に擦れる。

「挟まれた…」

 後方では、モンスターデッドマンが立ち上がり、ゆっくりとこちらに近づいていた。前はビート、後ろはモンスター。左右は切り立つ山に崖。逃げ道がない。神山飛羽真は必死にアクセルペダルを踏んでいるが、改善される様子はなかった。

「ここは俺が引き付ける」

「ダメ!危なすぎるよ!」

「でも、」

「伏せろ!」

 俺たちが口論になっている間に、二体からの攻撃が迫っていた。神山飛羽真は注意を促したが、時すでに遅し。モンスターの拳は荷台を粉々にし、ビートデッドマンの腹部から放たれた斬撃は先頭を真っ二つに斬り裂いた。

 俺たちは爆風に吹き飛ばされ、奈落の底へ落ちて行った。

『MISSION FAILED…』

 

             *

 

 縮まるエリアと、接近するバス。エリアの際に辿り着くのは、案外容易いミッションかに思えた。エリアが近づく事に、子どもたちの不安は上がってく。景和は手すりを掴んだまま振り返って、優しく声をかけた。

「大丈夫だよ、俺たちが絶対守るから。ね、道長さん」

「ふんっ…ガキの相手は苦手なんだよ…」

 愚痴をこぼしながらも、ハンドルからしっかり手を離さない道長。彼の目が、サイドミラーに映り込んだ"何か"を捉えた。

(人間の手…?いや、あれは…)

 バスの側面に張り付いていた、無数の手。その特性に道長は見覚えがあった。左手で景和を乱暴に引き寄せ、自分の足元を無理やり見せる。

「おい、右がアクセル、左がブレーキだ」

「え?何言ってのっ、」

「いいから座れ!」

 道長は立ち上がって強引に景和を運転席に座らせる。

「ハンドルから手ぇ離すなよ!」

「えええっ!免許持ってないんだけど!?」

「変身!」

 道長はバスのドアを無理やり開き、外に跳び出した。同時に、ゾンビの装甲が装着され、仮面ライダーバッファに変身。

『ZOMBIE!』

 ゾンビブレイカーを地面に突き立て、火花を散らしながら着地した。運転席の景和は始めての運転に戸惑いながらも、しっかり前を見て進んでいる。その進み続けるバスの後方に、びっちりと手が張り付く。バッファはゾンビブレイカーのポンプを肩で引く。

『POISON CHARGE!』『TACTICAL BREAK!』

「姿見せやがれ!」

 ゾンビブレイカーから生じた毒は、無数の手に飛散し、バスから手を剥がす。溶けた手達は一度完全に溶け液状となり、一体に集合。ゾンビデッドマンとなった。右腕はそのままチェーンソーとなり、左腕と胴体は完全に繋がっておらず千切れかけていて、足元はドロドロに溶け身長が定まらない。

「やっぱりな…!」

 それでもバッファは臆せず立ち向かう。ゾンビデッドマンが地面から毒手を次々生やすも、前進を止めない。毒手を千切っては投げ、ゾンビブレイカーで薙ぎ払い、ゾンビデッドマンを一刀両断。したのだったが、傷口から毒手が生じ、覆い隠すように塞いでしまった。ゾンビデッドマンは右腕のチェーンソーを振り回す。チェーンソーの射程外まで一度後退したバッファだったが、ゾンビデッドマンは右腕の肩関節を途中から更に伸ばし、射程を伸ばしてバッファにチェーンソーを命中させた。

「なんでもありだな…ちっ!」

 バッファの背後には、エリアの赤い壁が迫っていた。ゾンビデッドマンの足止めをしていたつもりが、逆に足止めされていたのだ。バッファは逃げおおせようと地面を蹴るが、エリアの収縮のほうが速く、焼かれるような感覚がバッファを襲った。

『MISSION FAILED…』

 

 

 バイクの運転免許は持っているが、四輪で、しかも大型車の免許を景和は所持していない。バスの運転席の周りには、通常の車両以上に、操作できるボタンは多く、危うくパニックになる所であった。それでも彼が冷静でいられたのは、子どもたちの命を背負っているという強い責任感があったからだろう。

 他のメンバーと別れ、学校から遠く離れた、かつて訪れたレイボーブリッジ。一般人ライダーを祢音と共に撒いた場所である。もう一般人ライダーの姿はなく、白い乗用車が放置されたのみである。バスの前輪がレイボーブリッジに乗ると、ポケットに入れていたブックゲートが白く光り始めた。

「もう脱出できるってこと?」

 お人好しの景和であるが、闇雲に人を信じている訳ではない。助けたいと思う人は助けるし、もちろんそうは思えない人間もいる。そんな彼だが、神山飛羽真の事は疑いの余地ゼロだと判断していた。彼の言葉に、人を信じさせる不思議な魔法がかかっているように。

 景和は道長に教えられた通りにブレーキペダルを踏み、バスを停止させる。バッファがこじ開けだドアはそのままだった。彼はそこから降りると、ブックゲートのページを開いた。

『OPEN THE GATE』

 レイボーブリッジの中央に本を模したゲートか出現する。

「みんな!シートベルト外して!一人ずつ入るんだ」

 子どもたちは、想像以上に大人しく従い、一人ずつゲートに入ってゆく。飛羽真によれば、ゲートの先はブルーバードに繋がっているそうだ。奏斗は半信半疑であったが、景和は飛羽真を信用していた。

「君で最後だよ?」

「あの…」

 一人、立ち止まったのは、学ランの青年だった。

「この事…言うなってコラスに脅されてたんです。でも…」

 青年は、躊躇うように、衝撃の事実を景和に伝えた。景和は、青年からのカミングアウトにしっかりと頷いた。

「わかった…とにかく君は逃げて」

 景和は青年をブックゲートの中に押し込む。青年が通過したのを確認すると、ゲートは閉じて消えた。

「速く道長さんの所へ…」

 そう呟く景和の足元に伸びた影。そこから刃が飛び出していることを、一瞬の内に景和は気付いた。

「っ!」

 体を仰け反らせ、心臓に向かっていた刃の一突きを避ける。右足で刃を蹴ると、刃はレイボーブリッジの影に移動し、その姿を現した。全身黒の装束に、不釣り合いな緑のマフラー。ニンジャデッドマンである。忍装束の隙間からは歯車が剥き出しになり、噛み合わない歯車はギチギチと錆びた音を立てていた。そしてニンジャデュアラーに似た刀を装備しており、これは漆黒に染まっている。

 だが、刃の一撃を避けられた代償か、それた刃の軌道はブックゲートを貫いており、もう二度と使えないことを見た目の通り表していた。

 ニンジャデッドマンは、これ以上興味が無いと言うように地面に潜降すると、そのまま姿をくらましてしまった。

「あっ、待て!」

 ニンジャデッドマンが離脱した答えは、すぐにわかった。景和の背後に、無慈悲にも赤い壁が迫っている。

『MISSION FAILED…』

 

             *

 

 墨田奏斗・鞍馬祢音・LOOSE。吾妻道長・LOOSE。桜井景和・LOOSE。その報告が届く度に、英寿は何を思ったのか。一つ確かなのは、散っていった仲間の為にも、必ずゴールしなければならない。その決意の元に、彼はブーストライカーを走らせた。

「みんな…俺たちが、絶対に助けに行く!」

 まるで"狙ったかのように"、ギーツとリバイスの元に敵襲は全く無く、二人は変身解除し、ゴールを目指すことに集中した。

『ねぇ!あれゴールじゃない!?』

 バイスの意志が宿ったレックスバイスタンプがはしゃぐ。おあつらえ向きと言うべきか、スタート位置と同じ様に、ポップなデザインの黄色いゲートが設置されていた。

 ブーストライカーがゴールゲートを抜けて停止する。

「おめでと〜!」

 ブーストライカーを降りた二人の前に、嘲るようにツムリが現れる。その後ろには、マントを羽織ったヒロミに、赤い仮面を被ったゲームマスター、コラスの姿もあった。

「一回戦を突破できたのは、あなたたちだけよ?ざんね〜ん!」

「生憎だが、世界は終わらせない」

 英寿の毅然たる態度に、ヒロミは枯れた笑いをこぼす。

「強がるな、浮世英寿。最終戦に備えるといい。もう、救える人間はいないのだからな……」

「ヒロミさん!どうしちゃったんですか!?」

 一輝の呼びかけを無視したヒロミ。両手を広げ、空中にモニターを表示させた。その画面には、暗いホールのような空間に、所狭しと一般人が捕らえられていた。皆、不安そうに身を寄せ合っている。そこには、後ろ手を紐で縛られていたヒロミとツムリの姿もあった。

 人々を取り囲んでいたのは、ギフジュニア等の下級悪魔だったが、人々を処刑するにはそれで十分だった。

『ヒロミっちが、二人?』

「いや、ツムリもいる」

 捕らえられたヒロミとツムリは、こちらと中継が繋がっていると気付いたのか、這いつくばりながら画面に近付き、必死に呼びかけてきた。

『一輝!悪魔マラソンゲームをクリアするな!ここにいる人は全員人質だ!』

『今すぐ戦いを辞めてください!』

「なっ…!」

 司会のヒロミは、不愉快な表情で、捕らえられたヒロミを見つめる。

「あいつは五十嵐幸四郎の身代わりだ。そこにいるのは、一般人ライダーの親族、友人、まぁ大切な人というやつだ。一般人ライダー共には、ゲームをクリアしなければ、こいつらを殺すと伝えておいた。思慮の足らんガキどもには伝わらなかったらしいがな」

 ヒロミの説明に、二人は押し黙る。勝利を確信したヒロミとツムリは、高笑いを上げた。画面の中の部屋に、うっすら光が射し込む。

「でも、だぁれも一回戦をクリアできなかったわね〜人を殺せず、自分も死に、大切な人すら助けられない。哀れだわぁ〜」

 部屋を照らす光が、次第に強くなっていく。人質の処刑の時間が近づいていた。そして、黙ったままの英寿は、顔を上げて一言呟いた。

「化かされたな」

 薄暗い部屋に、一気に光が満ちた。壁が破壊されたのである。その壁を破壊したのは、脱落したはずの仮面ライダーバッファだった。突進でギフジュニアをぶっ飛ばし、壁に叩きつける。次いで、仮面ライダーライブを始めに、タイクーン、ナーゴ、ダパーンも部屋の中に突入し、ギフジュニアを一掃した。最後に、銃を構えたブルーバードの隊員達が人質を救出する。

「なんで…脱落したんじゃないの?」

『一般人が、願いを叶えるなんて不確かな理由で戦うはずがない。おかしいと思ってたよ』

『あの子の言ったとおりだね、本当にここに人質がいた』

 ギフジュニアを踏み潰したライブが次の標的に照準を合わせる。タイクーンも、青年の情報が正確であったことに、安堵の声色だ。

「一般人が人質なのはとっくに解ってた。だから俺達は三手に別れて、一度外に脱出したんだ。外の力を借りてな」

「外の力ぁ…?」

 

 

「なら決まりだな」

 ブーストバックルを手に立ち上がった英寿は、作戦を立案する。

「人質を助けに行くぞ」

 英寿の提案に、飛羽真以外のメンバーが驚く。一輝は腕を組んで、英寿の話に聞き入った。

「一般人の言動に…躊躇いのある攻撃。どこかに人質が捕まっている可能性がある」

「確かに…みんな必死だった」

「なら、もう外の仲間たちが動いているはずだ。運営に悟られないように、ブックゲートで脱出しよう」

 こうして、ブックゲートを利用した、景和達による、やられたフリ作戦が敢行された。脱落したかに思われた仮面ライダー達は、寸前で出現したブックゲートに救出されていたのだ。

 

 

 人質が捕らえられていたのは、かつて旅館として使われていた、山奥の廃墟だった。救出隊を先導した五十嵐大二は、被害者が装甲車に保護されてゆくのを見届けると、ヒロミを保護した隊員に変わって、ヒロミに肩を貸した。ツムリは鞍馬祢音に手を引かれていた。

「すまないな…」

「俺たちの力だけじゃ無理でした。桜井景和さん達の協力に……あなたたちも、ありがとうございました」

 大二が頭を下げた先には、青い革のコートを着た青年と、白いローブの男の姿もあった。白いローブの男は涼しい顔をしていたが、青年は大急ぎでここに来たのか間に合わなかったようで、息をしきりに切らしていた。

「いえいえ、困り事があれば、いつでも言ってください。それが僕たちの使命ですから」

 仮面ライダーブレイズ・新堂倫太郎と、仮面ライダー最光・ユーリの二人である。ユーリは腕を組んだまま、倫太郎に向き直った。

「それよりいいのか?飛羽真のやつ、またエリア内に向かったぞ」

「えっ!?火炎剣烈火は…?」

「持たずに」

「持たずに…!?飛羽真君…」

 倫太郎は、がっくりと肩を落とす。ヒロミを装甲車に乗せた大二が、まぁまぁと宥めた。

「これから俺たちも突入ですから、火炎剣烈火は、俺が持って行きます」

 

 

 仮面ライダー達の運営を欺く為の作戦は見事成功し、人質は無事に開放された。ツムリの偽物は、悔しそうに爪を噛む。

「…面白いじゃないか…!」

 暫らく状況を静観していたコラスは、大袈裟に手を叩く。仮面を外してハットに被り直し、ヒロミとツムリの偽物の前に一歩出る。

「次の最終戦、仮面ライダー絶滅ゲーム!その、シ〜ドでの参戦プレイヤーを紹介しよう!轟!戒真!」

 コラスが宣言すると、どこからともなく走ってきたリムジンがコラスの横に停車する。そこから降りてきたオールバックの男こそ、轟戒真。元プロボクサーであり、かつてのデザイアグランプリで何度もデザ神の座を勝ち取ってきた人間の一人である。

「お前が浮世英寿か…お前の不敗神話は、ここで終わる」

 轟戒真は、革のジャケットからデザイアドライバーを取り出し装着すると、偽ツムリから黄土色のミッションボックスを二個受け取った。それを乱雑に開け、二つのバックルを手にする。一つは赤色のレバーが目立つパワードビルダーバックル。もう一つは、三つの小型バックルが収納されたギガントコンテナだった。

『SET WARNING!』

 それらをデザイアドライバーに装填した轟戒真は両手を交差させ、レバーをワンクリック開き、力強く押し込んだ。

「変身!」

『WOULD YOU LIKE A CUSTOM SELECTION…!』

 彼の変身した仮面ライダーシーカーは、黄色い角に黒い鹿の骸骨の、ヘラジカの仮面ライダー。建設途中の建物や機材を彷彿とさせる装甲に身を包み、複眼は赤く光っていた。

「デザ神となるのは、この俺だ…!」

 

           DRルール

 

  一般人ライダーは、別の仮面ライダーを倒せなければ、

 

          大切な誰かを失う。




次回:ギーツ×リバイス

『仮面ライダー絶滅ゲーム!スタートぉ!』

17話 交差Ⅳ:集え!戦士たちよ!
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