「デザ神となるのはこの俺だ…!」
仮面ライダーシーカー・パワードビルダーフォームは、コンテナから赤色の小型バックルをビルダーバックルに装填し、レバーを引く。
『GIGANT SWORD!』
背部の赤いコンテナより、工具を模した大剣・ギガントソードが装備され、シーカーは英寿と一輝にそれを振るう。横一閃の攻撃をそれぞれ左右に転がって避けた二人は、マグナムフォームと、レックスゲノムに変身した。
「変身!」「変身!」
『MAGNUM!』『仮面ライダー!リバイ!バイス!リバイス!』
ギーツはマグナムシューターを、リバイとバイスはそれぞれオーインバスターとガンデフォンから、シーカーを挟み打つ様に狙い撃つ。シーカーはその銃撃をギガントソードを巧みに扱って弾き落とし、空中に刃を振るう。すると刃から鉄骨が組み上がり、斬撃の形を成してギーツとリバイスに襲いかかる。パワードビルダーは"建造"の力を宿したバックル。攻撃に転用できる建築を即座にこなすのは容易であった。特に、轟戒真ほどの男となれば。
ギガントソードをリバイスの足元に投擲し足を止めると、胸部のアームを展開。ギーツのアーマードガンによる連続射撃を防御しつつ、小型バックルを紺のものに取り替えた。
『GIGANT HAMMER!』
次に装備したのは、体躯とほぼ同等のサイズを誇る紺の巨大ハンマー・ギガントハンマー。地面にギガントハンマーを打ち下ろすと、シーカーのクレストが刻印された壁が即座に建設され、ライダー達の接近を阻む。ギーツはこのままでは不利と判断したのか、マグナムをフィーバースロットバックルに差し替え、スロットを回しながら壁を飛び越える。同時に、リバイは足を、バイスは尻尾の力を解き放ち、壁を破壊。シーカーに迫る。
『HIT!BLAST!』
ギーツが引き当てたのはブラストバックル。本来であらば脚に装備することで真価を発揮するバックルだが、ギーツに使いこなせないバックルは存在しない。ガス噴射をさせながらシーカーにパンチを繰り出す。
シーカーはその攻撃にすら対応した。ハンマーを再度打ち下ろし、真下に足場を建造。自身を数段上へと持ち上げる。そしてギーツに高さを変えた事による奇襲を行い、横からハンマーを直撃させた。ギーツは器用にガス噴射を行い、両腕のアーマーでガード。背部からも噴射し、ダメージを最小限にして着地した。
ハンマーを大きく振り抜き、重心の偏っていたシーカーの足元が突如ぐらつき、シーカーは姿勢を崩した。バイスが尻尾の一撃で足場の根本を破壊したのである。その間リバイが強靭な足で一気に壁を駆け上がり、蹴りを放つ…かと思われた。
『スタンプバイ!必殺承認!』
ギーツと同様にハンマーでリバイを薙ぎ払おうとしたシーカー。発達した筋肉による蹴りを行うものかと思われたが、リバイはそれを逆手に取り、オーインバスターにレックスバイスタンプを押印。
『Here We Go!Here We Go!』
「いっけーっ!一輝!」
足を元の大きさに収縮し、横に過ぎ去っていくハンマーの軌道をスライディングで避け、シーカーの懐に潜り込んだ。
『レックス!スタンピングストライク!』
ゼロ距離でオーインバスターによる必殺の銃撃を行った。オーインバスターの銃口からティラノサウルスの頭蓋骨を模したエネルギー弾が発射。シーカーに直接噛みつく。が、その刹那にあえてシーカーはギガントハンマーを手放し、一歩引いて足場から飛び降りる。この一瞬で、シーカーに新たな武装をさせる時間を与えてしまった。
『GIGANT BLASTER!』
シーカーは落下しながらギガントブラスターを構え、自身に迫るティラノサウルスの頭蓋骨にセメントの様な液体を噴射。その液体は空中で速乾し、頭蓋骨の一撃を防いだ。
「悪いな、お前達とは歴が違う…!」
シーカーは一度建造物を全て崩し、自身のギガントブラスターの銃口に集約させる。これにより辺りの障害物はゼロになり、三人のライダーはギガントブラスターの射程圏内に入ってしまった。
『GIGANT STRIKE!』
ギガントブラスターにより、鉄骨等の建材が纏わされたビームが放射させる。これをギーツらが受けてしまう直前、神山飛羽真に、後部席にツムリを乗せたバイクが割って入った。
「ツムリさん!」
「はい!転送!」
ツムリが手元の端末を力強く叩くと、ライダー達含め五人がデザイアエリア内に転送された。シーカーの放ったビームはただ空を切り、地面に弱く炸裂したのみだった。
「逃げたか…」
シーカーは構えたままのギガントブラスターを下ろした。
デザイアエリア内に何とか離脱できた英寿は、一人サロンに隠された施設を探していた。普段は訪れる必要のないバックヤード。ここにお目当ての人物が隔離されていると、彼は察していた。
「ここか」
バックヤードの最奥に位置していたのは、ただの壁。プレイヤーに配られるデザイアエリア内マップには記載のない、行き止まりかと思われるこの場所に、隠し部屋がある。英寿はスパイダーフォン・スパイダーモードを、壁に設置された配電線に噛みつかせる。その不自然に置かれた配電線も、隠されていた鍵代わりの装置だった。スパイダーフォンが配電線にハッキングし、何もなかったはずの壁が多がりな仕掛けと共にずれ、入口となった。
その先は何もなくだだっ広いだけの部屋だったが、中央にニラムとサマスが拘束されていた。周りには赤いバリアが貼られ、脱出は不可能となっている。
「ああ!やっと来てくれましたか!」
白い立方体のイスに座っていたニラムが、高い声で立ち上がる。英寿はマグナムシューターでバリアを破壊し、二人を開放した。
「不思議だな。ゲームマスターのコラスよりも、プロデューサーの方が地位が高いと思っていたが」
「ここで私が出しゃばるのはリアルでない、と判断したまですよ」
ニラムは崩さぬ笑顔で英寿に牽制する。
英寿を通り越し、ニラムはサロンに踏み入りながら、やぁやぁと一輝らをもてなす。
「お二方!よく集まってくださいました!」
「え!何このイケメンの人!」
「おい失礼だぞ」
初対面でいきなり指をさすバイスを抑える一輝。特にニラムは意に介していないようだが、丁寧に礼をする。
「間もなく、デザイアロワイヤルの最終戦が始まってしまいます。あなたたちリバイスをこちらの不祥事に巻き込んでしまったこと、申し訳ない」
「いやいや、そんな。俺たちも、イザンギとバリデロから幸四郎を取り返さないと……これは俺たちの問題でもあるんです」
一輝がフォローすると、ニラムはあっさり頭を上げ、本題に入る。形式的な謝罪だけでも済ませたというのだろうか。
「今回の件は、我々運営が使用するドライバー・ヴィジョンドライバーを奪われてしまったことに原因があります。それを取り返すことも第一ですが…あなたたちにはデザイアロワイヤルにそのまま参加して頂いて、コラスの気を引いてもらいたいのです」
「構わないが、条件がある」
英寿はニラムと距離を詰めて、要求を述べた。
「デザイアロワイヤルで犠牲になった人を復活させろ。お前たちなら、それくらいできるだろ?」
「……それはあなたたちがゲームをクリアできたらの話。フェアなトレードと行きましょう」
英寿とニラムの間に火花が散る。デザグラの秘密を探っている英寿にとって、プロデューサー程の地位の者に直接探りを入れられるのは、なかなか無いチャンスでもあった。ニラムも英寿の眼光に察していたのか、すぐに話を進めた。
「ヴィジョンドライバーはコラスが持っているはず。私が捜索します。それと……あなたは何故ここにいる?その様子だと、まともに戦うこともできないだろうに」
ニラムの視線の先には、カウンター席に座っていた飛羽真の姿があった。飛羽真は座ったままくるりと振り返る。ニラムの表情は、一輝と話す時の張り付いたような笑顔から一転し、明らかに攻撃的なものに変わっていた。デザイアロワイヤルに招待されていないはずの男が介入するという事実は、彼に取ってのリアルでは無かったのだろう。そんなニラムの心情を察した飛羽真は、正直に返した。
「かもしれないね。でも、目の前の人を助けたいことに、理由がいるかな?」
二人の間に沈黙が流れる。その沈黙が終わったのは、別の要因だった。突如、バイスの体が粒子となって消滅し始めたのである。バイスは、ハイテンションな何時もの調子ではなく、案外落ち着き払っていた。元から、この様になるとわかっていたようである。
「バイス…!」
「あー…俺っちは元々、一輝のおかげで奇跡的に復活しただけなんだよ…だから、そのボーナスタイムも、終わりってことかもな…」
俯くバイスの手を、一輝は必死に握った。
「待ってくれよ……俺はまたお前のことを、忘れたくない…!」
ここでバイスが消滅してしまえば、一輝はまたしても弱体化した状態に戻ってしまう。それだけではない、相棒とのかけがえのない思い出は消え、家族はまた気遣ったような態度を取るようになるだろう。せっかくまた会えたのに、と一輝は震えた声を出した。
「…まだ時間はある。デザイアドライバーを使うんだ」
「それならもう用意してありますよ…サマス」
英寿と考えは同じだったニラムは、サロンに入室したサマスに人差し指で指示した。既に彼女の両手には、二つのミッションボックスがあった。一輝とバイスはそれを受け取り、蓋を取り払う。彼ら専用のIDコアとデザイアドライバーがそこにはあり、二人は顔を見合わせる。そして、IDコアを装填し、腰に装着した。
『ENTRY』
デザイアドライバーが装着されると、バイスから溢れ出ていた青い粒子がまた体に戻り、消滅が阻止された。
「うおっ!よっしゃ!これでもう一頑張り行けそうだぜ!」
「それなら、これも使ってください」
今度はツムリが、二人にピンクのミッションボックスを差し出す。そのミッションボックスの中には、ビートバックルとモンスターバックルが入っていた。これで、最終戦に臨むことができる。
「よし…幸四郎を取り返しに行くぞ!」
勇みサロンから出発する一輝たち。飛羽真もその後を追おうとするも、ニラムが間に入って止めた。
「あなたはここで見ていてください。戦う力がなければ、足手まといになるだけだ」
彼は、飛羽真にデザイアドライバーを用意する気は毛頭ないようだった。
*
占拠されたデザイア神殿。その中で、轟戒真とイザンギ、バリデロが邂逅していた。轟戒真は幾度とないジャマトとの闘いからか、彼ら異星人の存在や見た目に驚いていないようだった。
「ギフの力を、貴様にも分け与えてやろう」
イザンギが轟戒真にネオギフスタンプを押印する。人を贄にギフテリアンを生み出す能力は消えているようだが、轟戒真の血や細胞に至るまで、ギフの力がみなぎった。
「これでお前も、我々と同等の力を手に入れた」
「一緒にするな。最強は俺だ」
轟戒真の言動が気に触れたバリデロは、杖に火を灯した。
「最強だと…?下等生物の分際で、よくそんな口が叩けたものだ」
「お待たせしましたぁ〜」
一触即発の二人。デザイア神殿に偽ツムリが現れたことで、一度それは収まった。ツムリは三人の前に立つと、赤色のデザイアカードを手渡す。
「デザイアロワイヤル最終戦は、仮面ライダー絶滅ゲーム。迎え撃つ仮面ライダーを全員殺せばゲームクリアよ。さぁ、誰がデザ神になるのかしら〜?」
三人はそれぞれ、デザイアカードに自身の願いを記載した。イザンギは『宇宙の全てを知る力』、バリデロは『宇宙の全てを破壊する力』、そして轟戒真は『父が独裁者である世界』を願った。
轟戒真の父、轟栄一は政治家である。彼自身だけではなく、その息子、娘も政治家として那花しい功績を残してきた。それは正しく国の主軸とも言える一家であり、実質的な行政の動きは彼らが握っていると言っても過言では無い。その一家で、轟戒真だけが異質な存在だった。優秀な兄姉から背き、プロの格闘家として、チャンピオンにまで登り詰めるほど努力を重ねた。トレーニングをしている間は、家柄や家族の冷たい目を忘れる事ができる。格闘家は、轟戒真の天職だと、世間は信じて止まなかった。
だが、その毎日はそう長く続かなかった。轟戒真は、暴力事件の主犯格として、格闘技界から追放される。轟戒真の正々堂々としたファイティングスタイルから、冤罪であると擁護する意見も多かったが、轟戒真は格闘技界を去る。この事件は、父である轟栄一が仕組んだものであったからだ。暴力事件を捏造し、息子に罪を被せ、逃げ場を無くすように仕向けたのも彼である。そして、"でっち上げ"の暴力事件を自身の権力で隠蔽した彼は、轟戒真に一方的に恩を売ったのだった。
そこから、轟戒真の真の戦いの日々が始まった。仮面ライダーシーカーとして、デザイアグランプリで父の願いを叶えることを強要されたのである。暴力事件が冤罪であることを轟戒真は知っていたが、彼は逆らわずに父の願いを叶え続けた。このようにして、轟栄一は現在の地位と名声をほしいままにしたのである。
人質を救出したデザイアグランプリの仮面ライダーたち。コラスを欺くことに成功し、一仕事終えた道長は、赤い壁へ向かおうとバイクを走らせた大二を目で追う。
「俺は行くぞ。お前らはどうする?」
このデザイアロワイヤルを終わらせるという決断は、道長にとって死を意味する。彼は奏斗が願った世界の影響で一時的に蘇っただけに過ぎない。コラスが運営の指揮権を失えば、デザイアグランプリの運営は、コラスの失態を帳消しにかかるだろう。デザイアロワイヤルの犠牲者を蘇らせ、デザイアグランプリの犠牲者は再度消滅させるように。
「いいの?道長さん、これで消えちゃうかもしれないのに」
「あ?良く覚えとけ、ゾンビってのは、死んでからが本番なんだよ」
道長は景和の返事を待たずに歩き始めた。その後ろを、景和と祢音がついていった。叶えたい願い、世界どうこうではなく、純粋に世界を守るために。
そして墨田奏斗は、三人とは反対方向に進路を定めた。
*
サッカースタジアムのビジョンに、偽ヒロミの姿が映っている。彼はまた大袈裟に最終戦・仮面ライダー絶滅ゲームのルールを解説していた。仮面ライダー絶滅ゲームの大元のルールはたった一つ。殺すか、殺されるか。
コートに降り立った英寿、一輝、バイスは、並んで立つ轟戒真、バリデロ、イザンギを目にする。幸四郎の姿がないことを確認した一輝は、イザンギを強く睨む。
「幸四郎をどこにやった…!」
イザンギが、醜悪な瞳で一輝を見下し、ネオギフスタンプをちらつかせる。
「あぁ…利用価値が、ないことも無かったな」
一輝はそれがすぐに幸四郎であると理解した。
「バイス、幸四郎を取り返すぞ…!」
「おうよ…俺っちも、沸いてきたぜ…!」
轟戒真は余裕綽々の様子で、英寿はしっかりと眼前の相手を見据えている。
「頂点に立つのは俺だ…!」
「勝つのは俺だ。一輝、バイス、決着を付けるぞ」
一輝とバイスは頷いて反応すると、ビートとモンスターのバックルをデザイアドライバーに装填した。英寿もまた、コマンドツインバックルを差し込む。轟戒真もパワードビルダーバックルとギガントコンテナバックルを構えて、戦いに備えた。
『SET』『SET WARNING!』
「変身!」「「変身!」」「変身…!」
『GRATE!』『BEAT!』『MONSTER!』
『WOULD YOU LIKE A CUSTOM SELECTION…!』
「二人とも、良く似合ってる」
仮面ライダーギーツ・レイジングフォームは、仮面ライダーリバイ・ビートフォームと、仮面ライダーバイス・モンスターフォームを見ながら呟く。それに被せるように、画面内のヒロミが叫んだ。
『デザ神vsデザ神!勝つのはどちらか!?仮面ライダー絶滅ゲーム!スタートぉ!』
『Ready?Fight!』
縮み続けた壁は、スタジアムと周囲半径五百メートルを囲うように動きを止めた。五十嵐大二と五十嵐さくらは、その壁の前に立ち、スタジアムを見上げる。傍らには、花と玉置の姿もあった。
「一輝兄があの壁の中に!」
「もう少しの辛抱だ…持ちこたえてくれ…!」
『ベリリュンヌ、準備完了だ。そっちもokかい?』
大二のガンデフォンに狩崎から通信が届き、ベリリュンヌから放射された青い光が、より一層強くなった。
「勿論です!今すぐ俺たちを壁の中に…」
「おい、俺たちのこと忘れんてんだろ」
デザイアグランプリの仮面ライダーたち、吾妻道長、桜井景和、鞍馬祢音も合流する。そして、別方向の階段から、もう一人仲間がやって来た。
「俺もな。父ちゃんを置いてくなよ」
「え!?お父さんも行くの?」
「当然だ!息子のピンチに、助けに行かない父親がいるか?」
五十嵐元太。彼は既にデストリームドライバーを装着していて、準備万端である。彼も、息子たちのピンチに居ても立ってもいられず、戦いの地に馳せ参じた。
彼らは赤い壁に再び向き合い、ドライバーを装着する。
『ツーサイドライバー!』『リベラドライバー!』
『ウィークエンドライバー!』『デモンズドライバー!』
『バット!』『コブラ!』『クイーンビー!』
『クワガタ!』『ヘラクレス!』
『『『SET』』』
大二はバットバイスタンプをツーサイドライバーに押印、装填後ライブガンに変型。さくらはコブラバイスタンプをリベラドライバーに、花はクイーンビーバイスタンプをウィークエンドライバーにセット。玉置はクワガタバイスタンプをデモンズドライバーの朱肉に押印し、五十嵐元太も同様の動作をヘラクレスバイスタンプとデストリームドライバーで行った。そして、景和はニンジャを、祢音はビートを、道長はゾンビをデザイアドライバーに装填し、変身の構えを取る。
「「「「「「「「変身!」」」」」」」」
『バーサスアップ!Precious!Trust us!Justis!バット!仮面ライダーライブ!』
『リベラルアップ!Ah!Going my way!仮面ライダー!蛇!蛇!蛇!ジャンヌ!』
『Subvert up!Wow!Just believe in myself!仮面ライダー Ah!アギレラ!』
『Delete up!Unknown!Unlest!Unlimited…!仮面ライダーオーバーデモンズ!』
『Spirit up!Slash!Sting!Spiral!Strong!仮面ライダーデストリーム!』
『NINJA!』『BEAT!』『ZOMBIE!』
『Ready?Fight!』
変身を終えると、ベリリュンヌの光が彼らにも降り注ぎ、壁の中へ転送した。
*
轟栄一の私室にて、コラスは仮面ライダー絶滅ゲームの様子を眺めていた。天下布武と書かれた掛け軸、盆栽、真剣の日本刀。彼の支配欲を体現するその部屋は、実子の公約ポスターが飾られている。が、やはり轟戒真の姿はない。椅子に深く座った轟栄一は、感慨深そうに呟く。
「これで、いよいよ私の支配する世界が実現する…」
「あなたも罪な人だ。実の息子を、駒として利用するとは…!」
このデザイアロワイヤルは、轟栄一とコラスの共謀によって行われたものである。轟栄一は、息子を全く気遣う素振りは見せず、ただ冷笑するのみだった。
「ふんっ…上の子たちはいつも頑張っているのに、あいつだけが努力を怠った落ちこぼれだった。汚れ仕事をやらせておけばいい」
彼がそれまで言うと、部屋のドアがパイプ椅子によって突き破られ、一人の男が侵入してきた。
「誰だ…!」
「へぇ…やっぱりグルだったんだ」
部屋に入ってきたのは、デザイアグランプリの仮面ライダー、墨田奏斗だった。壁の中に突入し、英寿らを援護しようとする他の仮面ライダーに対して、彼だけコラスの持つヴィジョンドライバーを狙い、たった一人で勝負をかけに来た。彼はパイプ椅子をその辺に投げ捨てると、右腕で壁にもたれかかる。
「悪徳政治家、轟栄一。あんたがデザイアロワイヤルのスポンサーだったってわけだ」
「……お小遣いでも欲しいか?」
轟栄一もまた、スポンサーとしてデザイアグランプリを見守ってきた身。当然、奏斗が複雑な境遇を抱えていることを知っていた。金で高校生を丸め込もうとする姿に、奏斗は居心地悪く首を回した。
「あのさぁ…金でなんで解決できると思ってるから、こうして今もデザイアグランプリに利用されてるって、わかってる?」
「逆だな。私こそが世界の支配者。デザイアグランプリもまた、私の理想を叶えるための道具だ」
奏斗の煽りに過剰に反応する轟栄一を、コラスは右腕を広げて止める。彼はシルクハットを脱ぎながら、ヴィジョンドライバーを装着した。
「ここは、私にお任せを」
『GLARE 3 LOG IN』
ヴィジョンドライバーの指紋認証を終え、コラスはプロビデンスカードをドライバーに読み込んだ。
『INSTALL.ABSOLUTE ANTHORITY.GLARE 3.』
「2どこ行ったんだよ…」
「この力は、1や2より数倍上だぞ?」
コラスは、グレアの上位互換の力を持った、グレア3に変身した。グレア3は、全身が血に染まった様な赤黒い姿で、通常のグレアの赤と紫色の配色が逆転していた。奏斗は反射的に思ったことを口に出してしまったが、直ぐに気持ちを持ち直して、彼も仮面ライダーに変身する。
『SET』「変身!」『DUAL ON!BLAST!ARMED WATER!』
『Ready?Fight!』
ダパーン・アームドウォーターブラストが先に仕掛け、急接近からの蹴りを放つ。グレア3はこれを弾き返すでもなく防御して迎え撃ち、壁を突き破って戦いの場は轟家の庭園に移った。太陽の光を反射する池に、丹念に手入れされた松の木の葉が揺れていた。二人は一度距離を取り、睨み合いが始まる。
「まさか君一人で来るとはっ…!何故、ここが分かったのかな?」
「こっちも色々調べてんだよ…特に、轟戒真が暴力事件を起こしてから、次々轟家が有利になるように政治が動いてたからな…!」
ダパーンが池の水を利用し、地面に高圧放水をして目をくらますと、飛びつくように右足で膝蹴りをしながら接近。グレア3は胸部のビットを展開して防ごうとする。そこでダパーンは膝蹴りが命中する直前に左足からガスを噴射して軌道を変え、グレア3の頭上を回転しながら飛び越えると、空中で首筋に蹴りを放った。
直前で肩のビットが分離し、二つのビットの間に赤いバリアが貼られこれも防がれてしまった。バリアの展開、グレアには無かった能力である。グレア3は振り返りながらの裏拳で、バリアをすり抜けつつダパーンを弾き返す。
「デザイアロワイヤルなんて起こして、何をするつもりだ。宇宙人なんか雇いやがって…!」
「簡単さ。デザイアロワイヤルは序章に過ぎない。シーカーがこれから、空の裂け目に破滅の門を建設する。そして、宇宙各地の侵略者を招き、新たなゲームを始めるのだよ。地球は、宇宙人と生き残りをかけて戦い続けるディストピアとなるのだ!」
ダパーンは思わずデザイアロワイヤルのエリアの方向を見上げる。ちょうど、エリアの赤い壁の天井が突き破られ、鉄骨が上空に向けて斜めに組み上がっていく様がはっきりと見えた。
「させるかよ…そんなこと!」
『BLAST!WATER!VICTORY!』
ダパーンは太腿のファンから風を引き起こし、足を払って竜巻を作ると、そこに水を噴射。渦潮を作ってグレア3に放つ。渦潮の質量は大きく、流石のグレア3も避けきれないかと思われたが、グレア3は5つのビットからレーザーを乱れ撃ちし、渦潮の流れを断ち切って効果を打ち消した。そこからグレア3はビットに指示し、ダパーンを取り囲ませてレーザーを何度も発射する。最初はレイズウォーターで撃ち落としてたダパーンだったが、次第に追い付かなくなり、レイズウォーターを弾かれる。さらにデザイアドライバーも狙い撃ちされ、何とか倒れ込むように回避して直撃は免れたが、掠ったレーザーがウォーターレイズバックルを破壊してしまった。
「ぐっ…!」
「それ以上はやめておけ。この世界は君が望んだ世界でもあるのだ。無理に戦う必要はあるまい…」
レーザーの雨が止まり、ダパーンに考える時間が与えられた。デザイアロワイヤルが起きた原因は、ヴィジョンドライバーの強奪もそうだが、墨田奏斗が願った"デザイアグランプリの存在しない世界"が発動したもの大きな要因である。デザイアロワイヤルという不本意な事件が起きてしまったものの、この世界は紛れもなく奏斗が創世した世界なのだ。だが、奏斗にコラスの手を取るという発想は微塵もなかった。毅然として立ち上がり、フィーバースロットバックルを構える。
「愚かな…折角君のくだらない願いを叶えてやったと言うのに!」
「愚かなんかじゃねぇよ…どんな願いでも、命を賭けて戦えば、それは立派な願い……あいつの話、聞いてなかったのか…?」
『SET FEVER!』
ダパーンはフィーバースロットバックルを装填し、スロットを回した。
「残念だよ」
『DELETE.』
グレア3がプロビデンスカードをスライドさせ、5つのビットを伸ばした右手の前に集中させる。そして、ビットは正五角形に広がり、一本の巨大なレーザーを放った。レーザーは一直線にダパーンに迫り、その身を爆発させた…はずだった。
『PIRATE!』
スロットに、真新しいバックルの力が的中する。
『HIT!PIRATE!』
「その力は…」
上半身に新たなアーマーが装着されると同時に、強力な衝撃波が生じ、爆炎が押しのけられる。煙が晴れ、その中から現れたのは、海賊の鎧を身に纏った、ダパーン・パイレーツブラストフォームだった。上半身のパイレーツフォームは、全体が正面から見た三角の海賊帽の様なデザイン。右肩から斜めにバックルホルダーが紐に結ばれて掛けられていて、数多の小型バックルが既にセットされていた。右腕からはストックアンカー型の錨がぶら下がり、左腕のアーマーには、海賊が好んで使う刃渡り五十センチ程のサーベルが一体化している。そして最も目立つのは、腰に収められた大口な水平二連式の銃・パイレーツブラスターである。パイレーツブラスターはグリップ部分から銃身にかけて上部分が削られており、グリップから銃身を折り曲げる事で、その空洞にバックルが装填できる構造になっていた。
ダパーンは今までに見たことのないバックルを力に驚くも、パイレーツブラスターを手に取る。
『PIRATE BLASTER』
「まだこんなバックルが…ここに入れろってこと?」
左手をスナップを効かせ振ると、銃身が折れ、バックルを入れるレールが露出する。ダパーンは肩にぶら下げたプロペラバックルを装填し、銃身を同じ動作で元に戻した。
『SET PROPELLER!』
プロペラバックルを動作させると、銃身が鋼色に光る。
『PROPELLER CHARGE!』
パイレーツブラスターを振るいながら、ダパーンはトリガーを引き、銃口から一発ずつプロペラ型の砲弾が発射される。
『PROPELLER TACTICAL BOMBER!』
プロペラの砲弾は高速回転し、グレア3のバリアをガリガリと削る。しかしバリアを破壊するには至らず、砲弾は上空に弾かれた。
「その程度の攻撃で……なっ!」
上空に弾かれた弾丸は、ブーメランの様に跳ね返り戻ってきた。それはバリアを張っていたビットに二つとも命中し、一瞬だけ機能を停止させた。その隙にダパーンはガスを噴射して急接近。胸部にパイレーツブラスターを押し当てて通常射撃を行う。大口の銃口から放たれる砲弾は、弾速こそ遅いもののマグナムシューターの銃撃より破壊力に優れ、グレア3を大きくダメージを与え吹き飛ばし、膝を付かせた。
「理想の世界は、自分の手で叶える!」
「この手は使いたく無かったが…私の理想を邪魔させるわけにはいかない!」
『HACKING ON CRACK START』
「まじか…!」
グレア3はヴィジョンドライバーの指紋認証機能を発動し、ビットを再制御。攻撃用から洗脳用に切り替え、ダパーンを洗脳で抑え込もうと一斉に襲わせる。
しかしそれもまた、眩い光に阻まれた。
「光あれ!」
何処からともなく発せられた光に、ダパーンとグレア3は思わず目を伏せる。その光の聖なる力によって、ビットは制御が鈍り、自動的にグレア3の元へ戻ってゆく。光が少し弱まると、ダパーンの前に二人の男が立っていた。眩い光は、右側の男の剣先に集中してゆく。
「お前がこの事件の元凶だな」
「あんたら…確かブックゲートで助けてくれた…」
ソードオブロゴスの剣士の二人、ユーリと倫太郎がダパーンを助けに現れた。彼らは、神山飛羽真の仲間として、ブックゲート脱出作戦を行動に起こした二人である。倫太郎は水勢剣流水が納刀された、聖剣ソードライバーを装着する。
「奏斗君、僕たちも手を貸します!」
『タテガミ氷獣戦記!』『X SWORD MAN!』
倫太郎はタテガミ氷獣戦記ワンダーライドブックを開き、横向きに聖剣ソードライバーへ、ユーリはエックスソードマンワンダーライドブックを聖剣サイコウドライバーにセットする。
「「変身!」」
倫太郎は水勢剣流水を抜刀し、ユーリは光剛剣最光でドライバーのスイッチを押し、ワンダーライドブックの力を解き放った。
『流水抜刀!タテガミ展開!』『最光発光!』
倫太郎の体は氷塊に包まれ、仮面ライダーブレイズ・タテガミ氷獣戦記へ。ユーリの全身に光の力を宿した鎧が纏われ、仮面ライダー最光・エックスソードマンへ変身を遂げた。
『全てを率いし、タテガミ!氷獣戦記!』
『GET ALL COLORS!X SWORD MAN!』
「さぁ、行きますよぉ!」
「こいつは最高だな!」
「全く…騒がしい奴ら…」
グレア3に突撃する二人の剣士に、ダパーンは憎まれ口を叩きながらも、パイレーツブラスターの小型バックルを差し替える。
『SET ARROW!』『ARROW CHARGE!』
ブレイズは流れる水のような滑らかな動作で剣を振るい、最光は光の速さで加速する刃で同時にグレア3を攻めたてる。それでもグレア3は対応して見せ、最光の剣戟を平手で後方に捌き、ブレイズを手の掌打で押し退ける。ブレイズは後退しながらも足下に氷のフィールドを形成。グレア3の足元を凍結させ動きを止める。同時に空中を漂っていたビットも凍結し封じられた。そしてブレイズが左側に避けると、即座にダパーンが現れる。必殺技のチャージは完了していた。
『ARROW TACTICAL BOMBER!』
ダパーンはグレア3向けて二発の緑色の砲弾を放つ。それはグレア3に命中する前に空中で炸裂し、無数の緑色の矢を形成。一斉にグレア3を襲った。ビットが凍結され防御が遅れたグレア3は、矢の雨を受けてしまう。さらに後方から氷のフィールドをスライディングしてきた最光が脇腹に一閃。さらにダメージを与えた。氷のフィールドが収まり、ビットが再び空中に浮遊する。
「おのれ…!」
『DELETE.』
グレア3はここで勝負を決め切ろうと、ビットを右手に集め、先程と同じ巨大なレーザーを放射した。ブレイズは咄嗟に氷塊を生成してレーザーを防ぐ。だがレーザーの威力に直ぐに亀裂が走る。長くは保たなそうだ。
「ここで決めましょう!」
「あぁ…あいつの相手はもううんざりだ」
氷が砕け、レーザーが三人に迫る。三人は同時に飛び出し、一気に必殺技を発動した。
『フィニッシュリーディング!サイコーカラフル!』
「Xソードブレイク!」
先んじて最光が高速移動を開始し、レーザーを反るように飛び越えると、着地同士に縦一閃。さらに横に深く斬り込み、同時に三つのビットを破壊した。次いでブレイズが、氷の翼を生やして蹴りの構えを取る。
『百大氷獣!タテガミ大氷獣撃!』
「レオ・ブリザード・カスケード!」
ブレイズの右足に鋭利な氷の爪が生成され、氷の力を得た蹴りはグレア3のビットを全て貫いた。ビットを失い、レーザーでの攻撃も、バリアさえも張れなくなったグレア3に、錨が付いた鎖が巻き付けられる。ダパーンは鎖を巻き取り、グレア3との距離を詰めた。
『GOLDEN FEVER VICTORY!』
「何も奪わせない…この世界は俺たちが守る!」
左腕のサーベルを突き出すと、半透明な海賊船の船首が浮かび上がり、グレア3と激突する。この攻撃を受けて、グレア3は爆散し、ヴィジョンドライバーは遠方に弾け飛んだ。
変身が解除されたコラスは、地面に伏す。体は透明なホログラムとなって消えかかっていて、彼の終わりを告げていた。
「中々エキサイティングな戦いだったよ…墨田奏斗…」
コラスの最後の言葉を聞き終えたダパーンは、変身解除してヴィジョンドライバーに触れる。また誰かに奪われない様にと、すぐにでも回収したかった。コラスが消滅すると、同時にニラムも現れる。奏斗をここまで案内したのも、他でもないニラムであった。
「ありがとうございました!そちらのお二方も、ご協力感謝します」
ニラムは奏斗の手からドライバーを取り上げる。
「約束しろ。デザイアロワイヤルの被害を全てリセットするんだ」
奏斗の要求に、ニラムは笑顔で答えた。
「えぇ。それは勿論。さぁ、始めましょう…私たちのデザグラを…!」
ニラムは、空に回収したヴィジョンドライバーを掲げた。
重く、鐘の音が響く。
DRルール
デザイアロワイヤルの終幕は、
ディストピアの完成。
心ゆくまでお楽し───────
DGPルール
これは、世界の平和を守るゲームである。
次回:ギーツ×リバイス
「これよりデザイアグランプリ緊急ミッション・シカゲームを開始します!」
18話 交差Ⅴ:破滅の門と地獄の塔