仮面ライダーギーツ外伝 一歩IF:片脚の男   作:みなかみ

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20話 交差F:Change my future.

 

 ギガントソードにより塔の建設を押し進めるシーカーに、ブーストライカーが突撃する。シーカーは咄嗟に壁を組み上げ、攻撃に備える。壁に命中する直前、ギーツはブーストライカーをキツネモードに切り替え、自身はそれを足場に壁を飛び越える。シーカーの頭上に回り込み、身体を捻りながらマグナムシューターで連続射撃。これをシーカーはアームに装備したギガントソードで防御したが、反対側に着地したギーツの蹴りを喰らい、壁際に追いやられる。そこでキツネモードのブーストライカーが壁を突き破り現れ、尻尾を模したマフラーによる薙ぎ払いでギガントソードを弾かれた。

『MAGNUM TACTICAL BLAST!』

 さらに至近距離からマグナムシューターの必殺の銃弾が命中。シーカーは無理やり塔から突き落とされる。しかし直ぐ様地面を建設し、無傷で着地。弾かれたギガントソードをアームに拾わせた。

「追いついたぞ!」「待てぇ!コノヤロー!」

 塔の外部から、バイスのプテラゲノムに搭乗したアルティメットリバイが追い付き、着地と共にシーカーに殴りかかる。ギーツもそれに参戦し、足首のマフラーに火を吹かせて後頭部に蹴りを放つ。

「何度来ようが、結果は変わらない!」

 シーカーはギガントコンテナから最後の小型バックルをパワードビルダーバックルに装填。レバーを引いてギガントブラスターを両手に持った。これにより、ギガントハンマーはもう一つのアームへと移る。

『ALL MIGHT!GIGANT BLASTER!GIGANT ALMIGHTY!』

 ギーツの蹴りをギガントソードで受け流し、アルティメットリバイのパンチはギガントハンマーで受け止めた後、ギガントブラスターによる射撃で迎撃。ジャンプで一度距離を取ると、迫りくるギーツの銃撃を、ギガントハンマーで壁を建設し防御。壁を組み直して小窓を作り、そこからギガントブラスターで射撃してギーツを退けた。続けざまに、アルティメットリバイが裏拳で壁を破壊するも、そこにシーカーの姿は無かった。即座に二枚の壁が出現、アルティメットリバイの前をスライドすると、そこからシーカーが現れ、ギガントソードの奇襲でアルティメットリバイを斬り伏せた。そして、シーカーは高台を建設。そこで三種の武器にエネルギーを込める。

「俺の…邪魔をするなぁ!」

『GIGANT FINISHER!』

 ギガントブラスターの周囲に鉄骨などの建材が集められ、エネルギー弾と共に二人に向けて放たれる。最初は腕を組んで防御した二人だったが、ギガントソードの斬撃、ギガントハンマーの衝撃波と必殺技が続き、遂に地に伏した。

「一輝!英寿!」

 再度ギファードレックスバイスタンプによって、アルティメットバイスに戻ったバイスは、二人を介抱する。その間に、シーカーは塔の頂点の建設を追え、いよいよ破滅の門の建設に着手した、

 ギガントハンマーを叩き付け、空の裂け目に巨大な門が組み上がる。それが、少し開くと、向こう側から眩いほどの光が差し込んだ。宇宙中の侵略者が、今にも地球に現れんとしている。

 だが、彼らの戦いは終わっていない。

「させるか!」

 アルティメットリバイが塔の頂点に登り詰め、決死の特攻を行う。ギガントソードで斬り付け、ギガントハンマーに殴られながらも、シーカーの懐に潜り込み、ギガントブラスターを掴んだ。シーカーはアームのギガントソードで返り討ちにしようとするが、それも右手でガードし、ギリギリと火花が走った。

「デザ神となるのは、俺だ!俺にはその力がある!」

 シーカーはギガントハンマーをアルティメットリバイに振り下ろすも、直前でそれは遥か彼方に弾き返された。ギーツの狙撃によるものである。

「力に溺れたやつに、勝利の女神は微笑まない」

「何を…!」

「でぇえい!」

 アルティメットバイスが飛びかかり、ギガントソードをアッパーで吹き飛ばす。装備を失っていったシーカーは次第に防戦一方となり、遂に最後の装備をアルティメットリバイにもぎ取られ、アルティメットリバイスの同時蹴りをモロにくらってしまった。

「お前の力は、ギフの力でドーピングした偽物だ!」

「そんなもん、ぜーんぜん怖くないね!」

「本当の強さは、理想の世界を叶えたいという意志の強さだ」

 シーカーは「何が言いたい?」と首を振る。

「お前にその、意思があるか?」

「黙れぇ!」

 英寿の言葉に、錯乱を抑えられなくなったシーカーは、頭を強く掻いた。好機を確信したギーツは、アルティメットリバイスに顎で促す。

「今だ、リバイス!」

「あぁ!幸四郎を取り戻す!」「行くぜぇ!」

『『リバイ!バイス!ギファードフィニッシュ!』』

 アルティメットリバイスは動きをシンクロさせ、シーカーに向けて飛び蹴りの構えを取ると、二人の並行に並んだ足先から磁力が生まれ、二人は反発と引き合う力の連鎖で加速。シーカーにガードの暇すら与えず、ダブルライダーキックでシーカー共に破滅の門を貫いた。ここで、リバイスのキックによる、悪魔と人間の分離効果が発動。シーカーの体内から、幸四郎の肉体が宿ったネオ・ギフバイスタンプが離れる。アルティメットリバイは、空中でそれを掴み。抱きかかえるように持つと、ネオ・ギフバイスタンプからも、幸四郎が分離。残されたギフバイスタンプは、空中で破裂した。

「ナイス一輝!」「いっけぇ!ギーツ!」

 幸四郎の分離を確認したギーツは、ゆっくりとシーカーに歩みを進め、右手を鳴らす。そして、マグナムバックルのシリンダーを回した後トリガーを引き、ブーストバックルのハンドルを回して炎を吹かす。ギーツ最大火力の必殺技が発動準備に入った。

「さぁ、ハイライトだ」

『BOOST TIME!』

 彼がマフラーから炎を出しながら高くジャンプすると、塔の頂点にブーストライカー・キツネモードが現れ、空中でギーツをキャッチ。全身が炎を纏い。さらに加速する。

『MAGNUM!BOOST!GRAND VICTORY!』

 ギーツはブーストライカーを飛び降り、位置エネルギーを利用して加速を続け、彼の足先からギーツのクレストが生じる。シーカーは真正面からそのライダーキックを受け止めるも、威力にガードしきれずに、地面を貫いて落ちてゆく。ギーツのキックはシーカーを巻き込みながら塔を突き抜け、真っ二つに破壊すると共にスタジアムの外へ着地した。リバイスもギーツの元に着地すると、塔は木っ端微塵に爆発し、破滅の門は砕け、空の裂け目も完全に閉じられた。

「ミッションコンプリートです!」

 ツムリの宣言と共に、空の裂け目があった位置に『Mission Complete!』と虹色の文字が浮かび、祝福の花火が反発も上がった。

 空の裂け目が閉じるのを見届け、変身を解除する三人。彼らの視線の先には、戦いに敗れ地面に倒れた轟戒真の姿が。幸四郎を抱え、彼に歩み寄った一輝は、優しく声をかけた。

「その力、もっと他に使い道があるはずだろ」

 父の駒となり、自分の意志を失った戒真。一輝の言葉を彼はどう思ったのだろうか。戒真は答えない。対照的に、英寿は激励の言葉を彼に贈った。

「戦うなら、自分の理想の世界を見つけろ。その時また、デザイアグランプリで相手になってやるよ」

 二人の言葉を受けて戒真は、空を見上げた。

「俺の…理想の世界か…」

『RETIRE』

 そう言い残し、脱落により消えてゆく彼の顔は、どこが清々しさを残し…彼の再起を思わせるのだった。戒真の脱落を見届けたバイスは、しゃがんで幸四郎の顔を覗き込む。

「ふぅ…幸四郎、無事で良かったな!」

「あぁ!俺たちの、可愛い末っ子だぜ」

 バイスが幸四郎の頭を撫でていると、ツムリがやって来て、三人に頭を下げた。彼女の表情もまた、純粋な笑顔である。

「お疲れ様でした!ラスボスは、浮世英寿様、五十嵐一輝様によって撃破されました。飛び入り参加の、飛電或人様、神山飛羽真様にも、デザ神となる権利があるのですが…もう行ってしまわれたようですね」

 ツムリは二人にデザイアカードと羽根ペンを差し出す。

「ただし、デザ神となれるのはお一人だけです」

「えぇ!俺っちは!?」

 自分だけハブられている事に、困惑するバイス。ツムリはそれに対しても、笑顔で対応した。

「残念ですが、悪魔は対象外です!」

「ハハン!そうですよねぇ〜!って、ちょっとおかしく無い!?」

 駆け寄るバイスを他所に、ツムリは二人のデザ神候補に歩み寄る。

「どうぞ、願いをご記入ください」

「被害にあった世界は、元通りになるんですよね?」

「はいっ!それが、デザイアグランプリのルールなので」

 ツムリの返答を受け止めた一輝は、一度幸四郎を見ると、英寿に顔を向ける。家族の幸せこそが、彼の幸せ。

「なら、他に願うことなんて無いよ」

「ええっ!ちょっと、勿体無いってぇ〜!お節介キャラやめちゃったの、もう、こうなんか、捻り出せよ〜!」

 バイスは悪魔らしく、細々とした願いを一輝に吹聴したが、そんな事に世界を作り変える権利を利用していいのだろうか。もちろん一輝は聞く耳を持たず、英寿に譲るつもりだ。

「じゃ、遠慮なく」

 英寿は淡白な反応を返して、デザイアカードに願いを書き込んだ。

「何願ったんだ?」

「秘密だよ」

 英寿の秘密主義に、一輝は少し残念そうにするが、直ぐに元の調子になって、笑顔を見せた。

「承りました。では、参りましょう。理想の世界へ!」

 ツムリが天にデザイアカードを掲げると、神秘的な鐘の音が響き、赤い壁の消滅と共に、世界の崩壊はリセットされた。

 

             *

 

「おかえり〜!」

 五十嵐元太が、景気よくクラッカーを鳴らす。しあわせ湯では、幸四郎の帰還を記念した祝賀会が、五十嵐家とブルーバードの一同によって行われていた。五十嵐の末っ子を、家族全員で愛でている。もう二度と、危険な戦いに巻き込まれないように。特に幸四郎を可愛がっていたのは、この悪魔である。

「まったくもう可愛なぁ〜よちよち!」

 バイスである。今まで一緒にいれなかった時間を埋めるように、精一杯幸四郎の世話を焼いていた。そんなバイスの元に、さくらと大二から分離した悪魔の二人が、ニヤついた笑みで寄ってくる。

「幸四郎、アタイのライバル!」

「オイオイ〜俺様の弟分に手ェ出すなよバイス。これからみっちりと悪魔の美学って奴をだなァ…」

「ねぇ!ちょっとヤメて!幸四郎は健全な子に育てるんだからっ!」

 まるで姑のような口調でバイスは二人を追い払う。祝賀会では、誰もが笑顔だった。でも少し、一輝の顔には憂いが残っていて…

 

 

「なぁ一輝、俺っちがいなくても、幸せだったか…?」

 祝賀会を抜け出した一輝とバイスは、鯉の池が見える、しあわせ湯の休憩所に来ていた。バイスの問いかけに、椅子に座った一輝は俯きながら答えた。

「…幸せだったよ」

「そっか…」

 バイスが何かを言う前に、一輝はバイスの顔をはっきりと見た。

「でも、最高ではなかった…」

「一輝…」

 バイスの身体が、青い光となって消滅し始めた。バイスは自身のデザイアドライバーを握りしめる。既に、彼専用のIDコアも消えていた。

「…また、俺のそばからいなくなっちゃうのか?」

 一輝の言葉に、バイスは重い空気を払う様に明るく振る舞う。

「その方がいいって!また家族の悲しむ顔、見たくないだろ?」

「…お前の悲しむ顔も見たくない」

「何だよそれ…」

 一輝にとって、悪魔は紛れもない家族なのだ。それが消えるとなっては、心が弾む筈もない。彼は深く息を吐いて、短く過酷であっても、再び家族を感じれた、この戦いを思い出す。

「でも、楽しかったなぁ…また一緒に、戦えて」

「…だな!俺っちたちは、いつも最高だ!」

 バイスは、一輝の感情を受け止めて、掌を彼に向ける。一輝は、思いっきり笑うと、彼の掌に拳を重ねた。別れの決意ではなく、再会を誓って。バイスがそれを握り返す。

「じゃあな…!」

 そう言い残して、バイスは消えた。デザイアドライバーだけが、しあわせ湯の床を跳ねる。一輝はそれを拾い上げて、また呟いた。

「またな…バイス…!」

 二人の最後のやり取りを見届けた大二とさくらは、彼がバイスを覚えていることに驚いて、彼の元へ近寄る。本来ならば、バイスの消滅に伴って、一輝の記憶も消えるはずだったのだが。

「兄ちゃん…バイスのこと、覚えてるのか?」

 一輝は、バイスを忘れていない事実を理解し、思わず笑みを溢す。

「忘れるわけ無いだろ。バイスは、俺たちの家族なんだから!」

 彼は、ニッと家族に笑ってみせた。

 そう、浮世英寿が叶えた世界とは…

 

 

 祝賀会を終えて、一輝は英寿と会う約束をしていた。

 彼が英寿を呼び出したのは、市民の味方・回転寿司屋。黄色い皿を重ねた一輝は、レーンに流れてきた天ぷら寿司を発見する。それは最高値の黒の皿だったが、一皿くらいなら平気だろう。

「うおっ、英寿!めっちゃ美味そう!」

「おぉ、美味そうだな」

 二人は二皿並んで流れてきた天ぷら寿司をそれぞれ取る。店内には清涼感のある音楽が流れ、所々の席から、注文の品の到着を伝えるアナウンスが響いていた。一輝は天ぷら寿司につけようとした箸を止めて、シートに置いたトートバックに手を伸ばした。

「そうだそうだ、ありがとな。これは返すよ」

 一輝が差し出したのは、バイスと共に使用した、二つのデザイアドライバーだった。英寿はスマートフォンを机に置くと、あたりを見渡しながらそれを受け取る。

「俺の理想の世界が叶って何よりだな」

 一輝とは対照的に、黒と赤の高級皿を重ねた英寿は、再びスマートフォンでニュースサイトを開く。一輝がバイスを忘れずに、また英寿との約束も忘れなかった理由。それは、英寿がデザイアカードに願った世界。"五十嵐一輝が戦いの記憶を忘れない世界"の効果によるものだ。私欲に飲まれず、家族を、仲間を愛し、世界を守りきった男の姿に、英寿も心打たれたのだろう。当の一輝は、そんな自覚もなく、興味があるのは英寿のスマートフォンの中身のようだ。

「何見てるんだよ?」

「轟戒真の父親が逮捕されたそうだ」

 英寿が見せたニュースサイトには、『轟栄一議員を逮捕 公職選挙法違反の疑い』と記され、警察車両に連行される轟栄一の姿が載せられていた。逮捕の決め手は、いわゆる票集めの賄賂の発覚。デザイアグランプリで轟戒真に願いを叶えさせ続けていたら、彼が逮捕されることは無かっただろうか。しかし、轟戒真は自分自身の理想の世界を見つける意志を芽生えさせた。いつまでも、父親の操り人形ではいられなかったはずだ。遅かれ速かれ、轟栄一は逮捕される。因果応報と言うべきか、一輝は言葉に詰まったが、直ぐに持ち直して、天ぷら寿司に箸を伸ばした。

「そっか…食べようぜ!」

「ああ」

 英寿もスマートフォンを置いて、天ぷら寿司を口にする。一輝は普段の生活では味わえない、シャリと天ぷらの組み合わせに、思わず口を押さえる。

「うっひょ〜!無限に食べられるな!」

「デザイアカードで叶える手もあるな。毎日美味い寿司が食べられる世界って」

「いいなぁ、その世界!」

 勢い余って、二貫目を食い終えた一輝は、祝賀会の最中にずっと気になっていた疑問を、英寿に投げかけた。

「そういえば…!父ちゃんが、英寿と前に会ったことがあるって。アズマの事件の時、助けてくれたんだよな。どうしてそこに?」

「そんなこともあったなぁ…昔の友人がいたもんでな、楽しそうだから、化けて出てやったんだよ」

 英寿は飄々と一輝の問いかけをかわし、指でキツネを作る。一輝は英寿の"昔の友人"という発言を、事件に巻き込まれた乗客の誰かだと解釈し、次の皿を物色し始めた。その言葉の本当の意味が"古代から生きていた男・アズマと知り合いである"とも知らずに。

 

             *

 

 戦いを終え、塔から脱出した或人。とりあえず飛電インテリジェンスに帰還しようと、自然に溢れたビル街を歩き始める。

「きっとみんな驚くぞ〜!」

 或人は仲間の笑顔を思い浮かべながら、赤信号で立ち止まる。すると突然、或人の前で七人乗で水色の車が急停止した。

「っおい!」

 運転席と助手席のドアが開き、助手席から秘書のイズが、運転席から副社長の福添准が降りてきた。イズは丁寧に両手を組むと、ヒューマギアの目を模した高性能のカメラで或人の顔をスキャンする。

「本人と100%一致。おかえりなさい、或人社長」

「待ってましたよ。随分と荒い帰還ですなぁ…」

「ははっ。バレてたか」

 或人は、ニカッと笑って、イズの肩に手を置いた。

「イズ、みんな。ただいま」

「それだけではありませんよ。君がいない間に、状況もかなり好転した」

 逆側の道から、天津垓も歩いてやって来る。

「君に会いたい人が、大勢飛電インテリジェンスで待っている」

「わかった…!それじゃあ、行こうか…!」

 或人は、仲間の待つ帰る場所へ。最高の夢を思い浮かべながら。

 

 

 公園のベンチで、そよ風を感じた飛羽真は、文庫本を閉じて大きく伸びをした。

「う〜ん。今日も世界は平和だ」

「飛羽真、ソフィアが相当怒ってたぞ」

「賢人もですよ。ワンダーライドブックが飛んでった〜って、困ってたそうです」

 彼の座るベンチに、倫太郎とユーリが寄ってきた。飛羽真は、笑いながら立ち上がる。

「ごめんごめん。それじゃあ帰ろうか。"俺たちの物語へ"!」

 セイバーの物語は、これからも続いてゆく。

 

             *

 

 今回のデザイアロワイヤルは特に大変だった。英寿たちの方では、シーカーだ、宇宙の侵略者だの、大変な奴らと戦わされたらしい。まぁ今回のMVPは俺かな、と自画自賛してみたり。だってゲームマスターと戦ったんだ。相当ギリギリの戦いだったし、新しいバックルだって使いこなした。そこそこの活躍はした、と思う。

「ここか」

 まさか最初に謎の甲冑を着せられたコスプレ喫茶が実在したとは。雑居ビルの前で立ち止まった俺は、壁に刻印された看板を確認にすると、四階にはメイド喫茶や居酒屋等の名と共に、コスプレ喫茶・QUESTAREAと印されていた。今日は、デザイアグランプリの参加メンバーで集まる日だった。

 そういえば、コラスが利用した俺の願い・デザイアグランプリの存在しない世界はどうなったのだろう。やっぱりあのニラムとか言うプロデューサーがヴィジョンドライバーを使った時に、リセットされたのか。いや、だったらバッファが最終戦な参加してるのはおかしいか。どちらにせよ、もう一日も経ったんだし、無かったことにされてるだろう。

 でも少し、惜しかった気もある。曲がりなりにも、あそこは俺が願った世界だった。道長がいたんだし、きっとあいつも…

「ないな、それ」

 コラスのやったことに感謝するなんて、絶対にない。鵜飼玲は、俺の彼女は死んだ。失ったものは二度と戻らないし、取り戻そうとすると、痛いしっぺ返しを受ける。だから、これで良かったんだ。

「ありがとう、奏斗」

「は…?」

 俺は聞き慣れているはずなのに、どこか懐かしい声に振り返った。そこには、あの日、俺に告白をした姿のままの鵜飼玲がいた。なんで…あいつがここに…いや、まだ願いが有効のままだったんだ……駄目だ。言葉が出ない。玲が消えて、荒んでしまった現状を、あいつが知ったら幻滅するだろう。せっかくまた会えたのに…こんなんじゃ……玲に向ける顔がない。俺はただ、地面を眺めることしかできなかった。

「ごめん、俺……バスケも、半田も、捨てちまった……本当に…ごめん…」

 それ以上、言葉が出てこない。俺はただ、声を震わせながら玲に謝ることしかできなかった。玲は、俺を救ってくれた。またバスケが好きだって、思わせてくれた。それなのに俺は…

「だいじょうぶだよ」

 ふわりと、玲が俺にハグしてきた。突然の出来事に、頭が空っぽになる。玲は俺をめいっぱいの力で抱き締めて、耳元で優しく囁いた。

「奏斗が変わっちゃったのも、全部私のせいだから」

 俺の肩に、ぽとりと雫が落ちた。直ぐに、玲の流したものだとわかる。

「謝るのは…わたしの方なんだ。だから奏斗は……わたしの事なんか忘れてよ。きっと…そっちのほうが幸せ…だから」

 俺は、玲の頭にそっと触れた。

「そんなこと言うなよ…いつかきっと、また逢える日が来るから…俺はずっと、この世界で待ってるから…」

 玲の腕の感覚が、薄っすらと消えてゆく。時間が来た。

「いつか、また」

「………うん……またね…!」

 ホログラムとなった玲の体は、空の青と混ざって消えてしまった。俺は、その場にうずくまって、彼女の頭に触れた手を握りしめた。きっとまた、逢える日が来る。求める事は、決して愚かなんかじゃない。幸せになりたいと願うのは、誰だって自由だ。どんな奴にだって、それぞれの人生がある。幸せは、自分自身が忘れなければ、きっと実を結ぶ。俺は、信じる。

 足元に、大粒の雨が降っていた。

 

 

 コスプレ喫茶にて衣装を着込んで出てくると、既に三人は席に座って待っていた。この店は衣装だけでなく、ボードゲームまでレンタルできるそうだ。既に机いっぱいに、人生ゲームをプレイするための一式が並べられていた。全員、最初と同じコスプレをしていて、準備は万全らしい。

「やっと来たか」

「って!奏斗君!何その格好!?」

「何って…これが一番かっこいいからだろ」

「男の子のセンスって、よくわかんないねぇ…」

 んなわけあるか…!俺は世界一動きづらい甲冑を着込み、席にドカッと座った。当然メットも被って完全装備。こいつらに俺の顔なんて見せさせるか。涙のせいで、パンパンに腫れた両目を、こいつらに見せられるはずもなく、顔が隠れるこの姿を止む負えず選んだ。それにしても暑い、動きづらい、よく見えない。最悪の三三七拍子だ。まぁ、顔を見せるよりはマシ…

「でもダパーン、ゲームをするのに、一人だけ顔を見せないってなはフェアじゃないな」

「は?」

 お前の場合は大してハンデにならねぇだろ…!

「確かに。顔見せろ〜!」

「いっけぇ!祢音ちゃん!」

 祢音が俺に飛びついてくる。俺の兜を剥ぎ取る気だ!

「やめろ!やめろぉーっ!」

 俺の必死の絶叫が、店内に響いた。

 

             *

 

 奏斗の顔を巡ってわちゃわちゃするデザイアグランプリのプレイヤーたち。それを陰で見ていた吾妻道長は、英寿に剥き出しの敵意を見せていた。

「調子に乗るなよギーツ。お前が勝てたのは、お前だけの実力じゃない。次会う時は、必ずお前を倒す…!」

 吾妻道長は、そう言い残して消えた。しかし、その消え方は、鵜飼玲の消滅とは異なり、どこかに転送されただけのようで…?

 

 

 デザイアグランプリ、プロデューサーの一室。モニターにて、デザイアロワイヤルの一連の騒動を振り返っていたニラムの元に、タブレット端末を抱えたサマスが現れた。

「確認しました。やはり、パイレーツバックルは、全機稼働ができない状態にありました。現状のフィーバースロットバックルで、パイレーツバックルの力を使用できるはずがありません」

「そうか…"鵜飼玲に共鳴し過ぎた結果、鵜飼玲以外が使用できなくなっていた"はずだが………ダパーン。君もまた、面白い変化を遂げる男となるだろう。彼もマークしておけ、浮世英寿と共にね」

 モニターの映像は、既にデザイアグランプリの新章の様子を映し出していた。

 

 

 デザイア神殿に集められたプレイヤーの四人。彼らの正面に立ったツムリが、またしても深々と頭を下げた。

「今回の、運営の度重なる不手際によるトラブル、重ねて謝罪いたします。今回のデザイアグランプリは、結果的にはノーゲームとなってしまいました」

 プレイヤーの持っていたバックルたちが、自動的に消滅する。運営に回収されたのだ。しかし、ツムリは直ぐに笑顔を見せる。

「ですが、あなた達四人は、来シーズンのデザイアグランプリへの優先参加の権利が与えられました。あなた達は、今日からも仮面ライダーです!」

 ツムリが左手を掲げると、デザイア神殿を取り囲むように、数多の瞳型のカメラが現れる。そこからは、四人の仮面ライダーに対する黄色い歓声が飛び交っていた。景和、祢音、奏斗の三人は、その様子にドン引きするも、英寿は余裕の笑みで手を振ってみせた。

「デザイアグランプリは、ただの世界を救うゲームではありません」

「…やっぱりな。そもそも世界を救うのに、ゲームである必要はない。つまり、デザイアグランプリの正体は…」

「そうです。世界を救うエンターテインメント。ようこそ、リアリティーライダーショー!デザイアグランプリへ!」

 デザイアグランプリの新章が、ここに始まる。

 

 

 オーディエンスの観戦ルームにて、一人の女性が眼鏡を直しながらオーディエンスの目を見る奏斗を凝視していた。

「うっわぁ〜!やっぱりかっこいい〜!次こそ、デザ神になるのは、ダパーンだよね〜!悩むな〜次は何のバックルを贈ろっかな〜?パイレーツはもう使えないし〜」

「相変わらずだね、モーン」

 観戦ルームに、もう一人青年が入室して来る。彼はモーンの隣に座ると、浮世英寿へと視線を向けた。

「次に勝つのも、ギーツだよ」

「負けないわよジーン。今度こそ、ダパーンがデザ神になるんだから!」

 目線で火花を散らし合う二人、しかし、ふとモーンはすっと無表情になって、観戦ルームを退室しようとする。

「彼の活躍を見なくていいのかい?」

「それも気になるけど…今は"新井紅深"の時間だから」

 彼女はレーザーレイズライザーを自身に撃ち込むと、服装が制服姿かつ、茶髪の"大人しい新井紅深"に変わった。

 

           DGPルール

 

         デザイアグランプリは

 

     スポンサーとオーディエンスに愛される、

 

      リアリティーライダーショーである。

 

      ぜひ、心ゆくまでお楽しみください。




次章予告

「へぇ〜ニューメンバー?」

─ニューメンバー、勢揃いの─

「今はスターの英寿か」

「何故ギーツがハイライトという決め台詞を多用していたのか?」

「俺の腕にかかれば!」

─リアリティーライダーショー─

「今度のライバルは手強そうだ」

─お見逃しなく!─

「スリリングでエキサイティングなゲームに乞うご期待!デザイアグランプリ!始まります!」

21話 発露Ⅰ:再開!新しいシーズンへ!
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