再開に伴って、過去話の一部シーンを修正しました。
活動報告にて詳しいことは書いてあるので、先にご確認ください。
21話 発露Ⅰ:再開!新しいシーズンへ!
『デザイアグランプリ。それは、理想の世界を叶えるため、怪物・ジャマトから世界を救うゲーム。』
『これまで、数多の戦いが繰り広げられ、勝利と敗北のドラマが紡がれてきた…』
『そして今、デザイアグランプリは、新たなシリーズとして生まれ変わる!』
デザイア神殿を所狭しと周回するカメラたち。その向こうにいるオーディエンス達は、推しの登場を今か今かと、固唾を呑んで見守っている。有刺鉄線のロゴが印された生八角形の会場に、七色の光が集まると、ナレーションの声のトーンが一段高くなった。
『それでは、エントリーメンバーを紹介しよう!』
やがて光は交わり合い、巨大な縦長のホログラムへ変わる。
『先ずはお馴染み。戦闘力No.1!』
ホログラム内のライダーのクレストが分割され、左右に伸びると、今期のデザイアグランプリには欠かせないあの男が表示される。
『不敗の男!仮面ライダーギーツこと、浮世英寿!』
『ENTRY』
ホログラムが上部へ捌けると、裏側から浮世英寿が現れた。彼がオーディエンスへ向けて右手を挙げると、静まり返っていた会場が、歓声によって弾けた。次いで、英寿の両サイドから、すっかりお馴染みのメンバーとなった者たちが続々と紹介されてゆく。
『セレブNo.1!一般人を夢見るインフルエンサー!仮面ライダーナーゴこと、鞍馬祢音!』
『危険度No.1!望むのは幸か不幸か!仮面ライダーダパーンこと、墨田奏斗!』
『『ENTRY』』
二つのホログラムから、向かい合うように入場した二人もまた、オーディエンスの拍手喝采に晒される。祢音は思わぬ歓迎を前に、少し戸惑いの様子を見せる。
「なんか…手振ったほうがいいかんじ…?」
彼女が恐る恐るカメラへ手を振ると、オーディエンスはさらに沸き立つ。普段の動画投稿では味わえないファンとの交流に、祢音は喜びに満ちた表情でカメラ一つ一つに手を振ってみせた。
対照的に、奏斗はこの状況が不快な様子で、彼への応援の思いを伝えるカメラたちを睨み返す。だが、それもファンサービスの一つとしか捉えられなかったようで、数個のカメラから悲鳴に近い歓喜の声が響く。奏斗が舌打ちをするも、盛り上がりは収まらない。
当然参加者は彼らだけではなく、過去のデザグラからの選抜メンバーが紹介された。
『知能指数No.1!天才クイズ王!仮面ライダーナッジスパロウこと、五十鈴大智!』
『身体能力No.1!霊長類最速女子アスリート!仮面ライダーロポこと、我那覇冴!』
『技術力No.1!世界を股にかける天才シェフ!仮面ライダーヘリアルこと、
『『『ENTRY』』』
茶髪のロングヘアーを後ろで纏め、眼鏡をかけ直す五十鈴大智。腕組みでカメラを観察する我那覇冴。そして、スラリとした体格の糸目の男、橋結カムロ。彼らに向けられる幸喜の眼差しは、祢音や奏斗の比ではなかった。今まで見たことがない顔ぶれに、物珍しそうに祢音が声をかける。
「へぇ〜ニューメンバー?」
そんな祢音の声掛けをスルーした三人は、最も警戒すべきライバルに威嚇を始めた。
「久しぶり英寿。あっ、今はスターの英寿か」
「今度俺の店紹介してくれよ。が、お前にされるまでもないがな!」
カムロは顔に見合わぬ大きな口でガハハと笑う。
「お前ら、知り合いなのか?」
裏で紹介されていた仮面ライダータイクーン・桜井景和には目もくれず、奏斗が話を広げた。
「前にデザグラの決勝戦で残ってた奴らだな。今度のライバルは手強そうだ」
「それはこっちの台詞だよ。ま、今度は僕が勝つけどね」
「いや、今度も俺が勝つさ」
火花を散らすデザ神筆頭候補の四人。その間に祢音が入り込むと、自然と空気が和らぐ。
「ふ〜ん!よろしくね!」
祢音に対しては、特に警戒する素振りを見せず、三人は正直に返事を返した。とりあえずの挨拶が済んだ所で、今期もナビゲーターを務めるツムリが、デザイア神殿に足を踏み入れる。
「以上七名で、デザ神の座をかけて戦います」
「七名…?」
自分の視界に入る人間と数が合わず、祢音は丁寧に一人ずつ手をかざして数える。自分が1、奏斗、大智、英寿、カムロ、冴と。
「1…2…3…4…5…6…」
やはり帳尻が合わない。ツムリの言い間違いかと首を傾げる祢音。彼のことを、完全に全員が忘れていた。最後の七人目、一般人代表の桜井景和である。景和は、気まずそうに会話の輪に入ろうと試みる。
「あ、あの…俺もいま」
「スリリングでエキサイティングなゲームに乞うご期待!デザイアグランプリ!始まります!」
だがそれすらもツムリ阻まれ、完全に空気のままオープニングセレモニーは終了した。
*
今回のデザグラは、随分と毛色が変わったもんだ。このゲームはショーであり、オーディエンスという謎の見物客が大勢いる。気に食わないというのが、正直な感想だ。集められているのも、スターにインフルエンサー、クイズ王にアスリート。そして天才シェフと来た。まるで人を喜ばせるためだけに集められたビッグネームたち。そして何故か投入されている一般人の二人。今回は相当肩身が狭そうだ。ここに道長でもいれば少しは楽なんだが、いや、あいつは死んだんだったな。
『それではデザイアグランプリ第一回戦、学園ゲームを開始します!』
公園に転送された俺たちの足元に、ミッションボックスが支給される。膝立ちになって蓋を払うと、まさかのブラストバックル。他のメンバーも、適正バックルを配られたようで、随分と気前がいいな。宝探しゲームみたいに、一からバックルはやりたくなかったから、ありがたい。
『不良ジャマトから街を守り、どこかの学校にいる校長ジャマトを退治してください!』
公園の奥の方で、不良ジャマトが一般人を襲っている。リーゼントに改造学ラン。持っているのは鉄パイプ。典型的な前時代の不良だ。不良ジャマトらはこちらの存在に気付き、声を荒げながら迫ってくる。ゾンビバックルを手に取った我那覇冴は、祢音を牽制する。
「お嬢様、足引っ張んなよ」
「そっちこそ…」
祢音も堪らず煽り返した。その反対側では、景和と五十鈴大智が目で会話している。
「よぉし!お互い仲良くしようぜ、パンダ君!」
「はぁ…?」
橋結カムロが、フィーバースロットバックルをちらつかせながら肩を組んできた。何だ距離が近いな………ん?俺はこいつの声に聞き覚えがある。前にどこかで会ったか……いや、世界を股にかける天才シェフらしいし、何かのテレビで見ただけか。
「馴れ合う気はないぞ」
「それも結構!では、片付けるとしようか。まるで!下ごしらえをするようにな…!」
『『『『『『『SET』』』』』』FEVER!』
組んだ肩を解き、俺たちはバックルをドライバーに装填する。いつも通りのルーティンで各々が変身の構えを取った。俺が気怠く首を回す視界の端で、橋結カムロが左胸の前で右手を握るのが見える。
「「「「「「「変身!」」」」」」」
『BEAT!』『ZOMBIE!』『BOOST!』
『BLAST!』『HIT!MAGNUM!』
『MONSTER!』『NINJA!』
『Ready?Fight!』
橋結カムロはマグナムを引き当て、仮面ライダーヘリアル・マグナムフォームに変身する。その顔は以前の仮面ライダーハイトーンに酷似していたが、三本ずつ後方に伸びたヒゲの装飾が鋭く目立つ。こいつはアザラシのライダーか。って、今は見てる所じゃないな…
襲い掛かる不良ジャマトの鉄パイプを、左足を振り上げて弾く。各々も不良ジャマトと戦い始めた。不良ジャマトは鉄パイプで武装しているのみで、さして脅威でもない。あるとしたら数が多いくらいだ。右足のみからガスを噴射して浮かびながら、身体を捻ると、振り抜かれた鉄パイプが下を通過する。着地する直前に後頭部を蹴りつけ、降り立つと同時にバク宙をして再び別個体の鉄パイプの一撃を回避する。
「くらえ…!」
姿勢が崩れて背中ががら空きだ…膝蹴りを一撃…!
「おっと!」
直前で、不良ジャマトは弾丸に撃ち抜かれた。橋結カムロが変身する、仮面ライダーヘリアルの銃撃だ。フィーバースロットでマグナムを引き当てている。俺が危なげもなく着地すると、ヘリアルは悪ぶれる素振りも見せずに佇んていた。
「悪い、悪い!ちょうど狙いやすい位置にいたもんでねぇ!」
「俺に当てんなよ」
「わかってるわかってる」
『BULLET CHARGE』
マグナムシューターの打鉄を引いたヘリアルが、銃口をこちらに向けてくる。本当にわかってんのか…こいつ…!?マグナムシューターの引き金が引かれ、銃弾が連続で発射される。俺は咄嗟に防御の姿勢を取ったが、銃弾は全て当たるか当たらないかのスレスレの所を通り過ぎ、背後の不良ジャマトを一掃した。
「俺の腕にかかれば!これ程の的あてなど容易い。まるで!…そうだなぁ…海老の背わたを取るくらいには…」
「その例え、上手くないからやめたほうがいいぞ」
「むぅ…まぁ良い。今は喧嘩している場合じゃ無さそうだしな!」
ヘリアルは戦っている他のメンバーを指差す。雑木林の方面では…
「ちょっと!邪魔しないでよ!」
「邪魔はそっち!」
タイクーンとロポが不良ジャマトを巡って揉めている。そして遊具が立ち並ぶ砂場の一角では…
「余計な事をしないでくれるかな?」
「ソレは私が言いたいっ!」
ナッジスパロウの策略に巻き込まれたナーゴが砂まみれになり、カンカンに怒っていた。どれも我の強いメンバーばかりで、意見が食い違っているようだ。何やってんたか…これは素直にヘリアルと共闘したほうが良さそうだ…
第一ウェーブが終了し、不良ジャマトらは撤退した。
サロンにて、親が昔使っていたという登山バックを雑に下ろす。今回のデザイアグランプリの出場に当たって、外泊用具を持って来い、という司令を受けていた。それを聞いて、何日間か遠征するミッションがあるのだろうと踏んでいたが、ミッション自体はいつものデザイアグランプリと変わらなかったな…
「皆さん、お疲れ様でした。これから参加者の皆さんには、ここで共同生活を送ってもらいます」
「はぁ!?」
ナビゲーターのツムリが告げたのは、最悪のメンバーとのルームシェアだった。よくよく考えれば、ただの遠方のミッションなら転送するだけで済むしする必要がない。他のメンバーも大荷物を抱えてるし。突然の発表に、景和も我那覇冴も異議を唱える。
「共同生活!?」
「そんな話は初耳だけど!」
「君タチに拒否権は無い」
抗議の圧を、低く変調された声が制する。エレベーターを抜けてサロンに入ってきたのは、ギロリと同じ画面を被った男。緩く羽織った黒いコートの裏に、黄土色のスーツが見え隠れしている。こいつが今回のゲームマスターか…?今度こそはマシな奴が来てほしいものだが。
「う〜わ。またヤバそうなゲームマスターが来た」
景和に完全に同意。共同生活を強いてくる時点で、俺たちを見世物のキャラクターにしようとしてるのは明らかだ。今度は何を企んで…"思わずまた舌打ちが出る。"ゲームマスターは俺たちの前まで辿り着くと、数秒その場で静止する。そして、突然コートを煩わしそうに脱ぎ始めた。なんだ!?随分とコミカルな動き……コートと仮面を脱ぎ捨て、サングラスをかけた素顔を晒したゲームマスターは、人差し指を下唇に添えると…
「どうも〜!!!」
高い声で叫んだ。皆、言葉を失う。
「新しくゲームマスターに任命されたっ!チラミよ」
サングラスのレンズの片側だけを上げ、俺たちをチラ見したチラミは、「しくよろ〜!!!」と手を振り回す。俺たちが驚きからか、ノーリアクションを貫いたのを確認したチラミは、ソファーに座っていた景和に「ナイスリアクション!せ〜の!フレッシュ、採れたて野菜!」と返す。今回のデザグラ…相当イメージが変わったもんだと思っていたが…こいつのプロデュースだと当然こうなるだろうと察しがつく。さっきまでガハハ、ガハハと笑っていた橋結カムロも、流石にこの様子に苦笑いをしていた。だれだってそうする。
「カメラ〜今のばっちり撮れてる〜?」
そう言ってチラミがガン見したのは、いつもサロンにあった車の置物…の前に固定されたゴープロの様な小型カメラ。横目で部屋を観察してみると、確かにある。前までは無かった小型カメラが、天井の四隅や入り口付近に。俺たちを死角無く捉えている。だが、女性陣はプライベートを映されるのは溜まったものじゃないだろう。祢音は戸惑いを隠せない様子だ。
「カメラ!?」
「いい!?戦いだけでなく、仮面ライダーの私生活も、ショーの一部になるのよぉ〜」
ソファーに足を組んで座るチラミ。何かコイツオネェ口調だな。それはさておき…スター共はともかく、一般人の私生活なんて見て何が楽しいんだ。心の中でボヤいていると、橋結カムロがチラミに詰め寄った。
「そいつは困るなぁ!俺らにも仕事ってもんがある。そこまでする理由は?」
威圧をかける橋結カムロに、チラミは仰け反りながら笑い出す。
「ふふっ、ふふふふふふ!この中に一人だけ、運営が事前に指摘した、デザスターがいるからよぉ」
「デザスター?んだそれ」
思わず本音がもれる。
「デザスターには、他のライダーを妨害する、秘密のミッションが与えられてるの!」
「…要はスパイってことか」
ようやく英寿が口を開いた。その一言で、場の全員が理解する。先のゲームでの、不自然な衝突。あれは偶然か、それとも…
「「「スパイ!」」」
景和と我那覇冴はお互いに指差し、祢音は五十鈴大智を指名する。俺も橋結カムロに思う所があるのだが…直ぐに指摘するのは得策じゃない。それを五十鈴大智も理解していて、冷静に説き伏せる。
「君たち単純過ぎるよ。そう簡単に、スパイが解るわけないでしょ?」
「それもそっか…」
三人はゆっくり指を下ろした。
「デザスターは最終戦まで正体がバレずに生き残っていられたら、デザ神の座を横取りできるフゥ〜!」
もうわかったからやめてほしい。ただ鬱陶しいだけだ。とりあえず今回のデザグラの違和感が、オーディエンスの存在だけじゃないのはわかった。少ないのだ。最初から参加者が。
「だから少数精鋭でのスタートってわけだ」
「正解〜!これは男女七人の仲良し共同生活なんかじゃない…疑惑と裏切りの、シェアハウス…!偽りの仮面を被ったライダーは果たして!誰だぁ〜!!!」
チラミはまたカメラに向かってアピールする。参加者全員の興味は既にチラミから、他の六人に移っていた。デザスターは誰か。
幸い学校は冬期の長期休暇。ボランティア部でしばらく泊まり込みで活動する、と伝えると、親父は案外すぐ納得してくれた。母も同様。相変わらず興味持たれてねぇなぁ…俺。まぁいいや。今はこの共同生活に慣れなければならない。特に意味も無いが、家から持ち込んだ外泊用のタープを立てた。ペグが地面に刺せるわけないので、ガムテープで無理やり固定。まぁプライベート空間を保持する意味で、開閉式のテント型に組み立てた。長い間使われてなかったみたいで、舞ったホコリが目に痛い。
その点五十鈴大智は用意周到。室内でも使えるテントを広げて、椅子も立て、既に外国語で書かれた哲学書を読みふけっている。橋結カムロはハンモックだけを置いて何処かに去ってしまった。プライベートとかは特に気にしないらしい。英寿は衝立でスペースを大幅確保。女子に至っては…
「あっ、デザグラってどこで放送してるの?ネットでもやってないみたいだし」
「はい。テレビでもネットでも見られません」
景和の奴がサロンに戻ってきていた。赤いラインの上に置かれたソファーに座ってツムリと会話している。オイオイそこは。
「景和っ、そこ」
「うわぁぁぁぁあ〜!」
俺の指摘よりも先に、我那覇冴がソファーごと景和をぶっ飛ばした。アスリートの筋力恐るべし。空中で三回転ほどして腰から落ちる景和。
「このラインからは男子禁制。立ち入ったらタダじゃ済まないよ」
「済まないよっ!」
五対二。女子の方が圧倒的に少ないのに、スペースは俺ら男子組の二倍は確保している。カーテンでしっかりと区切られ男子組は完全隔離。最も英寿は論外だが…景和は「もうただじゃ済んでないし…」とボヤきながらも散らばった荷物を集める。そこでようやく、各々が居住区を確保している事実に気付いたようだ。
「あっ…ちょ…えっ…」
俺のタープ、五十鈴大智のテント。橋結カムロのハンモックと英寿の衝立を見、ついでにカーテンの先も確認するが、既にそこも祢音のテリトリーで、男子禁制の叫びとともに投げ返されてしまった。
「俺の場所もう無いじゃぁ〜ん…英寿〜!ちょっと場所分けて〜!」
情けない声を上げながら、景和は浮世英寿と札が貼られた衝立にとぼとぼ歩く。五十鈴大智が視線を本から離さずに、声で景和を止める。
「いないよ。運営側と秘密のミッションの打ち合わせ、だったりして…?」
出たぞ、デザスター疑惑。既にこの共同生活から、戦いは始まっている。ただデザスターが誰かを疑っているばかりでは駄目だ。普段の振る舞いからも、疑われない様に注意する必要がある。勘違や当てずっぽうで指名されては、全部台無しだ。
「英寿がデザスターって疑ってるの?」
我那覇冴の問いに、本を閉じた五十鈴大智は指を鳴らす。
「まぁね。何故ギーツがハイライトという決め台詞を多用していたのか?んん?」
ハイライト……見どころ……そうか。つまり英寿は…
「正解は?デザグラがショーであることを知っていたから」
思いつく所はある。缶蹴りゲームでの、英寿の行動だ。英寿は景和を化かして、『ラスボスの攻撃からプレイヤーを助ける』というシークレットミッションをクリアした。あの時は英寿の経験則から来るものだと思っていたが…もしあのシークレットミッションが、オーディエンスが『ラスボスを倒すために助け合うライター達、その思いに応えて送られるニンジャバックル』を想像していたとしたら。
彼女のオーディエンスルームには、整理整頓されていない本があらゆるところに散らばっている。辺りを囲う本棚と、ぽかりと空いた穴にはめ込まれた瞳型のビジョンが、異質な空気を放っていた。本棚内の蔵書のジャンルはバラバラで、サイズも統一されていない。ただ雑に収められているだけだ。
「決めた…!次に奏斗にあげるバックルは…!」
本に埋もれたソファーにうずくまったモーンは、ニヤニヤと口角を上げてタブレット端末を操作していた。彼女は白いワイシャツにピンクの紐のリボン。パッチワークかのように不規則に白と黒の生地が混ざったジャンパースカートを着用し、三つ編みのお下げには、先端にかけてピンク色に変わっていた。これがサポーターとしての彼女本来の姿である。そんな彼女が持つタブレットの画面、三つの新しい小型バックルが映っていた。
夜も更け、シャワーを済ませてスウェットの寝間着姿になる。そして、タープの中で電池式のランタンを灯し、胡座をかいてとある書類とにらめっこをしていた。それは、三年生に進学するに当たっての、進路希望調査の書類である。二年生が終わりを迎えようとしている今になっても、進学か就職か、それすらもぼんやりしたまま。こんな事で、本当に大丈夫なのだろうか。
「で、デザイアカードになんて書いたのみんな」
外から景和の声が聞こえて、タープから這い出た。女子二人と景和がババ抜きに興じている。我那覇冴はまだ景和が信用ならないようで、冷たい態度で揃った札をテーブルに落とす。なんだかんだコイツもババ抜きに乗るんだな。そんなに悪い奴じゃ無いんじゃないのか。
「そんなのあなたには関係ないでしょ」
「誰がデザスターか、見抜く手がかりになるかもしれないでしょ?ちなみに俺は…」
「退場した人たちが蘇った世界、だろう?」
ここでも、五十鈴大智の推理が光る。景和の願いを言い当てた彼は、景和の解答を待たずに、矛先を祢音に向ける。
「本当の愛………デザイアグランプリの存在しない世界か」
ついでに俺も。彼に推理の余地を与えるようなヒントを残した覚えは無いが。景和たちだってそうだろう。一体いつ…
「どうしてわかった?」
「ちょっとした推理さ」
彼は眼鏡をトントンと叩くと、これまでの俺たちの行動の分析を語った。ジャマトを見て、迷うような目を見せた景和。オーディエンスに手を振り、自分が指示されているという実感を得る祢音。そしてゲームマスターに舌打ちして、不機嫌な態度を見せた俺。彼は観察していたのだ。参加者の一挙一動を淀みなく。
「ちょっとした行動で、人間の考えてることなんて、見えてくるものさ。君たちは特に単純で、わかり易すぎなんだよ」
は?思わずまたでそうになった舌打ちを、寸前で止めた。捨札の重なったテーブルの前に屈んだ五十鈴大智は、我那覇冴の顔を覗き込む。
「そして、君は…身体能力の維持」
「大体正解」
現状をより良くするのではなく、衰えない力を望んだのか。結果を残したいのなら、直接結果を願ったり、さらなる強化を願っても良かったはずだ。やはりそこはアスリート。正々堂々勝負したいってわけか。まぁ、現状を維持するほうが、一度の成功よりも長く利益を得られると言ったら、捉え方は変わるが。我那覇冴はすんなりと受け入れて、正解の喜びを噛み締める五十鈴大智に問を投げ返す。
「そう言うあんたは?」
「全人類の記憶」
「「「は?」」」
景和と祢音と声が被る。人間の記憶だと?頭が良い奴とは、発想が釣り合わない。
「知識こそが、最高の財産だからね」
解答になってないぞ、それ。
「そ〜い!できたぞ!」
バカでかい声をたてながら、エプロン姿の橋結カムロがサロンに入って来た。両手にお盆を構えていて、その上にはガラスの容器が人数分用意されていた。さっきからいないと思ったら、何か作ってたのか。橋結カムロはテーブルの散らばったトランプを、手際よく片手で纏めて除ける。
「橋結カムロ特製!ヘルシープリン!」
目にも止まらぬ早い手付きで、プリンが机の上に並べられる。ヘルシープリンと謳っているが、見た目は高級なプリンそのもの。黄色く色付いた土台に、カラメルのソースが美しく映える。それを見た景和と祢音は、子供のように目をキラキラ光らせた。
「すっご!これ、カムロさんが作ったの!?」
「え、ほんとに食べていいの?」
橋結カムロはスプーンを配りながら語る。
「当然だろう。チラミはあぁ言っていたが、曲がりなりにも暫くは共に暮らすのだからな。俺も仕事でいられる時間も少ないし、ちょっとくらいサービスさせてもらっていもいいだろう?」
甘いものが苦手なのか、差し出されたスプーンを断る我那覇冴。それを気にも留めずに、俺たちに食べろと促してくる。
「折角だから、君の願いも当ててあげようか?」
プリンの入った容器を眺めながら、五十鈴大智が口を開く。彼の推理が語られるよりも早く、橋結カムロは高らかに叫んだ。
「世界平和!それが俺の願いだ」
推理が外れたのか、五十鈴大智は怪訝そうな顔をする。以前同じ願いを持っていた景和も、スプーンを持ったまま固まっていた。
「俺の場合!料理の腕、センス、完璧な味覚。富に、名声まで既に全部持ち合わせているのでね。あとは、世界中の誰もが平等に飯を食えれば問題なし!そうだろう?」
五十鈴大智も我那覇冴も、もう既に一定の評価を得られている者は、考えが飛躍している。いや…気で負けるな。世界平和が叶っても、デザグラが終わるとは限らない。だから願ったんだろ。俺が。
「ふぅん。やっぱり…人の心というのは。でも…まだわからないのが一人いる」
「俺がデザイアグランプリのゲームマスターになっている世界」
五十鈴大智の目線は、入口で仁王立ちした英寿を捉えている。彼はまだユニフォームを着たままで、テーブルに置かれたプリンを掠め取った。
「まっ、俺が何考えてんのかわかんなくて当然だ。キツネだからな」
いつも通り、狐を指で作っておちゃらける。
「随分と、まぁ余裕な事で」
「パンダ君の言うとおりだ。そのままだと、お前の不敗神話も腐って終わる…なぁ、デザスター?」
橋結カムロの威圧に対しても、英寿は表情に綻びを見せない。互いに疑心暗鬼になって、ジャマトに殺られるなんてしょうもないことが起きなければいいが……デザスターには秘密のミッションがある。それを見抜けるかが肝だ。
「嘘つきはだれか?狐に狸、猫に狼。誰がデザスターでも不思議じゃない。逆に…無害に見える奴らもな」
パンダ、雀、アザラシ。どれも人に愛でられ庇護の対象になりやすい動物。だからこそ気づかない。そこに隠された…爪や牙に。
ちなみに、橋結カムロのプリンは絶品だった。
*
不良ジャマトが占拠している学校が見つかった。不良ジャマトたちは各々好き勝手に遊び回っていたが、こちらの存在に気づくと、喧騒を変えて寄ってくる。この学校の何処かに、校長ジャマトがいるはずだ。俺たちは特に合図していないのに、同時にバックルを装填して、仮面ライダーに変身した。
「へ〜ん「「「「「「変身!」」」」」」しんっ!」
『MONSTER!』『BOOST!』『NINJA!』
『BLAST!』『GOLDEN FEVER!』『ZOMBIE!』『BEAT!』
「校長ジャマトはどこにいるか…正解は?」
「校長室に決まってるでしょ!」
仮面ライダーロポ・ゾンビフォームが、校門をひらりと跳び越えて校舎へと駆け抜けていく。くそっ…先を行かれたか…!あっちはアスリートだ。ブーストでもない限りスピードじゃ叶わない。だけど…
「機動力で負けるかよ…!」
ブラストバックルの特性を最大限活用するのみだ。ロポと同様柵を飛び越し、不良ジャマトの頭部を踏み台にして自転車置き場の屋根に着地。ロポは既に校舎に入ってしまった。なら…上から探すか。ブラストのガスをギリギリまで噴射すれば、屋上に届く。しばらくは風による右足の怪我をサポートできないのがネックだが、やるしかない。
「お〜い!パンダ君!上に行くんだろ!?俺を使え!」
レイズシールドを装備したヘリアルが呼びかける。察しのいいヤツだな。技術者はサポート向きってか?まぁいい。使えるものは使わせてもらうぞ…!俺は屋根から助走をつけて飛び出す。狙いは、ヘリアルのレイズシールド。
「そうこなくっちゃ!」
『GOLDEN FEVER VICTORY!』
俺は左足で強く踏みつけると同時に、ヘリアルも必殺技を発動。レイズシールドを振り上げ、俺のジャンプをサポートした。作戦は成功。俺の視線は急激に空に近づき、屋上すらも眼下となった。着地しようとガスで角度を調整していると、屋上のフェンスに二体のジャマトが寄りかかっていた。片方はセーラー服を着て、金の髪色をした不良ジャマトにべったりくっついている。当にカップル、ジャマトの青春。
『BLAST STRIKE!』
空中で軌道を変え、カップルの喉元に両膝を叩き込んた。別に作為的な思いがあったわけじゃない。そう、ちょっとした出来心だ。
『SECRET MISSION CLEAR』
屋上の中央にミッションボックスが転送される。シークレットミッションは、カップルのジャマトを倒す、か。幸先が良いな…と宝箱に手を伸ばすと、違和感に気付いた。
「俺の…マーク?」
見たことがないマッドな白の宝箱の真ん中に、ダパーンのクレストが刻まれていた。今までは大抵ビックリかハテナのマークだったのに。まさか…シークレットミッションはオーディエンスが設定していたのか。存在がプレイヤーに公になって、誰向けなのかも隠す必要が無くなったか。
受け入れて、宝箱を開ける。運が良いのか悪いのか。入っていたのは三つの小型バックル。どれも初めて見るものだったが、形状自体には見覚えがあった。マグナムシューター、ニンジャデュアラー、ゾンビブレイカー。他の大型バックルから出現する武器が小型バックル化している。校舎の廊下は狭い。ならば…小周りの効くこれで行くか。
『SET』
『DUAL ON!BLAST!ARMED DUALER!』
『Ready?Fight!』
俺が選んだのはニンジャデュアラーだった。刀身を分解して両手持ちすると、階段から校舎内に侵入する。階段の踊り場でたむろしていた不良ジャマトを、ジャンプしながらの一閃で大量に撃破する。階段を飛び降りるように通過すると、そのまま三階の捜索を始めた。校長室を先に見つければ…俺の勝ちだ!
「よっしゃ〜!シークレットミッションクリアぁ〜っ!」
オーディエンスルームのモーンは、ニンジャデュアラーを操り疾走するダパーンに歓喜する。ブンブンと振った両手足が机とぶつかり、本の山が倒れたが、彼女が気に留める様子はなかった。
「校長探しに躍起になれば、屋上に目は行かない。屋上を通過する可能性があるのは、縦移動に優れたブラストバックルを持つ者だけ。あなたにしては考えましたね」
冷静な分析をしながら、オーディエンスルームに入室した者がいた。その男はソファーに積まれた本を地面にどかすと、モーンの隣に座る。
「芹澤くん」
「ハイトーン。あなたがつけた名前なんだから、しっかり覚えてくださいよ」
入室したのは仮面ライダーハイトーン・芹澤朋希だった。運営側の彼がここにいる理由とは……
三階に校長室らしきものは無かった。となると一階か…?正面から軍隊で攻めてくる不良ジャマトを、両手のニンジャデュアラーですれ違いながら両断してゆく。倒せど倒せども、二階の階段からも不良ジャマトがわらわらと溢れ出て、逃げ道が塞がれる。俺は廊下の窓ガラスを突き破って外に身を投げ出し、急旋回して空いた窓から二階の廊下に飛び込んだ。二階の廊下には机と椅子のバリケードが敷かれていて、ロポが追跡を許さぬスピードで校長室を探していた。
「おい!一階と二階は!?」
「無かったけど!」
「おいおい…三階にもなかったぞ!」
ロポがバリケードをハードルのように跳んで横を通り過ぎる。バリケードを蹴り倒して不良ジャマトの進路を妨害。立ち止まったロポと会話する猶予を稼ぐ。
「校長ジャマトはどこ!?」
「どっかに隠れてんだろ」
「校長室がいないのなら!誘き出すのが妥当だろう!」
俺たちの会話にヘリアルが割り込んできた。他の四人もいる。廊下は七人のライダーと大量の不良ジャマトで、大混戦状態となった。その中でもヘリアルはレイズシールドでガードしつつ、落書きに使われたであろう赤いスプレー缶を拾い上げる。そして、クリーム色に黄ばんだ壁にすらすらと地図を描き始めた。器用なもんだ。
「二階の第三会議室に誘き出すのがいいだろう!そこの窓から中庭に抜けられる」
「ならば……ギーツ!あいつを倒せ!」
不良ジャマトを片手で抑え込みながら、ナッジスパロウが指示する。校長ジャマトを誘き出す予定の部屋に、机に行儀良く座っているジャマトがいた。参考書にルーズリーフのノートを開いて…不良じゃない?
「勉強してる…害は無さそうだけど?」
「ジャマトに変わりはない」
タイクーンはああ言っているが、ギーツは右腕のマフラーから炎を吹き出し、ガリ勉のジャマトを猛スピードでジャマトを殴りきった。ジャマトは特に抵抗する間もなく粉砕される。
『SECRET MISSION CLEAR』
「思った通りだ」
「不良じゃないジャマトを倒せ…?なんかかわいそ」
勉強道具が散らばった床に、ギーツのクレストが刻まれたミッションボックスが転送される。ギーツがしゃがみこんでそれを開くと、中にあったのは、あの仮面ライダーシーカーが愛用していたバックル。黄土色のレバーに小型バックルを格納した、パワードビルダーバックルだった。
「へぇ…こいつは意外なバックルだな…面白い」
『REVOLVE ON』
ドライバーを反転させ、左側のスロットを開けると、そこにパワードビルダーバックルを装填。レバーを引いて、仮面ライダーギーツ・パワードビルダーブーストフォームに変身する。
『SET CREATION!』
『DEPLOYED POWERED SYSTEM!GIGANT BLASTER!』
「さぁ、ここからが、ハイライトだ!」
大型の武装、ギガントブラスターを両手に抱えたギーツは、教室を分断するようにセメントを発射。一気に校長室を建設した。
「校長室が無いなら、作ればいい」
程なくして、三分後。
校長ジャマトはノコノコと現れた。ギーツのセンスで掛け軸や盆栽が飾られ、高級感溢れるレザーのソファー。そこに深々と座った校長ジャマトは、扇子を開いてくつろいでいる。その様子を俺たち四人は天井と壁の隙間から覗いていた。
「今だ!」
タイクーンが壁を乗り越えて校長ジャマトに一撃…!
「だぁああ!」
その直前で、ロポが校長ジャマトを掻っ攫った。さらにナッジスパロウとヘリアルを続く。ロポはバーサークローで校長ジャマトをがっちりと掴み、窓から中庭に移動した。
「はやっ…!」
俺たちも急いで中庭へと降りる。ロポに投げ飛ばされた校長ジャマトを、庇うように不良ジャマトがぞろぞろと現れる。中には火炎瓶を持っているやつもいた。
「校長先生、生徒に愛されてるね」
「ちょうどいい!ここで纏めて片付けてやろう!」
「勝つのは私だ…!」
ロポ、ナッジスパロウ、ヘリアルの三人は、意気揚々と不良ジャマトに突撃する。俺たちも遅れを取ってはいられない。俺はニンジャデュアラーをシングルブレードに戻し、水切りをするように水平に投げた。ニンジャデュアラーは回転し、ブーメランの様に円を描いて不良ジャマトの火炎瓶を叩き落とす。そんなもん投げられちゃたまったもんじゃないからな。さらに迫る鉄パイプをハイキックで跳ね返し、回し蹴りを繰り出して退ける。そして不良ジャマトの肩を掴んでガスを発射。空中で戻ってきたニンジャデュアラーをキャッチし、着地に合わせて体を捻って一斉に斬り伏せた。
中庭の奥では、ギーツがギガントウエポンを次々と変えて校長ジャマトを追い詰めている。そんなギーツに背後から、火炎瓶を投げようとしている不良ジャマトがいた。俺は叫んで注意を促そうとしたが、先に不良ジャマトが火炎瓶を投げた。しかし、その火炎瓶はギーツに到達することはない。
「後ろ失礼!」
割り込んだヘリアルがレイズシールドでカードしたからだ。
「せいっ」
ヘリアルはレイズシールドを学校の壁に向かって投げる。壁と激突したレイズシールドは不良ジャマトめがけて跳ね返り、数体を殴打してヘリアルの手元に戻ってきた。マジで器用だなと感心する。
「決めろ!ギーツ!」
「あぁ。不敗神話…見せてやるよ…!」
『BOOST TIME!』『GIGANT STRIKE!』
ギーツはブーストで必殺技を発動。その効果で大剣、ギガントソードをさらに巨大化。展開したアームで振りかざして、圧倒的質量の差で校長ジャマトを斬り倒し…いや、潰して撃破した。同情しないでもない。
ゲーム終え、デザイア神殿に帰ってきた。でも、そこを取り囲む大量のカメラには嫌悪感が湧いて落ち着かない。人の生死をエンタメとして消費することよ、何が楽しいのか。
「皆さん、お疲れ様でした。一回戦では退場者ゼロ。そして…」
空中に表示されたのは、初めて見る円グラフだった。俺たちライダーのクレストに、%の記載…なんだこれは?
「現在の支持率です!ゲームの内容次第で、オーディエンスが評価を下し、ライダーの皆さんの支持率は変動します」
支持率?ということは待てよ…俺の数値は…
「ナッジスパロウ、25%。ロポ、25%。ヘリアル、25%。ギーツ、15%。ナーゴ、6%。ダパーン、3%。タイクーン、1%!」
「1パー………」
景和はその場でうなだれる。俺だってそうだ。折角シークレットミッションもクリアしたのに…3%て。これまでのシーンズンで他人の邪魔ばっかりしていたからか、元からの評価が低いらしい。わかってても、結構心にくるぞ。他人からの評価が可視化されるというのは。
「最終戦をクリアした段階で、最も支持率の高いプレイヤーが、デザ神となります」
「なるほど…ただジャマトを倒せばいいってわけじゃないのか」
つくづくエンタメに振り切ったルールだ。でも、やりようによっては、英寿らより怪我で動きが制限される俺でも、チャンスが巡ってくるかもしれない。オーディエンスに媚びを売るのはまっぴらごめんだが。
「勝利に繋がるシークレットミッションを見つけたナッジスパロウ。一番速く校長に辿り着いたロポ。そして、的確な動きでプレイヤーをサポートしたヘリアルに、オーディエンスの支持が集まっているようです」
「結果だけじゃなく、過程も大切ってことね」
「面白いルールだ。だからこそのデザスターか…!」
「ギーツの不敗神話は続くのか?正解はNOだ」
果たして俺たちは、この癖の強い三人を下して、デザ神となれるのだろうか。いや、なって見せる。俺はデザイアロワイヤルを通して学んだ。願いは、ただ叶えられれば良いわけじゃない。叶える人間の本質が、世界を左右するのだと。誰にも勝ちは譲れない。俺がデザ神となる…!
*
運営によって秘匿された施設、ジャマーガーデン。
この農園では、デザイアグランプリに敵キャラとして投入されるジャマトが育てられている。ジャマトの生育には、土、水、光。それら一般の植物に必要な条件だけでは、十分な成長ができない。絶対的に必要なのは、IDコア。人々の記憶を養分に、ジャマトは学習し進化する。
吾妻道長も、その養分になるはずだった。
それがどうしてか、今も生きながらえジャマーガーデンの温室に佇んでいる。見上げた大樹には、ジャマトの幼体が数多ぶら下がり、人間の産声を模倣しひしめき合っている。この世のものとは思えない光景に、道長はただ言葉を失うのだった。
「おぉ〜新入りかなぁ?君はルークか?ビショップか?」
道長に声をかけたのは、黒いローブの男、ムスブだった。彼もまたジャマトの一人であり、名をアクエリアスキメラジャマトという。複数の海洋生物の能力が継ぎ接ぎとなった特に珍しい変異種である。ムスブは道長をジャマトだと勘違いし、彼に触れようとする。
「ふざけんな。お前らと一緒にするな」
伸ばされた左腕を、道長は掴んで止めた。怒りの込められた手の握力は凄まじく、血管が浮き出ている。だか明らかな拒絶反応に、ムスブは心が踊ったようだった。
「そうか…そうか…君はまだ人間なのか。ジャマトは良いよぉ。全てのライダーをぶっ潰すには、借り物の力だけじゃ心許ないだろう?」
カゴに重ねられたデザイアドライバーを手に取るムスブ。
「君の理想の手伝いをしてあげようか?僕も仲間にしたい人がいてねぇ…協力すれば、互いの願いを効率的に叶えられる。チームアップさ」
「お前らの手駒になる気はない…」
ムスブの肩とぶつかりながら、道長はその場を後にした。
「ふぅ〜ん。どうせ逃げ場なんてない。君と、僕は、同じ存在になるんだ。墨田奏斗も、必ず手に入れて見せるよ」
ムスブはフードを脱いで、大きく目を見開いた。
DGPルール
参加者の中にはデザスターがいる。
もし最終戦まで正体がバレなければ、
デザ神の座を横取りできる。
さぁ、裏切り者は誰だ?
次回:仮面ライダーギーツ外伝
「今回は仲良く団体戦ってわけね」
─ジャマーボール戦!─
「得意分野だ!」
─ゴールを決めろ!─
「わかっちゃった。デザスターが誰か…」
「違う、俺じゃない…!」
22話 発露Ⅱ:激戦必至!ジャマーボール合戦!