先日、UA数一万回を突破しました!
ここまで伸びることが出来たのも皆様のおかげです!
本当にありがとうございます!
そして、至らぬ私の駄文の誤字訂正をしてくださる読者の方、感想を送ってくださる読者の方、ここすき投票してくださった読者の方、いつも反応、励みになっています!
まだまだ奏斗君の物語の先は長いですが、TV本編の展開に伴い、この作品のストーリーも加速してゆくので、どうぞお楽しみください!
デザイアグランプリ新章・第二回戦、ジャマーボール。チームでボールを奪い合い、ゴールを決めろ。前半戦、英寿や冴さんの活躍によって点数を稼ぐも、奏斗の怪我や景和の不調もあって、負け越したまま後半戦を迎えてしまう。さらに、仮面ライダーナッジスパロウ・五十鈴大智くんが、景和がデザスターであるとカミングアウト。チームの意思はバラバラになっちゃって、連携もままならない。
(景和…大丈夫かな…?)
私と英寿がゴール下に戻ると、ちょうど冴さんが景和を糾弾しているところだった。奏斗が脚を引きずりながらも、何とか仲裁しようとしている。
「あなたがデザスター!?」
「待て…今は俺達で争ってる場合じゃない!」
「でも…彼のせいで何度も失点している!デザスターでもおかしく無い!」
景和は言い返す素振りを見せない。思わず、景和を擁護するような言葉を口に出してしまいそうになる。だけど、直前でそれを抑えた。今はまだ流れに乗っておかないと…大智くんが私を疑わなかったのは幸運だった。当てずっぽうが、偶然っていうのもある。
「皆…僕は大丈夫だから、何とか巻き返そう。ジャマトは僕がぶっ叩く。ボールを頼むよ…!」
大智くんが、大袈裟に痛がるふりをしながら冴さんにニンジャバックルを渡す。一瞬、景和を庇おうとした奏斗を睨んだように見えた。やっぱり大智くんの狙いは、景和を疑わせて落とすこと。
「わかった…そこで大人しくしてて」
景和を助けないこと、心が痛む。だって彼は、"デザスターじゃない"から。
「ネコ君。オオカミ君とギーツがゴールを決める!俺たちはサポートだ!」
「…う、うん!」
カムロさんの大声には、いつもペースが奪われる。彼の前ではうっかりボロが出てしまいそうだ。
ジャンプで登ったビルの屋上には、ジャマトがうじゃうじゃ。どう考えたって、戦力差がおかしい。前半戦ですらギリギリだったのに。
『MONSTER STRIKE!』
後方から飛んできた、ナッジスパロウの拳型のエネルギー弾が、数体のポーンジャマトを撃破する。だけど、直ぐに新しいポーンジャマトが転送されてきて、冴さんの変身する仮面ライダーロポ・ニンジャフォームは足止めをくらった。私にパスが回ってくる。
「向こうにだけ交代要員がいるなんて卑怯!」
卑怯でもなんでも、やるしか無いんだ。冴さんと並走しながら、交互にパス回しをして、ポーンジャマトの突進をかいくぐる。今度はジャマトライダーが送電盤の陰から現れて、ボールをもぎ取ろうと迫る。大切なのは、パスをしやすい位置取り…ここで最適なパスは!
「はっ!」
地面にボールを投げてバウンドさせると、冴さんがジャンプして取ってくれた。よし…練習の成果出てる!さらに私に手を伸ばしていたジャマトライダーも、カムロさんが横からニンジャデュアラーのシングルブレードで斬り倒して処理してくれた。もう一個のボールも英寿が死守してくれていて、ぐんぐんゴールが近づいていった。
できれば高得点の五点を狙いたいけど、奏斗みたいにルークジャマトに邪魔されるかもしれないから、近距離で確実に。ゴール下で待機していたジャマトライダーを、私のビートアックスとカムロさんのニンジャデュアラーで地面に抑え込む。その間に、英寿と冴さんが同時にゴールを決めてくれた。一気に六点が入って、17対16。やっと私たちは逆転に成功した!
「やった!やったよ冴さん!」
「よしっ!」
私と冴さんは、嬉しさのあまりハイタッチする。
でも、その喜びも束の間だった。
「いや、油断するな!」
カムロさんが叫んだ瞬間に、赤黒いエネルギーを纏ったボールが放たれた。ルークジャマトだ。腕にボールをねじ込んで、ビームごとボールを投げた。そんな反則あり……!?
「ゴールは決めさせん!」
「っ!よせ!ヘリアル!」
英寿の静止を待たずに、カムロさんはニンジャフォームの能力でボールの射線上にワープ。両腕で抱え込んで、ボールを止めようとする。
「ぐっ!おおおおおおおっ!」
でも、それだけじゃ止められなくて、カムロさんは弾き飛ばされ、離れのビルに激突した。そして、ボールはゴールへ一直線。受け止めたジャマトライダーがゴールを決めて、また二点差と逆転された。
「そんな…」
まだまだ、ゲームは始まったばかりだった。
*
ジャマトに二点リードしたかと思ったのも、一瞬だった。ルークジャマトが放った超ロングパス。その勢いにヘリアルもやられ、ディフェンスも追いつかぬままゴールを決められてしまった。ロポもナーゴも連携を上げてきていた。オフェンスの方は問題ないと思っていたが、如何せんボールが二つに増えているのが厄介すぎる。オフェンスかディフェンスか、迷っている内に相手にゴールされてしまう。落ちてきたボールを拾いながら考える。恐らくヘリアルは暫く動けない。ただでさえディフェンスの層が薄くなっているのに、オフェンスまで減っては、いつまでも追いつけない。
「ダパーン。君も前線に上がってくれ。僕たちもガンガン点を稼いで、リードするしか無い」
「……わかったよ」
ナッジスパロウの提案を受け入れ、俺もゴール目掛けて飛び上がる。景和…これ以上厄介事を起こさないと良いが。
戦いのメインとなる屋上では、ポーンジャマトが厚い層を作っている。それをマグナムシューターの牽制でどかしながら、ガス噴射を織り交ぜた大ジャンプで一気に飛び越え、ルークジャマトらとボールを巡って交戦している他のライダーに追いついた。
「おい!ヘリアルは!?」
ジャマトライダーのストレートを銃身の腹でガードしながら、近場でボールを抱えていたギーツに問いかける。
「まだだ!恐らく重症を負っている。暫くは戻って来ない…!」
ヘリアルが戦線離脱…!だったら…ボールを二個持っている今がチャンスだ。
「俺が攻撃に戻る…!守りは捨てよう!ここで決めるしかない!」
「だけど…あなたの怪我は!?」
ロポの指摘の通り、ヘリアルのテーピングが緩んできて、またズキズキと痛み始めていた。でも…今までブラストバックル無しでも何とか戦ってきたんだ。投擲でもなんでも、脚をかばう戦い方はいくらでもある。ここで降りられるか。
「…やばいって言ったら嘘になるけど、負けるほうがやばいだろ」
「……私が距離を稼ぐ。五点が厳しいなら、無理せず近距離、いい?」
ロポはなんとか納得してくれた。彼女にボールを渡すと、ジャマトの攻撃をかいくぐって、目にも止まらぬ速さで走っていった。ナーゴもそれに追随する。俺も速く…!
「ダパーン、頼みがある」
踏み出そうとした足を、ギーツの呼びかけに止められた。
「銃を貸してくれ」
わざわざ俺から戦力を奪おってか……いや、今はこいつを敵に回さないほうが先決だな。これ程の化かし上手だ。疑うのはまだ早い。ベルトからマグナムシューターバックルを外して、ギーツに投げ渡した。
「何か考えがあるんだろうな?」
「ああ。いずれ必要になる」
ロポは宣言通り、どんどん距離を稼いで、五点ライン寸前のところまで来ることが出来た。パス回しの結果、ロポの後方にいるナーゴにもう一つのボールがある。ギーツの頼みには、乗ることにした。あいつにも考えがないはずはない。だったら信じる。それがデザスターと疑われないためでもあるから。ギーツは右の大回りから、俺は反対側から進軍して、ジャマトの戦力を分散しつつ進んできた。
センターラインを走っていた二人から、俺達にパスが回ってきた。
「奏斗!」「英寿、おねがい!」
前転しながら確実にパスを受け取り、即座に力いっぱい込めて投げた。渾身のシュートは誰にも邪魔されることなくリングを通り抜けゴール…!自身初の五得点に、小さくガッツポーズをする。しかし、すぐ異変に気付いた。ギーツがゴールを決められていない。なぜだ?
「……あいつは…!?」
英寿の前に、新たなジャマトが佇んていた。あいつの姿形は忘れない。かつて戦艦ゲームで俺と青山を瀕死に追い込んだ、あらゆる水生生物がツギハギとなったジャマト。アクエリアスキメラジャマト、またの名を変異ジャマト。何でここにいる…?ジャマトの増援か…!?
「久しいなぁギーツ!」
「お前か…!」
変異ジャマトは肩の棘を外して、剣のように構える。二人は知り合い…でも、他の奴らは初合わせのはず…!
「何なのあのジャマト!?」「英寿が危ないよ!」
二人の戦いに加勢しようとするロポとナーゴを、声で止めた。
「待て!奴の剣には毒がある!」
『GIGANT SWORD!』
そうこうしていると、変異ジャマトの棘とギーツのギガントソードが激突した。正面で火花を散らした刃を、変異ジャマトが右に流す。そして左腕のシャコガイを、ギーツの腕ごとボールを奪おうと伸ばす。ギーツはそれを身体を仰け反らせて避けた。奴の狙いは…多分俺だ。なら…!
『BLAST STRIKE!』
ロポとナーゴの頭上を飛び越え、変異ジャマトに左腕のキックを放った。が、読まれていたようで、腰から伸びた無数のヤシガニの足に絡め取られ、投げられてしまった。その先でギーツとぶつかり、変異ジャマトに距離を取られる。
「英寿、コイツの狙いは俺だ」
「何…」
膝立ちとなったギーツは、変異ジャマトを睨みつける。
「おぉ、まさか君の方から来てくれるなんてねぇ」
「お前の戯言に付き合うつもりは無い…!」
「いいね!そういう反応を期待してたんだ!」
変異ジャマトが腰から生えたヤシガニの足を地面に潜行させる。すると、地面から無数の足が一斉に生えてきて、ギーツと俺は囲まれてしまった。これでは、外にパスを回すこともできない。いや…むしろ好都合か。ボールが一つになれば、攻めか守りかどちらかに専念できる。問題は…変異ジャマトが只者じゃないってことだ。
「来るぞ!」
ギーツが俺よりも速く前に出て、ギガントソードを横に大きく振る。変異ジャマトはまたしても棘で受け…ると見せかけ、寸前で棘を引き、反対のシャコガイでギガントソードを挟み込む。が、それすらもギーツは読んでいたのだろう。挟まれたギガントソードを引いて、変異ジャマトの体制を崩し、前傾姿勢になった胴体に膝蹴りをくらわせた。これには変異ジャマトもたまらず身を引く。
「ダパーン、俺達でこいつを食い止める!行けるな?」
「当然だろ…こいつには借りがある!」
俺とギーツ。そして変異ジャマトの、狭いフィールド内での持久戦が始まった。
ゲームマスターの執務室にて、ジャマーボール合戦を、チラミが観戦している。彼は大荒れの展開となったゲームに、惚れ惚れしている様子だった。
「いいじゃな〜い。プレイヤー同士の疑心暗鬼、まさかの敵の乱入!盛り上がってきたわぁ〜!」
現在、デザスターだと追い詰められたタイクーンは動くに動けず、ギーツとダパーン両名はボールを抱えたままアクエリアスキメラジャマトに足止め。さらにヘリアルは戦線離脱状態となり、得点を稼げる状況にあるのは、ナーゴ、ロポ、ナッジスパロウの三名のみ。ジャマトとの人数差もあり、試合運びは難航を極めている。ジャマトの街への被害など考えない攻撃に、直ぐに点差を離されてゆく。
一人ひとりの仮面ライダーの動向をモニタリングしていると、チラミは一つの違和感を覚えた。
「………ふ〜ん。そういうことねぇ…」
だが彼はその違和感の正体さえも、エンタメとして消費するつもりであるようだった。
圧倒的に不利な状況であっても、残りのメンバー達は頑張って点を獲得してくれた。やはり、ロポとナーゴの連携度の上昇が大きいか。でも、どうしてもジャマトとの人数差は埋められず、相手の大量得点を許してしまった。28対38。ボールは一つここに留まっているし、もう一度二回同時に五点のシュートを決めることなんて、できるのか?
「よそ見は良くないよ!」
変異ジャマトの刺突を、左に身体をそらしてスレスレで避ける。だがそこでまた足が痛んで、バランスを崩した不意にヤシガニのフィールドにぶつかってしまった。深くダメージが入り、背部のアーマーに傷跡が残る。俺も限界が近づいていた。
「まずいよ!もう時間がない!」
フィールドの外にいるナーゴが、ゴールを見ながら叫ぶ。気付かぬ間に、残り時間は三十秒を切っていた。ここから逆転する手立てなんて…!
「まだゲームは終わっていない。ダパーン、奴を頼む!」
「ちっ!しくじんなよ!」
『REVOLVE ON』
もう迷っている時間なんて無かった。ブラストのアーマーを上半身に移動させ、変異ジャマトにしがみつく。そして、両腕から思いっきりガスを逆噴射。自分ごとヤシガニのフィールドに押し当てた。変異ジャマトの顔面が、ヤシガニのフィールドに擦れる。だがそれはこっちとて同じ。長くは持たない…!
「ははっ、やはり君は面白いことを考える!」
『DEPLOYED POWERED SYSTEM!GIGANT SHOOTER!』
俺からマグナムシューターを借りたのはこのためか。ギーツはフィールド唯一の抜け道である空にボールを蹴り、弾丸をボール目がけて発射。その衝撃で進行方向を変え、ゴール方向へと運ぶ。
「ナーゴ!ボールを投げろ!」
「うん!」
ナーゴがゴールに向けて投げたボールも、ヤシガニの足の隙間から弾丸を通して、軌道調整。まさかの超ファインプレーで、ボールは二個同時に五点ラインを通過、見事ゴールした。それと同時にタイムアップとなり、後半戦の結果はドローとなった。
「…あー。してやれたな。じゃ、また今度ね、奏斗君」
ゲームの結果を見た変異ジャマトは、急に興が削がれたかのような素振りを見せ、液状化して消えた。同じタイミングで、鎧が負荷に耐えられなくなり、自動的に変身解除してしまった。倒れそうになったところを、英寿が肩を貸してくれる。
「なんとか間に合ったな…」
「おかげでな、英寿」
俺は英寿から返却されたマグナムシューターバックルを受け取った。ヤシガニのフィールドが消え、喜び合っているロポとナーゴの姿をようやく見ることができた。変異ジャマト、この後も出てこないと良いが…
『後半を終えて、38対38の同点。ゲームは明日の延長戦にもつれ込みます』
*
「…本当に景和がデザスターなのかな?」
明日の延長線に向けて、トレーニングルームに缶詰になっていた私は、トレーニングに付き合ってくれた冴さんに問いかけた。勿論、景和がデザスターであるはずがない。大智くんの作戦に乗るのが、正しい選択であることもわかっている。それでも、私は信じられる人を落とす気にはなれなかった。なら、他の皆を説得するしか無い。
「どうしてそう思うの?」
「その話、俺も聞きたいところだ」
トレーニングルームに、新たな入室者が。カムロさんだ。後半戦では最後まで復帰ができなかった理由も、彼の姿を見ればよく分かる。頭を強く打ったのかも、額から後頭部にかけて包帯でぐるぐる巻きになっていて、右目にまでかかっている。なんとカムロさんは、私に透明なプラスチック製の水筒を投げてきた。キャッチすると、中に輪切りのレモンが浮かんでいる。レモン水だ。なんてオシャレな。
「え…これ貰っていいの!?」
「あんた……そんな状態でわざわざ作ってきたの?」
「オオカミ君。君の分も一応あるが、試合前は手料理を食べないのだったな」
この人全然質問に答えないよね…レモン水を一口含んでビタミンCを補給すると、一気に疲労が回復していく感じがした。気を持ち直して、景和の話へと戻す。
「景和って…根っからの良い人だからさ。ジャマトが退場した人かもって、守ろうとしたんじゃないかな」
「…なるほど。期待外れだな」
「え…?」
この話聞いて、普通その返答になる!?カムロさんは地面に置きっぱなしにしていたボールを、ゴールにシュートする。
「タヌキ君の"守るべきリスト"の中にジャマトが入っているのか、気になっただけだ」
動作に一寸の狂いは無く、リングとぶつかることすら無くすんなりと落ちていった。
「どういうこと?」
「彼の願い、元々世界平和だったんだろ?もし、ジャマトも救いたいと思っているなら、彼は大物になると思ったのだがな」
ジャマトを救いたい…もし、景和だったら。
「でも、ジャマトが本当に人間なら、景和は救いたいって…言うと思うな」
「…逆にあんたはどうなの?願い、世界平和なんでしょ」
確かにそうだ。冴さんの指摘にハッとする。
「じゃあ!カムロさんはジャマトも助けたいって思ってるの!?」
「う〜ん…まぁ、彼らが人間を襲っているうちは無理だね」
結露のせいか、ぶら下げた水筒が少し下がったように感じた。
食堂の子どもたちの顔は、相変わらず晴れない。幸い、何日か分の食材があったから、また上遠の手伝いをして子どもたちに振る舞った。ご飯を食べるときだけは、少し笑顔になってくれる。ジャマーボール合戦でボロボロになった俺のほうが、心配されたくらいだ。
大人しく夜ご飯を食べているのを確認すると、大田原まみに世話を任せて、蛍光灯で無機質に照らされた廊下に出た。
「先輩」
「うおっ!」
まだ二、三歩歩いただけなのに、上遠に背後を取られていた。まだエプロンと三角巾をしている。よく背後取られるな…
「……本当は、カレーの日に話すつもりでした」
上遠が三角巾を取る。やはりこいつ、俺と喋るのに迷いがない。記憶がリセットされたんじゃないのか…?
「………あの日の言葉、僕は嬉しかったです」
「…なんで…」
やはり覚えている。迷宮脱出ゲームで決めた、彼の事を笑わない、見捨てたりしない、そういう約束。
「…迷宮のこと、長らく忘れていました。けど…子ども食堂で働いている時にふと思いだして…先輩と、もう一度話がしたいと思ったんです。約束を守ってくれた、先輩に」
運営の記憶消去にもガバがあるのだろうか。上遠が何時も五時半には部室から姿を消すのは、子ども食堂で料理を振る舞うためだったのだと、理解する。俺は黙って上遠の話に耳を傾けた。
「昔…僕には年の離れた兄がいました」
上遠は廊下を端から端に見渡すように、視線を動かす。まるで、走り去る子どもを目で追うように。
「兄は聡明で、目的意識のはっきりした人間でした。自分の料理で皆を笑顔にしたい。そう本気で思っている人間でした。僕はその背中に憧れて、兄と約束したんです」
その兄の実年齢はわからないが、料理という特技から橋結カムロの姿を連想した。しかし、直ぐに奴の大声で話す姿に掻き消される。もの静かな上遠のイメージとは、かけ離れていた。
「いつか僕も料理人になって、兄と一緒に働くって」
そこでまた、上遠の顔にかかる影が暗くなったように見えた。切れかけの蛍光灯が、小刻みに点滅している。
「でも……兄は火事で亡くなりました」
上遠は胸ポケットから出したスマホの画面を見せてくる。『レストランで火事、男性一人行方不明。死体見つからず』と古いニュースサイトに記載されていた。行方不明となったのは、上遠
「最初は…信じられなくて……僕も料理人になるっていう…約束だけが残りました……それから、何年も料理の練習をし続けて…そしたら、約束も忘れられるんじゃないかって」
彼の声が震える。俺も大切な人を失った身として、夢を駄目にした者として、痛いほど共感できる話であった。彼が五時半に必ず部室から消えるのも、子ども食堂のボランティアに参加するためか。全ては、約束を果たすために。
「…結局。約束は消えませんでした。きっと、呪いなんだと思います。約束は…だから、もう、守れない約束はしないことにしたんです。誰かと話せば、約束が増える。怖かったんだと思います」
それが、上遠が人と話さない理由か。
「でも、先輩が迷宮で伝えてくれた言葉に…救われた気がして……」
俺の…言葉?
「破れる約束なんて、約束じゃない。あなたが言ったんです」
上遠が、目にかかった前髪を掻き分ける。迷宮の時にした仕草と同じだった。あの日、確かに俺はそう言った。上遠を説得するために、必死だった。まさか、そんなに響いていたと思いもしなかった。
「呪いが解けたように、感じました。約束に囚われすぎていた。踏ん切りがつくまでは、もっとゆっくり、頑張ってみようって。約束が…"夢"になってくれるその日まで」
今シーズンのデザイアグランプリが終われば、上遠の記憶はまた消える。でも、この瞬間だけでも、俺は彼が救われたことが嬉しかった。俺の記憶に振りまわされた戦いの日々に、意味が生まれたような気がしたからか。
「ありがとうございます、先輩。これが言いたかったんです。先輩の約束が、呪いにならないように、僕は願ってます」
俺の返答を待たずに、上遠は扉を開いて、子ども食堂に入っていった。彼の居場所である、明るい光で満ちた場所へ。俺は、脱力したように壁にもたれた。
「俺の約束ね…」
そして、俺はすぐに思い出した。
俺には、守らなければならない約束がある。
サロンの寝床へ戻ろうと、バックヤードを歩く。後片付けに時間がかかってしまい、時間は既に十時だった。明日の延長戦に備え、早く寝たいところだ。が…サロンに入ろうとした足が、地面に貼り付いたように離れなくなった。サロンから異臭…いや、焼き肉臭がする。誰か焼き肉でも行ったのか…?俺は入口のそばの壁にへばり付き、そーっと中を覗く。
「やっぱり肉は牛だな…」
「うん…。でも、夜食の域超えてない?」
英寿と景和…夜食にステーキ食うなっての…!英寿は美味そうにステーキを頬張る。よく夜にそんな脂っこいもの食えるな。絶対俺より胃袋若いだろ。
「牛といえば…バッファに会った」
「は?」
衝撃の事実に、思わず声が出る。仮面ライダーバッファ・吾妻道長。前シーズンの最終戦で、退場したと聞いている。俺は実際にその瞬間を見たわけではないが、デザイアロワイヤルの動乱の中で一時的に復活した時は、彼もその事実を受け入れていた。生きているはずはない。でも…デザイアロワイヤルの収束に伴って俺の願いが取り消された時に、彼の消滅を見たものはいたのだろうか?いや、誰も見てない。もし、あの時の彼が本当に生きていたとしたら。
(どういう事だ。なぜ俺が生きている)
最初にコスプレ喫茶で会った時の彼の発言を思い出す。今にしてみれば、何故自分の死を前にしてあそこまで冷静だったのだ。彼は、生きていることを自覚していた…?
「ウソでしょ…!?退場した人って、元の生活に戻れないんじゃ…」
「あいつは生きているのは自分だけだって言ってた…その言葉を信じるなら、他の退場者はもう…」
英寿の言葉に、景和は沈黙する。一瞬でも、そのシロクマさんとやらジャマトとして生きていることに期待したのだろうか?
「ま、どんな悲劇だろうと救えるのがデザグラだ。理想の世界を叶えさえすればな。そのためには………デザスターだというやつに投票しないとなぁ…」
「英寿は俺のこと、信じてくれるんだ」
ナイフを動かす英寿の手が止まる。
「俺以外に投票してなかったの、英寿だったんだね」
確かに…景和を除いて、投票をしていないのは二人いた。それはいったい誰だったのか、気になる所だ。
「俺はそんなつもりで言ったわけじゃない。誰かを疑わせるか…それとも信じさせるか…これはそういうゲームだ。信じてほしかったら証明して見せろ…自分はデザスターじゃないってな」
延長戦は明日。俺はスパイダーフォンを取り出す。投票を変えるか否か、心はもう決まっていた。
「死とは…リアルで無ければならない」
ジャマト化が進行し、気絶した吾妻道長を見下ろすニラムとサマス。彼らが佇む路地の角から、ローブを着たムスブが現れた。何時ものスタイルとは違い、フードは脱いでいる。
「……やっぱりジャマトになったか。嬉しいねぇ…また"お友達"が増えるじゃないか」
バッファの前にしゃがみ込んだムスブ。そんな彼の喉元をサマスが掴み、上へと持ち上げる。
「おやおや。随分と手荒な歓迎だなぁ…」
「ゲームの不正な関与。ツムリにも止められていたはずです」
声を低くして威嚇し、さらに首を締め上げるが、ムスブが苦しむような様子はない。逆に、笑顔に満ちた表情を見せる。
「そのへんにしておけ。アクエリアスキメラ。もし君がリアリティーに反さない者ならば、"上遠橙吾の姿"はやめておけ」
サマスは二ラムの指示に従い、ムスブを地面に戻す。
「わかったよプロデューサー、様。この姿、かなり気に入ってたんだけどねぇ…」
上遠橙吾の姿をしたムスブは、フードを被り直した。
*
決戦の時が来た。
『さぁ、これが最後のゲーム。ジャマーボール延長戦、サドンデス。ボールは一つに戻ります。先に得点を入れたほうが勝利です!』
「僕たちが協力すれば、たとえ邪魔されても大丈夫だ」
五十鈴大智が、改めて景和がデザスターであることを強調する。更に付け加えて、俺にコマンドツインバックルを手渡してきた。また景和から押収したのか…?
「君もオフェンスに戻ってほしい。ゴールは僕が守る」
一度景和を被った俺を、ディフェンスから遠のかせるつもりか?昨晩の英寿みたいに、余計なことを言って焚き付けさせないように……まぁ、いいだろう。コマンドは一度使ってみたかったし、飛んでしまえば足の怪我なんて関係ない。俺はコマンドツインバックルを受け取った。
「目指すは勝利のみ!」
英寿がそう言い放つと、俺たちはバックルを構えた。
『SET CREATION!』『SET FEVER!』
『『『『SET』』』』
「へ〜ん!「「「「「変身!」」」」」しんっ!」
『DEPLOYED POWERED SYSTEM!GIGANT SWORD!』
『BEAT!』『ENTRY』
『GOLDEN FEVER!』『NINJA!』
『DUAL ON!GREAT!BLAST!』『MONSTER!』
『Ready?Fight!』
紆余曲折あったが、オフェンスとディフェンスの配置は前半戦の人生に戻る。俺がオフェンス、レイズアローを装備したヘリアルがディフェンス。ジャンプボールはニンジャバックルを使用したロポが担当する。ゲーム開始と同時に、エリアの中央にボールが落下する手はずだ。ジャマト陣営のジャンプボール要員はジャマトライダー。変異ジャマトの姿はなかった。俺たちは、固唾をのんでその様子を見届ける。
試合開始のカウントが始まった。両名が同時にジャンプして、ボールを掴まんと手を伸ばす。やはり、身軽なロポに軍配があがった。それを見届けた瞬間に、各々の配置に分かれ…
「っああっ!」
ロポがボールを掴んだ瞬間に、ルークジャマトがビームでロポを射抜いた。ロポは地面へと転がり、ジャマトライダーにボールを奪われる。わざわざジャマトライダーにジャンプボールをやらせた理由はこれか…!
ギーツ、ナーゴ、そして俺は、一気に攻めようと前方に飛び出しすぎていたため、反応が遅れてしまった。急いでヘリアル、ナッジスパロウがボールを奪い返そうと奮闘するも、ポーンジャマトの小刻みなパスに翻弄され、ゴール前に移動したルークジャマトへボールが渡ってしまう。まずいぞ、またビームごとボールを撃たれたら、止められるやつはもういない…!
そして俺たちを全力で邪魔しようと、ポーンジャマトが団子状態になって飛びかかってくる。ちょうどいい。コマンドを使うためには、レイジングソードにエネルギーを溜める必要がある。こいつらで一気にチャージしてやる…!
俺は先陣を切ってレイジングソードを前に突き出し、群れの中央へと駆けてゆく。すれ違う合間に、何体ものポーンジャマトが両断され、かなりのエネルギーを確保できた。レイジングソードを逆手持ちに切り替え、ガス噴射による立体機動を小刻みに行いつつ、広範囲の斬撃を行った。よし、脚の負担を最小限に戦えてる。ゴールへの道も開けた。
「返せ…また邪魔する気か」
ゴール前に戻ると、またしてもボールを持ったタイクーンとナッジスパロウが険悪ムードになっていた。だがタイクーンの覚悟は、既に固まっているようだった。その瞳に映るのは、子どもたちの笑顔。守りたい日常。叶えたい願い。
「俺が守るんだ…だからこそ………このゲームに勝つ!」
「その意気だ!」
ルークジャマトとジャマトライダーを相手取ったギーツが、タイクーンを鼓舞する。
「見てろ!種明かしだ!」
ギーツがギガントソードで二体を薙ぎ払うと、ジャマトたちは人間の姿へ変化した。しかし、彼らが人間ではないことはすぐに分かった。どちらも同じ顔をしている。本物であるはずがない。これが景和たちの言ってたシロクマさんの顔か。
「マズイ!」
「こいつらは、人間の姿をコピーしたジャマトだ。言っただろ。退場した人は、もういない」
二体のシロクマさんはジャマトの姿へ戻り、自陣へとブロックに帰ってゆく。この状況、プレイヤーの全員が黙って傍観している。ナッジスパロウの推理も策略も、完全に崩壊した。ギーツは、タイクーンの持つボールを受け取りながら、ナッジスパロウに煽り返す。
「お前は、デタラメ言ってタイクーンを誑かそうとしてたんだろ。ジャマトに味方する、デザスターかのように、仕立て上げるために」
「人聞きの悪いこと言わないでよ」
「勿論、誰を信じるかは自由だ」
ギーツは再び、タイクーンにボールを力強く投げ返した。
「タイクーン!食堂のディフェンスは任せろ!」
「あぁ!ゴールは俺が決める!」
タイクーンはナッジスパロウを横切り、始めて自分の意志でボールを握った。もう、誰にも惑わされる事はない。エントリーフォームで、バックルもない状態なのも構わず、臆さずポーンジャマトの包囲網を抜けようと奮戦する。
「なるほど。タヌキ君の決意は相当のものと見た。さぁパンダ君。俺たちはどうする…?」
「そんなの自分で決めろ。俺は…」
ヘリアルの質問を投げやりに返す。俺が思い出したのは、数ヶ月前の事だった。
──────────────
それは、最終戦・缶蹴りゲームの決戦が明日に迫った日のことだった。俺は英寿と蕎麦屋に行き、桜井姉弟と遭遇した。なんやかんやで相席を迫られ、渋々帰り道も共にすることとなった。その時の俺は今以上に捻くれていて、惨めなやつだった。人類滅亡なんて、オーディエンスから見たら笑いものであろう願いを、贖罪の想いからか何とか曲解し、戦いへの決意を固めた頃。早く帰りたかった俺は、英寿らの集団から離れ、こそこそと逃げることにした。
「うぃ!大丈夫、きみ!」
以前、快富郁真に言われたことは正しかったのだろう。近道をしようとすると、大抵後悔する。俺を呼び止めたのは、景和ではなく、姉の桜井沙羅だった。彼女のようなグイグイ来る底なしに明るい人間は苦手だ。相手の心に配慮しない。あの時も、景和についての話をウダウダと聞かされたのを覚えている。あまつさえ、俺と英寿が、景和と友達だって言い出したのだ。勘弁してほしい。
「これからも、景和を信じてあげて。きっと損はしないから。ね?」
俺は、どうしても桜井沙羅の言葉が信じられなかった。今まで、ずっと人に裏切られてきた人生だった。大体は自分の視野の狭さが原因だったのだが。景和だって、桜井沙羅だって、本当のところでは何を考えているかわかったもんじゃない。返答に困ったあの時の俺は、悩みに悩み、結果的に正直に本音を言ってしまった。
「…信じられません。俺は…怖い、です。本当に、彼が信じられるのか、俺が彼を裏切ってしまわないか…」
桜井沙羅は困惑したことだろう。初対面の男から信用だの、裏切りだのの話をされるのは。暫くの沈黙の後、桜井沙羅は、無理やり自分の小指を俺の小指に結んできた。
「よし!お姉ちゃんが約束しちゃる!私は絶対に、君を信じる!だから、君も景和を信用する!」
彼女の理論は無茶苦茶だった。でも、謎の説得力を、当時の俺に与えていた。
「きっと大丈夫…!世界は、君が思ってるより…もっと優しいから。もし、君が傷付いても、私たちは君の味方だよ。ぜっ、たい!約束だから!」
ずっと前に、交わした約束の話だ。
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タイクーンが、ジャマトライダーの蔦に道を塞がれ、高台に登っていたロポにボールをパスする。
「景和!」
そしてロポは、ニンジャバックルをタイクーンに変換した。ロポとナーゴは、タイクーンを信用する道を選んだ。後は、俺達だけ。エントリーフォームのタイクーンに、ここぞとばかりにジャマトライダーが殴りかかる。あのままじゃ防御しても、タタじゃ済まない。
「俺は…!」
『BLAST STRIKE!』
残されたガスを全て開放し、タイクーンを追い越して、ジャマトライダーに急接近。思いっきり飛び蹴りをくらわせた後、着地しながらレイジングソードを縦に振り下ろした。タイクーンの前で、膝立ちの状態で着地する。その右隣にヘリアルも追いついてきた。
「二人とも、信じてくれるの……?」
俺よりも先に、ヘリアルが答える。
「それはまだ。こちらからも質問しよう。君は、デザスターか?」
「…違う、俺はデザスターじゃない!このゲームに勝って、証明して見せる!」
タイクーンの返答を聞き終えたヘリアルは、フィーバースロットバックルを取り外し、レイズアローの装備を解除した。
「…ふむ。面白い!タヌキ君…君にはまだ戦う意志があると見なした!」
『SET FEVER!』
次は俺の番だと言うように、タイクーンがこちらを見る。はぁ…一々言わせるなよ。助けるのはこれっきりだ。
「信じるわけじゃない。ただ、」
(私は絶対に、君を信じる!だから、君も景和を信用する!)
(もし、君が傷付いても、私たちは君の味方だよ。ぜっ、たい!約束だから!)
「約束を…守りに来ただけだ」
『FULL CHARGE』『TWIN SET』
チャージが完了したバックルを、レイジングソードから取り外し、ブラストバックルと入れ替える。俺たちの一連の動きを得てタイクーンも、ニンジャバックルを装填した。
「ありがとう…皆!」
『SET』
「「「変身!」」」
ヘリアルは、スロットで当たりを引き当て、ブーストフォームへ。俺はコマンドフォーム・ジェットモードへ。そしてタイクーンもニンジャフォームへ、一斉に変身した。
『JACKPOT HIT!GOLDEN FEVER!』
『TAKE OFF COMPLETE!JET&CANNON!』
『NINJA!』
『Ready?Fight!』
ニンジャの俊敏性、ブーストの爆発力、コマンドの高起動能力、三者三様の加速を見せた俺たちは、猛スピードでゴールへと迫る。途中、ロポからタイクーンへボールが戻ってきた。これは一回でも得点すれば勝ちのサドンデス。当然、四体ものジャマトライダーがあの手この手でボールを奪おうとつけ狙う。
上空をタイクーンのスピードに合わせて飛行していると、遅れて追いついてきたヘリアルが呼びかけてきた。
「後方のジャマトライダーは俺たちが!やれるだろう?パンダ君!」
「上等だ!景和!お前はゴールだ!」
「ありがとう!ここは頼む…!」
タイクーンがビルの縁を駆けながら去るのを確認すると、空中で方向転換し、逆にジャマトライダーへ突撃。ヘリアルと分担して二体づつ抑え込み、ゴールとは逆方向へ加速する。
「俺の手にかかれば!一対二など容易いことよ!」
ヘリアルは左右両方のマフラーを同時に点火し、
自身は身体を捻った。これにより錐揉み回転の状態となり、二対同時にジャマトライダーを地面に放り投げた。
こちらのジャマトライダーも必殺技を発動しようとバックルに手を伸ばしたので、俺は左半身を上側に向けて軌道を変え、ビルの壁に首根っこを押さえたまま叩きつける。そしてそのまま飛行を続け、ジャマトライダーの背中の装甲を削った。ビルの壁が途切れた所で両手を離し、レイジングソードでの斬撃に切り替える。ジャマトライダーが地面に落ちる間に、往復しながら八回程斬り込む事ができた。
「すげぇ…これがコマンドの力か!」
俺たち二人の猛攻に耐えきれなかったのか、ジャマトライダーのデザイアドライバーが破壊され、ただのポーンジャマトへと戻ってしまった。少しやりすぎたな。
「…む!パンダ君!彼が決めたようだ…!」
後ろへ振り返ると、ちょうどタイクーンかゴールを決める後ろ姿を見ることができた。近距離ではあるものの、得点は得点。41対38で、仮面ライダーの勝利だ。ジャマトたちが自動的に消滅し、ジャマーエリアも晴れてゆく。
「…すっげえ疲れた…」
ヘリアルと俺の怪我は、ゲーム終了に伴って治ったが、疲労が取れた気は一向にしなかった。
子ども食堂の皆は、ようやく両親と再会することが出来た。景和はその様子を、満足そうに見つめている。俺と上遠も、離れから見守っていた。
「先輩、今回も、助けられちゃいましたね」
「まぁ…約束を守るついでだからな…」
それ以上喋れないかと思われた上遠だったが、親と抱擁し合う子どもたちを眺めながら、最後に付け加えた。
「家族だって、いつ離れ離れになるかわからないんです。大事に…してください。大切な人がいない家に帰るのは、悲しいことですから………でも、先輩なら守れますね」
「それは…約束か…?」
「いいえ。信用です」
上遠の顔は、今までにない朗らかな顔だった。俺の…家族ね。大切に、なんて考えたこともなかったな。いつも当たり散らすばっかで、迷惑してるだろう。今さら間に合うだろうか。こんな俺でも。
「時間だ」
英寿がそう言うと同時に、デザイア神殿へ転送された。
「皆さん。お疲れ様でした。見事な逆転ゲームでした」
これまでのゲームの中でも、かなりヘビーな部類のゲームだった。ロポとナーゴの連携、ギーツやヘリアルのサポート。何よりタイクーンの奮闘。一人でも欠けては勝てないゲームだった。それでも、ルールはルール。いやが上にも、一人欠けなければならない。
「投票締切となります。まだの方、変更したい方。デザスターだと思う方に投票してください。棄権は脱落となります」
俺は投票を変えるつもりが無かったので、スパイダーフォンの操作はしなかった。だが、皆一様にして投票する素振りを見せていた。さて、信用させたほうと疑わせたほう、どちらが勝ったのか…
「デザスター投票の発表です!」
ホログラムに、プレイヤーの顔写真が映る。最初に一つ、デザスターのマークが五十鈴大智に表示される。しかし、景和にもまた一票。拮抗したかに思えたのも、一瞬だった。
結果は明白。残りの五票は全て五十鈴大智に投票されていた。試合運びを踏まえれば、当然の結果か。俺たちに信じてもらおうと全力を見せた景和か、それとも今後自分を罠にはめる可能性がある五十鈴大智か、誰を落とせば利となるのか。少し考えればわかる。
「投票の結果、五十鈴大智様が脱落となります」
ツムリに脱落を宣言された五十鈴大智は、泣くのをこらえているかのような声で、負け惜しみを語り始めた。
「……これだから、人の心ってのは面白い」
俯いた顔を、俺たちへと向ける。
「わかっただろう。嘘を付くのは…デザスターだけじゃないって。僕を落として、後悔しても知らないよ…」
『RETIRE』
そんな言葉が響くはずもなく、五十鈴大智はIDコアと共に消えた。また、デザイアドライバーだけがカラカラと跳ねる。
だが……俺たちは理解していなかった。嘘つきは一人ではないという、真の意味を。五十鈴大智の視線が、橋結カムロを捉えていた事実を。
*
ここに来るのも久しぶりだなぁ。IDコア管理室は、デザイア神殿のバックヤードをず〜っと。行ったところにある。結構くたびれるから、IDコアのアクセス権を利用して、扉の前までジャンプしてきちゃった。
「入るよ、ハイトーン」
扉をゆっくりと開けると、いつも通り芹澤君が椅子に深く座っていた。デザイアロワイヤルのゴタゴタもあって、彼と会うのもいつぶりかわからない程だった。
「あぁ、久しぶりですね。祢音さん」
彼の操作するパソコンのディスプレイには、幾つかの見慣れたIDコアが提示されていた。一つは、たったさっき脱落した大智くんのもの。そして、前に海賊ゲームで一緒に戦った青山優ちゃんのIDコアに、デザイアロワイヤルで暴れ回ったと言う仮面ライダーシーカーのものまである。
「それ、どうするの?」
「はい。上からのお達しで…この三人のIDコアが必要なのだそうで。まぁそんな事はいいんですよ。二回戦勝ち抜けおめでとうございます」
芹澤君は、労いの言葉と共に、現在の仮面ライダーの支持率を見せてくれた。勿論トップは英寿・30%。もはやここは不動の域。二番目は大健闘の景和・20%。その後は冴さん・15%。奏斗・15%。私とカムロさんがそれぞれ10%の平行線。やっぱり、皆みたいにドカンとした活躍が出来ていないからか、私の支持率はよろしく無い。
「支持率は高くはありませんが…あなたには関係ないですね」
「へぇ…気づいてたんだ」
支持率なんて、気にする必要はない。秘密のミッションである、『ジャマトにボールを二度奪われろ』というのも前半戦でクリアした。後は、あまり危なくなさそうな景和が落ちないように仕向けるだけ。案外、疑われずに行った。大智くんを残してたら、危ないからね。
そう、私がデザスターだ。
DGPルール
疑われずに、
最後の二人まで残ることができれば、
デザスターの勝利となる。
次回:仮面ライダーギーツ外伝
「来るな奏斗!」
「ジャマトが使っていたのはフルーツ型の爆弾だったな」
「爆弾っ!?」
─時限爆弾を、解除せよ!─
「第三回戦、時限爆弾ゲーム」
「わかってたつもりなんだけどな…」
「じきに、ジャマトの世界がやって来る…!」
24話 発露Ⅳ:ジャマト運送に御用心!